Apple Payとの連携で顧客体験も向上
勝負に出たApple 「Business Chat」がB2C市場を席巻する?
Appleは、メッセージングサービス「Business Chat」のβ版プログラムで大企業と提携し、ビジネス市場でFacebookやGoogleに対抗する。
Appleが提供する「Business Chat」は、同社が選んだ9社で既にβ版の運用が始まっている。iPhoneの標準アプリ「iMessage」を使って顧客からの問い合わせに対応したり、セールス活動に利用したりしているという。さらにその中の2社は、企業と消費者の間で使うB2C(企業と消費者)のテキストメッセージング機能は今後、代表的な顧客対応サービスになると考えている。
Appleは2018年3月29日の「iOS 11.3」アップデートでBusiness Chatのβ版をリリースした。これを使えば、iPhoneやiPadのユーザーは、個人間のやりとりに利用しているiMessageアプリで顧客サービス担当者と対話できる。顧客の識別情報は本人の意志によって共有されない限り、企業には開示されない。iMessageアプリで会話スレッドを保存しておけば後でいつでも読み返すことができる。
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変化するビジネスコミュニケーション
住宅用品を扱うThe Home Depotのマット・ジョーンズ氏(ストラテジーとモバイルアプリ担当シニアディレクター)は次のように話す。
「端末の利用方法についてパラダイムシフト(価値観の改革)が今まさに起こっている。ほとんどの人がテキストでのメッセージングを利用しており、AppleのBusiness Chatなら、家族や友人とメッセージをやりとりするのと同じ方法で企業とやりとりできる」(同氏)
The Home Depotでは近年、コンタクトセンターの果たす役割が大きくなっている。顧客サービス担当者は、ネット通販の注文状況や配送に関する問い合わせに対応するだけでなく、セールスや小売りに関わる業務にも従事するようになってきた。Business Chatを使い始めたころの問い合わせは、営業時間や在庫の確認がほとんどだったという。
iMessageでは画像なども送信できるので、SMS(ショートメッセージサービス)の標準的なテキストメッセージより充実したサービスを顧客に提供できる。機能を拡張したメッセージは予約や色の選択、座席指定などにも利用できるだろう。Appleが提供する決済サービスの「Apple Pay」と連携することで、iMessageアプリからのワンクリック購入にも対応できる。
通常、顧客は新しいチャネルで支払いをすることに不安を抱くことが多いが、今回は違うらしい。花のネット通販を手掛ける1-800-Flowers.comで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるアミット・シャー氏は、これまでのところ、Business Chatのプライバシー保護やセキュリティに関する問い合わせは驚くほど少ないという。
「Business ChatはApple Payと密接に連携しており、顧客に安心感を与えている。この支払い方法は顧客にとってなじみがあり、安全性が高い。それに、ユーザー間の送金にも使えるのと同じアプリから呼び出すことができる」(同氏)
進化するビジネス向けメッセージングプラットフォーム
Appleは「Facebook Messenger」や「WhatsApp」「WeChat」「LINE」「Kakao Talk」などのソーシャルメッセージングサービスとの競合に挑戦することになる。一方、Googleは、SMSの後継となるメッセージサービス規格「Rich Communication Services」(RCS)の普及を推進しており、ビジュアル機能の充実したビジネスメッセージングサービスを、Androidを搭載したスマートフォン向けに提供する予定だ。
コンサルタント会社dBrn Associatesのプレジデント、マイケル・フィネラン氏は、AppleのBusiness Chatは正しい方向への一歩であり、B2Cでのテキストメッセージング利用は拡大していくと語る。
「AppleのBusiness Chatは、モバイルチャット市場を活性化させるには最適なツールだ」(同氏)
多くの企業はいずれ、顧客対応にAppleのBusiness ChatとRCS規格の両方を使わなければならないとフィネラン氏は予想する。しかし、今のところ、Appleと提携してβ版プログラムのサポートを受けている大企業やソフトウェアベンダーはほんのわずかであり、それ以外の企業はアクセスを申し込めるが、いつ運用を開始できるのかは不明だ。
AppleからBusiness Chatのβ版プログラムに招待されたのは、The Home Depotと1-800-Flowers.comの他、金融機関のWells Fargo、Discover、ホテルを運営するHilton、Marriott、IT製品をオンライン販売するNewegg、投資情報を扱うTD Ameritrade、住宅用品を扱うLowe'sだという。また、カスタマーサービス基盤を提供するベンダー6社(Nuance Communications、LivePerson、Salesforce.com、Genesys、Zendesk、InTheChat)も協力している。
1-800-Flowers.comのシャー氏は「Appleは、米国の顧客が使用するモバイル端末の市場でシェアを維持している。モバイル端末シェアが多いということは、顧客と接する機会も多いといえる。これはとても重要だ」と話す。
Appleは端末販売での収益が停滞しており、新サービス投入や、IBMやSAPとの提携でビジネス市場への進出を拡大している。同社は現在、ビジネスやソフトウェアのパートナーにBusiness Chat基盤のアクセス料金を課していないと述べており、このサービスで収益を増やそうとしているわけではなさそうだ。
それよりも、Business ChatはApple Payの利用拡大につながる可能性がある。また、Appleは参加企業向けに「Safari」「マップ」「Siri」の検索にこのサービスを拡張することを計画しており、それによって広告掲載の需要が減ればGoogleに打撃を与える可能性もある。そう話すのは、アナリストのツァヒ・レベント・レビ氏だ。
Business Chatの提供開始は「企業と消費者の両方をAppleに引き寄せることになる」と同氏は指摘した。
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