最新ITの導入でビジネスに差をつける
幾つ知っている? 2019年に注目度アップする10のITトレンド
データセンターの小型化、サーバレスコンピューティング、デジタルダイバーシティーとは何だろう。2019年にIT運用の原動力となる10個のITトレンドと、こうしたトレンドが自社のビジネスをどのように変えるかを考える。
企業のIT運用から何かがなくなることはない。だがテクノロジーやアプローチが古くなれば、新たに登場するITトレンドに席を譲るのはいつものことだ。2019年には、データセンターと並行してサーバレスコンピューティングやSaaSワークロード導入の準備を整える必要が生じてくる。これらのテクノロジーは、企業でのITワークロードの導入方法と運用方法を体系的にする。
グローバルで多様性のあるデジタルインフラや、創造性に富んだITチームなどのトレンドは、業務部門やIT部門にチャンスをもたらすと同時に課題も突き付ける。Gartner主催の「Gartner IT Infrastructure, Operations & Cloud Strategies Conference 2018」で、同社のシニアディレクターアナリスト務めるロス・ウィンザー氏が新たに登場する10件のトレンドの概要を説明した。2019年にはこうしたトレンドがインフラと運用を変えることになりそうだ。
あらゆる企業が全てのトレンドに飛び付くことはないだろう。とはいえ、導入に向けた計画を事前に立てるには、これら全てを確認しておくことは欠かせない。それがキャリアの役にも立つ。
1.複数のベンダー、プラットフォームの運用を迫られるデジタルダイバーシティー
ローカルデータセンターのシステム、リソース、インフラ機能は、自社のIT部門が管理している。しかしデジタルダイバーシティーという考え方が、長い歴史を持つこうした領域を脅かしている。IT担当者が外部委託ベンダーやSaaSベンダー、クラウド環境、プラットフォームを複数担当しなければならない状況が増えているのだ。世界各地での運用に伴い、言語や規制を理解する必要性も高まっている。
ITインフラの選択肢の急増はビジネスとってはメリットがあるかもしれないが、IT部門はその複雑化したインフラの管理に力を注がなければならない。例えばインベントリ管理を利用して、使用中のリソース、そのリソースの配置先、動作状況を把握する必要がある。可視性や管理が貧弱だとリソースが無秩序な広がりを見せ、リスクやコストが高まる結果になる。リソースの用途について分析的決断を迅速かつ正確に下すことが求められる。分散するさまざまなインフラを管理するために、自動化ツールやAI対応ツールをある程度導入することになるだろう。
2.データセンター縮小への備え
専門家は、かなり前からデータセンターがなくなると予測している。これは一部真実だ。Gartnerの調査では、2025年までに企業の80%が従来のデータセンターを廃止することが示されている。また多くのスタートアップ企業は、自前の物理的なデータセンターを導入することを考えていない。
専用データセンターを所有する代わりとなる選択肢は、かつてないほど増えている。本稿執筆時点では、コロケーション、パブリッククラウド、エッジコンピューティングが、企業ワークロードのホスト先になろうとして競い合っている。
データセンターはもはや主力のITインフラ管理手法ではない。むしろ数多くの選択肢の1つにすぎない。ワークロードを配置する場合、最も効果的でコスト効率に優れた手法を検証する必要がある。コスト以外にも、セキュリティやコンプライアンスなどの要素も考慮しなければならない。社外インフラに移すワークロードが増えると、従来のデータセンターは縮小する。それはもっと融通が利くように進化することでもある。
3.サーバレスコンピューティングへの広範な移行に注目
企業は、自社で運用するインフラを減らすと同時に、外部リソースの使用を自動化しようとしている。そのような状況の中、2018年から勢いを増しているITトレンドがサーバレスコンピューティングだ。サーバレスコンピューティングテクノロジーはクラウドプロバイダーから提供されている。その例にはAmazon Web Services(AWS)の「AWS Lambda」、Microsoftの「Azure Functions」、Googleの「Google Cloud Functions」などがある。ユーザーはアプリケーションにコードを読み込んで実行する。クラウドプロバイダーはサーバ、ストレージ、ネットワークなど、コードの実行基盤となるインフラを管理する。
サーバレスコンピューティングによって、企業はビジネスの原動力となるコードやアプリケーションの導入に専念できる。従来の社内インフラ管理やIaaSよりも運用の柔軟性が向上し、自動化が進む効果もある。それにより、スケーラブルなアプリケーションアーキテクチャと導入が実現する。価格も細かいレベル、関数の呼び出し単位で設定されるため、設備投資コストよりも運用コストを重視する企業に適している。サーバレスコンピューティングは小規模で短期間のワークロードをサポートする。これは仮想マシン(VM)やコンテナの代わりにはならない。どちらかといえば、特定の種類のワークロードに合わせた手法になる。
4.エッジコンピューティング戦略の登場への期待
ビジネス部門とIT部門の責任者はIT戦略にデジタルダイバーシティーを取り入れ、クラウドとオンプレミスインフラ、2つの中間のインフラを組み合わせている。そんな中、リモートインフラと分散インフラという考え方がエッジコンピューティングに進化している。エッジコンピューティングでは、データをその収集、保存先(エッジ)で処理する。エッジコンピューティングによって、大量のデータとネットワーク遅延の低減を必要とするワークロードのニーズが満たされる。
IoT(モノのインターネット)を導入する際は、IoTが生成する大量のデータにエッジコンピューティングを活用する。AIモデルの調整など、データに基づいた意思決定についても同様だ。収集したデータをネットワーク経由で送信し、集中管理型のデータセンターで処理する従来型の手法はとられない。エッジで処理の結果のみをネットワーク経由で転送する。そのため、このモデルではWAN接続での遅延や中断が起きない。
エッジコンピューティングに移行する場合、高度に分散したインフラの監視と管理に、多くの経験と投資が必要になることには注意したい。
5.目が離せないSaaSの進化
SaaSにより、企業は所有するインフラを減らし、企業インフラの管理作業も一部減らせるようになる。社外のプロバイダーに対価を支払うことで、インフラがサービスとして提供される。
本稿で紹介している他のITトレンドに比べると、SaaSは比較的多くの企業で導入されている。しかしSaaSによってIT管理の複雑さやリスクが増すことは多い。大規模ホスト型ワークロードに対応できるプロバイダーを利用する企業が増えると、こうした問題は増加の一途をたどる。企業IT部門であれば、コンプライアンスやガバナンスの要件を満たすために、SaaSプロバイダーのワークロード運用方法や、インフラ運用状況の可視化と監視が必要になるかもしれない。IT部門では、SaaSアプリケーションを他のシステムと結び付けるために必要な統合作業の準備も整えなければならない。
6.ネットワークアジリティーの改善
多くの企業はIT運用のアジリティーとスケーラビリティの重要性を理解している。しかし従来のネットワーク構成では、これらの要件を満たすのに苦労する。自前のネットワークだけでは、IoTの導入やエッジコンピューティング、リモートコンピューティングの使用が制限される可能性がある。企業のローカル環境では、ネットワークのプロビジョニング、セキュリティ確保、監視のための適切な運用が足りていないことがある。不適切なLAN構成はネットワークを飽和させ、トロンボーン現象と呼ばれるトラフィックの激しい変動を引き起こす恐れがある。このような構成でネットワーク構成管理を使用してトラブルシューティングやエンドユーザーの要求に対応しようとすると、ネットワーク管理者が疲弊する危険性がある。
こうした課題にはネットワーク自動化戦略で対処する必要がある。ネットワークのトラフィックを処理し、企業用LANのデバイス検出、プロビジョニング、管理を一部自動化するフレームワークを評価しなければならない。
7.AIによるIT環境の強化
機械学習と人工知能(AI)技術によってデータセンターとITの運用が変わり始めている。IT運用にAIを利用する「AIOps」では、さまざまな管理運用ツールや製品を利用する。AIOpsテクノロジーは、ログファイル、システムエージェント、ユーザー操作などのソースから収集した膨大な量のデータを消化する。データはモデルに従って数学アルゴリズムによって処理される。AI技術ベースのツールは、モデルが適切に構築、調整されていれば、人間が計算するよりも迅速で一貫性があり、正確な予測を立てることができる。
分散システム管理では、AI技術の可能性を考慮する必要がある。このようなシステム管理では、支社や支店、エッジコンピュータなど、遠く離れた見落としやすい場所にあるシステムを構成して管理しなければならない。AIを利用してシステムの保守を強化することも可能だ。何らかの動作の相互関係や根本原因を診断し、データセンターの運用について、未来を予測するための分析や意思決定のための分析をする。AIOpsによってITコストが削減され、ユーザーエクスペリエンスが向上し、新しい収益を得るきっかけとなる可能性がある。
8.全世界規模でのパートナーシップの評価
実際のデジタルダイバーシティーでは、世界中で複数のプラットフォームやインフラの運用が発生することになる。ベンダーが世界各地にサービスを提供しているからといって、自社ビジネスの成功が保証されることはほとんどない。多くの場合、企業はベンダーと、単なるサプライヤー契約にとどまらないビジネスパートナーシップを築く必要がある。しかしパートナーシップはリスクをもたらす。パートナーは、失敗する恐れもあれば、画期的な変化を実現することもある。パートナーシップを多く結ぶほど、リスクも大きくなる。脆弱(ぜいじゃく)なパートナーや、イノベーションへの意思に欠けるパートナーは競争に不利益をもたらす。
世界規模でのパートナーシップを詳しく調査し、各プロバイダーの能力と限界を評価し直さなければならない。パートナーのロードマップを調査して、どのパートナーの提供サービスが、どの業務に適するかを判断する必要がある。
9.テクノロジーの進化と共に登場するITの新たな役割への対応
新しいITトレンドによりインフラが再形成されている。自動化、クラウド、ビッグデータ、機械学習などのテクノロジーは、いずれもITの新しい役割を生み出している。
テクノロジーの変化が加速することで、幾つかの新しいITサービスを利用する機会が企業にもたらされる。IT専門家には、多様なリソースやサービスを組み合わせる能力が求められる。さまざまなサービスを企業の具体的ニーズやワークロードに合わせてカスタマイズすることに注力することも必要だ。統合を通じて異なるシステム、プラットフォーム、フレームワークを相互運用することも欠かせない。
IT部門には創造力のあるスタッフが必要だ。今後は、構成やプロビジョニングをする人材だけではなく、目標とする成果への道を見いだす人材を雇用することになるだろう。
10.今後の雇用の中で人材管理を最適化
テクノロジーはビジネスを動かしているが、テクノロジーを運用するのは人間だ。2019年、能力のあるIT担当者を見つけて継続雇用することはますます難しくなるだろう。システム管理者のような従来のIT職務は定義が明確で、トレーニングは比較的簡単だった。しかし、先を見据えたIT部門において新たに形成されつつある各職務は、その要件と責任を理解することさえ難しい。
プロジェクトに必要なトレーニングを受けたIT担当者が不足すると、プロジェクトが停滞する恐れがある。企業は有能な人材の離職が原因で、競争上の不利益を被ることもある。
これらの新たなITトレンドを念頭に置き、従業員を育成する必要がある。クロストレーニングや知識の共有を重視し、福利厚生や在宅勤務を軸に据えた大胆な雇用戦略を検討しなければならない。
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