そのインスタンスは高性能すぎる可能性
クラウドの仮想マシン導入コストを削減する方法
多くの企業では、クラウドの仮想マシン(VM)に余計なコストをかけている可能性がある。本稿ではVMを適切なサイズにするための見直し方と、利用料を予算内に収めるための手順を説明する。
企業はクラウド内の仮想マシン(VM)に必要以上のコストを払っている可能性がある。しかしIT担当者や企業幹部のほとんどは、このことに気付いていない。
クラウドVMに無駄なコストがかかる原因の一つは、インスタンスのサイズが適切に設定されていないことだ。
パブリッククラウドプロバイダーは、利用するインスタンスの種類やサイズなどに基づいて価格を設定する。VMの価格は大抵、計算、メモリ、ストレージリソースが小さなインスタンスより、大きなインスタンスの方が高い。高額なインスタンスの方がより高性能だが、コストを削減するためには、パフォーマンスとコストの最適なバランスを見つけることが必要だ。今回はクラウドVMで最適なバランスを見極めるための、具体的な方法を説明する。
自社のニーズに合ったクラウドVMの性能を把握する方法
クラウドVMを適切なサイズにするための第一歩は、インスタンスを適切なサイズにすることだ。企業ではVMを導入するとき、OSとミドルウェアの標準構成をそのまま採用するといった、より簡単な方法をとる傾向がある。その結果、インスタンスが本来必要なサイズより40%以上大きくなることも少なくない。インスタンスのサイズを最適化するには、アプリケーションを実行するために必要なミドルウェアやOSの性能を定義し、必要なサイズを再計算しなければならない。インスタンスの見直しで確保した空き容量は、パフォーマンス向上のためのI/Oバッファーとして使用するか、インスタンスサイズ縮小のために削減する。
IT担当者は便利な標準構成をそのまま採用するのではなく、各アプリケーションの要件を定義すべきだ。アプリケーションの変更と拡張の際にも、必要なミドルウェアを見直してインスタンスのサイズが肥大化するのを防止する必要がある。
第2のステップは、テストに基づいて構成パラメーターとVMのメモリサイズを調整することだ。Linuxは、パフォーマンス向上のために利用可能なメモリを全て確保し、バッファーとして使用する傾向がある。これが、ユーザーがしばしばメモリリソースを必要以上に割り当ててしまう理由の1つだ。ほとんどの場合、使用可能なメモリが増加しても、それに比例してパフォーマンスが向上するわけではない。ある時点でパフォーマンスの改善度が低下するか頭打ちになる。このポイントを簡単に計算する方法はないため、幾つかの異なるサイズのインスタンスでアプリケーションをテストし、コストパフォーマンス曲線を決定する必要がある。
この種のテストでは、負荷テストやパフォーマンステストなどを実働環境に近い状態でテストできる自動テストツールが必要になる。最適なツールはアプリケーションの性質によって異なり、分散型のWebベースのテストが必要なものや、より具体的なトランザクションテストが必要なものもある。Linuxのfreeコマンドを使用してVMの空きメモリの使用状況をチェックし、スワップメモリにも注意する必要がある。スワップの使用量が多い場合は、アプリケーションのメモリが不足している。
仮のインスタンスサイズでVMを実行し、freeコマンドでメモリ使用量を取得する。実際のメモリのサイズはこの使用量の1.2倍程度になるように変更する。1.2倍の余裕があれば、ほとんどの場合で安全だ。次に1段階小さなサイズと1段階大きなサイズでパフォーマンスをテストする。
次に、クラウドVMが複数のアプリケーションを処理する方法を考慮する。VMリソースをプールするのではなく、VMに単一のアプリケーションだけを配備する場合は、この手順は不要だ。しかしリソースをプールする場合は、全てのアプリケーションに必要なVMサイズのスプレッドシートを作成し、VMのサイズごとにアプリケーションの数を決定する。平均的なVMのサイズから大きく外れるケースがわずかしかない場合は、異なるサイズのリソースプールを作成する必要はなく、その平均的なサイズに統一する。大きなプールは小さなプールよりも効率が高いため、結果的に全体の利用率が向上する。
リザーブド、オンデマンド、プリエンプティブ 各インスタンスタイプの比較
適切なサイズのクラウドVMを検討する際のもう一つの考慮点は、リザーブド、オンデマンド、プリエンプティブのどのインスタンスタイプを選択するかだ。
年単位の利用料を前払いして使うリザーブドインスタンスは、ユーザーが随時VMを起動できるため、24時間稼働が要件のアプリケーションに特に役立つ。Amazon Web Services(AWS)のリザーブドインスタンス、Microsoft AzureのリザーブドVMインスタンス、Googleの確約利用割引で利用可能なVMなどがその例だ。
前述した複数のアプリケーションで同じリソースプールを使用するケースでは、リザーブドインスタンスの利用が適切だ。リソースプールを構築する場合は、常時稼働するVMが必要なためだ。
ほとんどのアプリケーションには、長期予約契約が不要で低コストのオンデマンドVMが適している。オンデマンドインスタンスと短時間の稼働プリエンプティブインスタンスの場合、リザーブドインスタンスよりも低コストだが、イメージの読み込みが遅くなるリスクが大きく、GoogleのプリエンプティブVMやAWSのスポットインスタンスなどのプリエンプティブインスタンスの場合は、ベンダーが予期しないタイミングでシャットダウンする可能性がある。業務に必要不可欠な用途の場合は、オンデマンドインスタンスと、プリエンプティブインスタンスには注意する必要がある。
正しい判断を下すための一番大事なプロセスは、入念なテストをすることだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー