賢い「セキュリティ予算」獲得術【第1回】

「セキュリティ予算不足」はなぜ解消されないのか? 調査結果から探る(1/2 ページ)

セキュリティの脅威が高度化する中、国内組織は十分な対策を施すための予算を獲得できているのか。国内組織とグローバル組織の予算獲得状況に違いはあるのか。調査結果を基に見ていく。

画像 国内組織のセキュリティ予算の実態とは

 セキュリティ対策の重要性が叫ばれているが、国内の企業や組織(以下、組織)は十分なセキュリティ予算を獲得できているのだろうか。その予算は世界の組織と比べて、どの程度の水準にあるのか。ソーシャルメディア、モバイル、ビッグデータ、クラウド、IoT(モノのインターネット)といった新テクノロジーがもたらす新たなセキュリティリスクに対して、適切な備えができているのだろうか。

 本連載は、グローバルと国内の組織を対象にした情報セキュリティ調査「EYグローバル情報セキュリティサーベイ」(GISS:EY Global Information Security Survey)の結果を基に、国内組織のセキュリティ予算獲得状況と将来の見込みを示し、そこから見えてくる課題を整理する。GISSは、EYとEYアドバイザリー・アンド・コンサルティング、新日本有限責任監査法人が毎年実施している調査だ。本稿ではその最新版(以下、GISS2017-18)の結果を参照する。

インシデント感度が低下する国内企業

 2017年も、組織や個人に対するセキュリティの脅威が、数多く明るみに出た。ITやセキュリティの専門メディアのみならず、一般紙がその被害を報じることも珍しくなくなった。以下のインシデント(セキュリティ事件/事故)は、セキュリティ専門家でなくても記憶に新しいところだろう。

  • 海外大手ポータルサイトでの30億アカウント以上という大規模な個人情報の漏えい
  • 海外のみならず国内組織にも被害を広げ、“史上最大”のランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃と言われた「WannaCry」
  • 国内企業を標的に巨額の不正送金詐欺を招いた「ビジネスメール詐欺」(BEC)

 一方で気になるデータがある。GISS2017-18で「重大なインシデントは発生していない」と回答した組織は、グローバル組織では43%だったのに対し、国内組織では69%と顕著な違いがあったことだ。この回答を素直に見れば、国内ではグローバルと比べて、重大インシデントの発生組織数が少ないことになる。だがサイバー攻撃のグローバル化が進む今、ここまで大きな差が生まれるとは考えにくい。むしろ「国内組織はインシデントに関する感度が低下しているのではないか」という懸念を持つのが自然だ。

 サイバーセキュリティ攻撃は組織化やビジネス化が進み、ますます高度化し洗練されてきた。その結果、組織は攻撃を受けたことを認識しにくくなり、攻撃発生から認識までの期間が長期化している。経済産業省もこうした状況を踏まえ、経営者向けの「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」を改定した。2017年11月に公開したバージョン2.0は、経営者が認識すべき「3原則」を従来版から維持しつつ、「検知」「復旧」といった事後対策の強化に触れ、国際的なガイドラインとの整合性を確保した。「事前対策だけでは昨今のサイバー攻撃に対処することが困難」との認識に基づいた変更だといえる。

セキュリティ予算不足に直面する国内企業

 セキュリティ対策がますます難しくなる中、国内組織は、その活動に必要な予算を獲得できているのだろうか。参考になるのが、民間企業のIT活用状況を調べた経済産業省の年次調査「情報処理実態調査」だ。この2016年版(2017年3月発表)の結果によると、IT関係支出総額に占める情報セキュリティ対策費用の割合は、国内組織の全業種平均で2.6%。年間事業収入100億円以上の企業では2.6%、100億円未満の企業では6.8%となっている。

 この予算規模で十分かといえば、そうとはいえない。

印刷する
SNSでシェア

賢い「セキュリティ予算」獲得術

適切なセキュリティ製品を導入するにも、必要な予算が獲得できなければどうしようもない。だが足元を見ると、十分なセキュリティ予算が確保できている企業はむしろ少数派だ。世界的に見ても、国内企業はセキュリティ予算の獲得に苦慮しているという。その背景には何があるのか。そもそも「適切なセキュリティ予算」とは、どのように考えればよいのか。必要なセキュリティ予算を確実に確保するには、また限られた予算内で必要なセキュリティ対策を進めるにはどうすべきか。具体的に解説する。

この連載の記事をもっと見る

この記事の著者

藤井仁志
藤井仁志

グローバルコンサルティングファームにてセキュリティプラクティスの日本リードを務め、ガバナンスを中心としたアドバイザリーサービスだけでなく、システム導入、システム運用までをカバーし、机上にとどまらない実現性の高いサービスを提供。金融機関、中央省庁、運輸業といった重要インフラ関連事業から製造業、小売業までの多様な業態に対して、セキュリティ診断、セキュリティ体制構築、システム導入、運用変革まで幅広く支援した実績を有する。特にマイナンバー(社会保障と税の共通番号)や、金融機関などの大規模マルチベンダー環境におけるシステム導入プロジェクトの統括技術責任者、セキュリティ責任者としての豊富な経験を有する。2017年8月にEYアドバイザリー・アンド・コンサルティングに参画し、サイバーセキュリティ事業の日本共同責任者を務める。セキュリティベンダー主催のカンファレンス、メディア主催のイベントなどでの講演、ソートリーダーシップ(Thought Leadership)としての寄稿多数。公認情報システムセキュリティプロフェッショナル(CISSP)。公認情報セキュリティマネージャー(CISM)。情報処理安全確保支援士集合講習認定講師。

こんなメディアも見られています

TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。

無料会員登録
最新情報をいち早くチェック!

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます(メディアごとに文章は変更)

いますぐ無料会員登録

ベンダーコンテンツ PR

From Informa TechTarget

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ホワイトペーパーランキング PR

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

TechTargetジャパン SNS

X @techtarget_itmをフォロー

インフォメーション

TechTargetジャパンをフォロー