「次世代の教員」が知っておくべきこと【第3回】
「アンプラグドプログラミング」とは何か? 学校での実践方法は?(1/2 ページ)
「プログラミング的思考」を育成するための手段はコーディングだけではない。より容易に取り組める「アンプラグドプログラミング」「ビジュアルプログラミング」といった手段と、その実践例を見ていこう。
連載第1回「『プログラミング教育』は“競争に勝ち抜く社会人”を育てる手段になる?」でも触れたように、小学校では2020年にプログラミング教育が必修となる。これに先駆けて子ども向けのプログラミング教室を開設する動きが広がり、関連教材も急速に充実している。既に個人的にプログラミングを経験している小学生もいるはずだ。だが大半の学習者にはプログラミングの知識や経験がない。教員も同様だ。プログラミング教育どころか、プログラミングさえ“未知の領域”という教員は少なくないだろう。
十分な知識や経験がない教員や学習者が、プログラミングの基本的な考え方を学ぶためには、何から始めればよいのか。有効な手段となり得るのが、コンピュータを使わずにプログラミング思考を育てる学習・教育手法の「アンプラグドプログラミング」だ。一般的に、コンピュータを使わないコンピュータ科学の学習法を「アンプラグド」(「コンピュータサイエンスアンプラグド」「アンプラグドコンピューティング」とも)と呼ぶ。
アンプラグドプログラミングに基づく授業とは、どのようなものなのか。特定非営利活動法人(NPO法人)のiTeachers Academyが2017年10月に開催したイベント「次世代教員養成フォーラム2017」では、そのヒントとなり得るワークショップが開催された。プログラミング教育に詳しい平井 聡一郎氏(情報通信総合研究所)が実施したそのワークショップの様子を基に、具体的な実践方法を探る。
併せて読みたいお薦め記事
「プログラミング教育」についてもっと詳しく
- 先生も生徒も幸せになる「プログラミング教育」の条件は? 教員志望の学生が議論
- 「プログラミング教育」を一般教科にどう盛り込むか? 前原小学校の実践から探る
- 小学校の「プログラミング教育必修化」が必要なこれだけの理由
「次世代の教員」が知っておくべきこと
ITを使わずプログラミングを学ぶ「アンプラグドプログラミング」
平井氏はワークショップの参加者に、アンプラグドプログラミングに基づく幾つかの課題を出した。ウオーミングアップを兼ねた最初の課題は、図形を描くことを通じた、プログラミングにおける「指示」の概念の理解だ。同氏は以下の流れで課題を進めた。
- 参加者に3人一組となって横一列に並んでもらい、真ん中の1人を「操縦者」役、端の2人を「ロボット」役に指名
- 操縦者役だけに課題の図形(ワークショップではスマイルマーク)を提示
- ロボット役の2人それぞれにホワイトボードとペンを貸与
- 操縦者役はロボット役に対して、課題の図形を描くように指示。ただし1回の指示で1つの動作のみ指示可能
- ロボット役は操縦者役に言われた動作だけをして、分からないときは動きを停止
操縦者役がロボット役の2人に指示をして、ホワイトボードに図形を描いてもらうのが基本的な流れだ。参加者は「丸を描く」という単純な作業でも、どのような大きさで描くのか、円(真円)なのか楕円(だえん)なのかといった細かな指示を伝える必要があることを痛感していた。こうした意識は、実際の機械を動かすためのプログラミングでも必要になる。
平井氏がワークショップで出したもう1つの課題は、プログラムのデバッグの理解につながる、作業手順書(マニュアル)の作成と改善だ。ワークショップでは、1つの班に小学1年生から6年生の児童が均等に含まれる「縦割り班」による、教室の掃除マニュアルの作成を想定した。参加者はグループに分かれ、以下の条件を基にマニュアルを作成した。
- 雑巾掛けの方法は水拭き
- 縦割り班の人数は1班当たり5人
- 1回の指示で1つの動作のみ指示可能
- 縦割り班のため、小学1年生の児童にも分かるように指示
- マニュアル作成時間は3分
課題では1つのグループが3分の制限時間内にボードに手順を書き、そのボードを次のグループに回した。ボードを渡されたグループは記載されている手順を確認し、不足している手順があれば追加した上で、次のグループにボードを渡した。参加者は、こうしたレビューの繰り返しにより、マニュアルの正確性が高まることを理解できたようだ。実際のプログラミングでも、一度書いたプログラムを自ら再確認したり、他人に確認してもらったりすることで、処理の抜けや漏れ、間違いの発生を防ぐことができる。
ワークショップで平井氏は、小学4年生が実際に作成したマニュアルを披露した。そのマニュアルには「掃除場所に行く」「手ぬぐいをかぶる」「掃除開始のあいさつをする」といった、具体的な清掃活動に移る前の手順もしっかりと記載されていた。参加者はこのマニュアルと自らが作成したマニュアルを見比べながら、丁寧に手順を記載しているつもりでも、こうした当たり前ともいえる手順ほど抜けや漏れが発生しやすいことを実感していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「次世代の教員」が知っておくべきこと
教育機関のIT活用が珍しいことではなくなり、プログラミング教育を初めとする新たな教育課題が生まれる中、これからの教員はこうした状況にどう向き合うべきなのか。教育IT先駆者の声から探る。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー