導入にかかる時間がどれだけ短縮できるか
SAP、Infor、Microsoft、Oracleを比較――4大ERPの特徴を導入支援と投資対効果で見る(1/2 ページ)
SAP、Infor、Microsoft、OracleといったベンダーのERPシステムを検討している企業向けに、各ERPベンダーが提供する導入戦略によってERPの投資対効果がどうなるか考察する。
ERPは、営業、マーケティング、財務、人事、購買、製造、在庫管理、サービスなど、広範な業務に関する機能を提供する。そのため、こうした業務を必要とする企業にとってERPは不可欠なシステムだ。ERPはほぼ全てのシステムやビジネスプロセスに連携させなければならない。そのためERPの導入と連携には時間がかかる可能性がある。ERPからすぐに高い投資対効果を実現したいと考える企業にとっては重要な検討事項になる。
企業がERPシステムを評価する際、その機能と特徴だけでなく、ERPの導入と業務別の採用スケジュール計画にも目を向けることになる。これらは全てERPの投資対効果に影響する。
この評価プロセス中に問うべき重要な質問には以下のものがある。
- ERPシステムには、業務に必要なものが全てそろっているか。
- 業務に明確なメリットをもたらすか。
- ERPシステムのコストはどの程度で、導入にどの程度の時間がかかるか。
- ERPの導入はどの程度企業に混乱をもたらすか。
- 従業員がERPを受け入れて利用できるようになるにはどの程度の時間が必要か。
ここからは、市場をけん引する大手ベンダー4社のSAP、Infor、Microsoft、Oracleが提供するERP製品を、導入と投資対効果に重点を置いて評価する。
SAP
SAPは、クラウド、オンプレミス、ハイブリッドなど、さまざまな形態のERPを提供している。同社は、事実上全ての業界と業種のあらゆる規模の企業向けにERPを販売している。これが、世界中の企業に「SAP ERP」ソフトウェアを提供してきた45年の歴史とともに、同社の強みとなっている。
企業にとって課題となるのは、SAP ERPの全てのオプションを調べ、自社の業務ニーズには何が最適で、導入が簡単で、高い投資対効果を実現するオプションなのかを見つけることだ。
SAPが提供するERPの選択肢には以下のようなものがある。
- SAP ERP:同社が最も古くから提供するシステムで、主に大企業が利用するオンプレミスのフル機能バージョンのERP。
- SAP S/4HANA:SAPの最新ERPプラットフォームのオンプレミスバージョン。「SAP HANA」データベースで運用され、リアルタイム分析処理とリアルタイムトランザクション処理を実現する。
- SAP S/4HANA Cloud:SAP S/4HANAのSaaS(Software as a Service)バージョン。
- SAP Business One:中小規模企業向けのプライベートクラウドとオンプレミス向けERPスイート。
- SAP ERP Business One Cloud:SAP Business OneのSaaSバージョン。
- SAP Business ByDesign:中規模企業が初めて利用するERPになることを想定して設計された中規模企業市場向けのSaaS型ERP。
投資対効果の点から、オンプレミスERPの利用が減少傾向にあるのは明らかだ。オンプレミスERPには、データセンターのハードウェアへの投資とソフトウェアライセンスが必要になるためだ。SAPはこうした傾向を認め、クラウド型のサービスを数多く提供している。だが同社はオンプレミスERPに需要があることも把握している。そのため、オンプレミスERPに関心を持つ企業向けにその選択肢を残している。オンプレミスERPユーザーの多くは大規模企業で、戦略的な業務目標として自社のミッションクリティカルなデータとシステムを社内で管理したいと考えている。これには業務上のメリットがあり、費用をいとわない企業に投資価値をもたらす。
小売り、株式取引、ホテルや飛行機の予約など、大量のトランザクションを扱う業界に属し、分析データが即座に必要になる企業もある。例えば、リアルタイム分析とリアルタイムトランザクション処理を組み合わせて、特定の地域で空室を多く抱えるホテルチェーンにアラートを出すことができる。アラートを受け取ったホテルチェーンは、この地域の顧客にインセンティブや特典を提供する宣伝活動をできるようになる。このような企業は、リアルタイム分析によって収益を増やし、魅力的な投資対効果が得られるだろう。ただしこのようなシステムに投資するのはやりすぎになる企業は多い。
SAPのERPシステムを選択した企業向けに、同社は以下のような長年実績のある導入ノウハウを用意している。
- プロジェクトの準備
- 業務計画
- 具現化
- 最終準備
- 運用開始の支援
どの場合も、SAPを利用する企業にとって重要なのが、経営幹部の同意を得るなど、徹底的な計画を立てることだ。業務上の具体的なメリットとERPのROIの目標を特定することが特に重要だ。この目標と基準を業務計画に織り込み、SAP ERPプロジェクトの実現段階で、この目標と基準や、業務のプロセスとシステムのパフォーマンス目標を確認する。
クラウドERPの導入は、ユーザー1人当たりの料金とオンプレミスのハードウェア/ソフトウェアへの投資を最小限に抑えられる。そのため、導入時間と(投資対効果の)コスト回収にかかる時間が短くなる。一方、SAP ERPのオンプレミスインストールを選択した企業は、初期コストが数百万ドルに達する可能性がある。ただし、長期的に見ると必ずしもSaaSのERPの方が安価であるとは限らない。特に企業の成長によってユーザーごとの月額サブスクリプションコストが予想よりも高くなる場合はこれが当てはまる。
オンプレミス導入とクラウド導入のどちらにせよ、データとシステムの統合が重要になる。ERPシステムは、企業のIT資産のほぼ全てに関係する。高度にカスタマイズしたシステムでは特に、統合に数カ月から数年掛かることもある。データとシステムの統合は、SAP ERPのように全てをそろえた企業システムだけでなく、深く幅広い機能を提供する他の包括的なERPシステムでも必要になる。
Infor
Inforは、オンプレミスERPとクラウドERPの両方を提供する。「Infor CloudSuite」と総称される同社のクラウドシステムは、特定の業界向けに目的を絞って構築され、1ユーザー当たりの月額料金ベースのソフトウェアスイートとして提供される。Infor CloudSuite製品は主にパブリッククラウド向けに提供され、SaaS、プライベートクラウド、ハイブリッド展開も可能だ。
Inforのサービスは、ビール醸造会社や乳製品製造企業など、小規模な業種にも範囲を広げている。組み込みのカスタマイズを利用すれば、企業は社内でカスタマイズしたアプリケーションを開発する必要がなくなり、担当者の時間が節約される。こうしたメリットは、最終的に企業の投資対効果に良い結果をもたらす。
Inforのもう1つの強みは、成熟している統一的な導入方法にある。この手法は、クラウドでもオンプレミスでも、同社のERPシステムの全バージョンで利用されている。この手法は10年に及び今も続く研究と開発によってもたらされたベストプラクティスで、5000件以上の導入例がある。この手法は以下の5つのフェーズから成る。
- 初期フェーズ。ビジネス要件の定義、新しいシステム向けたプロセスの大まかなモデル化、プロジェクトチームのトレーニングをする。
- 詳細化フェーズ。ERPプロセスの詳細なモデル化とプロトタイプの構築をする。
- ERPシステムの構築フェーズ。
- 運用移行フェーズ。新しいシステムのパフォーマンステスト、IT部門やユーザーのトレーニング、ユーザーの受け入れを行う。
- 最適化フェーズ。最終運用導入に向けてERPシステムを調整する。
業務部門のエンドユーザーとIT部門がプロセスのあらゆるフェーズに関わり、プロジェクトが業務の期待に沿うことを確認し、ユーザーの採用を成功に導くようにする。ユーザーとIT部門は、システム導入の最終フェーズでのフェイルセーフのユーザー受け入れ手順も用意する。この最終受け入れテストによって、追加投資の必要がなくなる。最終受け入れテストは、業務部門のユーザーとIT部門が認識した欠点を箇条書きにし、最終受け入れ前にそれらの欠点に対処する機会を提供する。
Infor導入プロジェクトの手法はソフトウェアに重点を置いており、業務パフォーマンスといった指標に具体的な対処をするようなものではない。こうした指標は、各企業が投資対効果を測定するために考案する必要がある。例えば、運用効率、市場投入までの時間、収益機会の向上、コスト削減などが指標になる。
Inforを検討している企業は、プロジェクトの初期フェーズで必ずERPの投資対効果の基準に対して企業と経営幹部の同意を得て、この基準についてベンダーと話し合う必要がある。企業は、システムのプロトタイプとユーザーの受け入れテストに対してこれらの基準を測定し評価する。
InforのERPのリリーススケジュールは、業界や業種によって異なる。ただし、Inforのクライアントはアップグレードリリースの導入タイミングを決めることができる。これは顧客にも好都合になる。顧客は新しいERP機能を利用可能になる時点で、自社にもたらされる変更と混乱の可能性を効率的に管理できる。
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