「顔認証」と「虹彩認証」はどう違うのか
iPhone Xが採用した顔認証とは? スマホ向け生体認証技術の種類と特徴を見る(2/2 ページ)
顔認証
映画で登場人物が最高レベルの機密情報を扱うシーンには、顔認証技術が登場することが少なくない。ただし映画以外の世界でモバイルデバイスに顔認証技術が搭載されるようになったのは、つい最近のことだ。
技術の進歩に伴い、ユーザーが日常的に使用するデバイスへの顔認証機能採用が広がりつつある。Appleの「iPhone X」は新しい顔認証機能「Face ID」を搭載する。Face IDは、インカメラシステム「TrueDepth」を用いてユーザーの顔に3万点以上の赤外線ドットを照射して解析し、顔の精緻な深度マップを作成するシステムだ。ユーザーがiPhoneのロックを解除しようとする度に、赤外線カメラがドットを撮影して赤外線イメージを取得し、そのデータをチップに送信して登録済みデータと照合する。内蔵チップ「A11 Bionic」による機械学習の利用で、顔の経年変化や帽子/口ひげの有無といった状態変化に左右されることなく、ユーザーを正しく認識できる。モバイルデバイス管理(MDM)を使えば、Face IDを有効にするか無効にするかを従業員ごとに管理することも可能となるだろう。
SamsungのGalaxyは、顔認証技術をいち早く搭載したスマートフォンの1つだ。Galaxy S8と「同S8+」は、画面ロックの解除方法として顔認証に加えて虹彩認証や指紋認証が利用可能で、パスワードやパターン、PINによる認証も提供する。Galaxy S8の画面ロック解除は、指紋認証よりも顔認証を使う方が速い。ただし1つ問題がある。Galaxy S8の顔認証機能は顔写真を使ってだませることが分かったのだ。Samsungはこの件を率直に認め、「顔認証はスマートフォンの画面ロックを解除するための機能であり、最先端のセキュリティを提供するためのものではない」との見解を示している。
今後ビジネスユーザーは職場に、こうした顔認証機能を搭載したモバイルデバイスを持ち込むようになるだろう。となれば企業も顔認証技術に慣れる必要がある。企業は顔認証を使って、業務ドキュメントやアプリケーション、デバイスへのアクセスを管理することが可能だ。Microsoftは既に生体認証機能「Windows Hello」を通じて、企業に顔認証機能の提供を開始している。Windows Helloを使えば、IT部門は「Windows 10」へのアクセスを顔認証で管理できる。ただしこの機能を使うためには、追加のハードウェアとしてIntelの3次元(3D)カメラ「RealSense」が必要であり、RealSenseは価格が高めだ。
顔認証を提供するモバイルデバイスは、大半が指紋認証や虹彩認証機能も搭載している。そのため顔認証の採用は、あまり進まない可能性がある。
虹彩認証
人間の目の虹彩(黒目の内側で瞳孔より外側の部分)は指紋と同様、個人ごとに模様が異なるので、モバイル生体認証にはうってつけだ。虹彩認証には高度な技術が使われるので、専門家は虹彩認証がモバイルデバイスの強力なセキュリティ手段になると考えている。
虹彩認証は次の5つの要素で構成される。
- 瞳孔の検出
- 虹彩の検出
- 正規化(画像から瞳孔部分を除去し、虹彩模様のみを残す)
- 特徴抽出(虹彩模様を短冊状に分けて符号化し、虹彩コードを生成する)
- 照合(取得した虹彩模様をデータベースに登録済みの虹彩コードと照合する)
現在、虹彩認証を利用できるデバイスには、Galaxy S8/S8+の他、Microsoftの「Lumia 950」「同950 XL」などがある。顔認証とは異なり、虹彩認証は赤外線カメラを追加するだけで利用できる。そのため多くの場合、顔認証よりも虹彩認証機能を搭載するデバイスの方が安価であり、企業にとってはより魅力的な選択肢となる。
仮に悪意のあるハッカーがデバイス所有者の顔を赤外線カメラで撮影し、そのデータを高画質で印刷して、そのプリントアウトした目の上にコンタクトレンズを重ね、さらに所有者からデバイスを盗めば、虹彩認証機能をだませる可能性はある。とはいえ、ここまで手間をかけた攻撃はまれであり、回避するのも簡単だ。
虹彩認証の不利な点としては1つ、虹彩模様は非常に複雑で、人によって全く異なる点が挙げられる。何かしらの理由で虹彩認証データが盗まれたとしても、変更は利かない。そのため虹彩認証にはバックアップとしてPINかパスワード認証を追加するのが賢明だ。
音声認証
多くのユーザーが日々の生活で、熱心に音声認識技術を使いたがるのはなぜか。それはAppleの音声アシスタント「Siri」に“who let the dogs out”(「犬たちを外に放したのは誰だ」の意。音楽グループBaha Menのヒット曲のタイトルでもある)と質問してみるだけで納得がいく。
音声認証の仕組みは、その他の生体認証と同様だ。まずユーザーが自分の声のサンプルを録音し、そのデータをデータセンターに保存する。その後デバイスはユーザーに話し掛けられる度に、その音声と保存済みの音声データを照合する。一般的なスマートフォンやタブレットはマイクとスピーカーを標準搭載しているので、音声認証はほとんどの場合ハードウェアを追加せずに使用でき、その点で他のモバイル生体認証方法よりも便利だ。
Googleは、Androidに音声認証機能を追加し、「信頼できる音声」オプションを使って、音声でロック画面を解除したり、新しいアップデートを受け取ったり、アプリケーションを新規にダウンロードしたりできるようにしている。ユーザーは自分の声で“OK Google”と発声し、デバイスに登録しておけば、“OK Google”と話しかけるだけでデバイスのロックを解除できる。
音声認証を採用するモバイルアプリケーションが増える中、アプリケーション開発者の関心も高まっている。音声認証ベンダーのVoiceVaultのように、アプリケーション開発者向けにiOSやAndroidとの連携が可能な音声認証技術を提供しているサードパーティーベンダーもある。IT部門はモバイルデバイスのセキュリティ対策の他、ID管理や電子署名、従業員の入退室管理などに音声認証を活用可能だ。音声認識技術が進化し、AndroidやiOS向けのアプリケーションに広く採用されることで、音声認証はモバイル生体認証市場の重要な担い手となりつつある。
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