警察車両や救急車などの業務用車両向け
“働く車”搭載用のPCが高耐久スマートフォンに置き換わる日
高耐久スマートフォンの登場は高耐久デバイス市場に変化をもたらしそうだ。今後1~2年の動向を予想する。
車載用の高耐久PCが実用化して久しいが、高耐久性を備えた次世代スマートフォンの登場により、こうしたPCが過去の遺物となる日が近付いている。
車載用の高耐久PCは、警察車両や救急車、ガス・水道事業その他の業務用車両にコンピューティング能力を与えた。そのおかげで、こうした車両から身元情報や医療記録、建築図面など必要なデータにアクセスできるようになった。
だが、高耐久PCの市場優位性は、これから数年かけて終わりを迎えるものと予想される。
高耐久PCの問題点
車載用の高耐久PCにはさまざまな問題がある。まず、サイズが大きく、特殊な設置方法が必要なため、小型車両への取り付けは難しい。また、一般的なPCの3~4倍の高額な初期費用がかかり、盗難を防止するための特別な固定器具も必要になる。
高耐久PCは高価格でしかも交換が難しいため、古い機種を長期にわたって使い続ける傾向がある。なかなか新しい機種に交換できないまま、高性能コンピューティングシステムを実行するPCでは、ユーザーエクスペリエンスが犠牲になりやすい。
何より問題なのは、持ち運べないことだ。車両から取り外せないため、作業を行う場所まで持っていくことができない。
例えば、警察や消防署の職員が現場で必要な情報を調べたくても、車載用PCを車の外に持ち出せない。そのため、車載用PCとスマートフォンという2種類の機器を使うことになり、二重にコストがかかってしまう。
高耐久スマートフォンの台頭
こうした状況もそろそろ変わりそうだ。フルサイズのディスプレイとキーボードはやはりある方がいいため、何らかの車載用ハードウェアは今後も必要だろう。これからの高耐久PCは、極めて長期の耐久性を目指し、フル機能PCより安価になっていくと考えられる。しかし、大半のシナリオでは、ドック式のモバイル端末に置き換わっていくのではないだろうか。
4~5年前の高耐久PCは今も現役で使われているが、最近のスマートフォンはそれより高い処理能力を既に備えている。ドッキング機能を使えば、ほとんどのケースでモバイル端末をPC代わりに使用できる。
例えば、Samsung Electronicsの「Samsung DeX」のような機能を利用すれば、モバイル端末を「Windows」PCの代わりに使って現在と同じアプリを実行できる。外付けキーボードなら使わないときは外しておける。大きな画面で見たいときは車載モニターを使えばよい。最近の車両のダッシュボードには大きな液晶ディスプレイが付いている。
現在販売されている高耐久スマートフォンは非常に頑丈だ。落下試験をクリアし、防水仕様で、Corningの「Gorilla Glass」などの強化ガラスを使っている。ハイエンドのスマートフォンでも、価格は高耐久ノートPCの25~35%程度だ。車載モニターやキーボードの費用は別途必要になるが、それも今後3~4世代のスマートフォン使用で相殺できるだろう。
高耐久モバイル端末なら、いつどこにいてもデータにアクセスでき、買い替えも容易だ。現場作業者はいずれにしても連絡やデータアクセスのためにスマートフォンを持ち歩くのだから、それを新しい常時接続の手段にすることができる。OSとアプリをスマートフォンに移行する作業は必要になるが、それも既に企業が進めていることだ。
スマートフォンなら1~2年ごとに買い替えやすく、PCより短い周期で新機能や機能向上を導入できる。スマートフォンにはもともと無線接続機能があるため、無線接続を二重に用意する必要もなくなる。
スマートフォンへの置き換えはすぐには進まないかもしれない。公共機関で何かを変えるには時間がかかるからだ。ただ、現在、高耐久PCを使っている民間企業では急速に移行が進むだろう。高耐久モバイル機器の導入は、これから2~3年で伸びると予想する。
この流れは、現場で働く人々のコミュニケーションを大きく向上させ、ユーザー体験を高め、総合的なコストを削減する。車載用高耐久PCが過去の遺物になるのも時間の問題だろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー