企業向けのトレンドを読む
AIの未来予測、2019年は医療とFinTech分野に要注目(1/2 ページ)
2019年の企業向けAI(人工知能)のトレンドとして、医療やFinTech分野での活用拡大と、小規模AIベンダーの統合が進むことが予想される。
「最近のAI技術の宣伝は過剰な期待をあおっている。企業も消費者ももう少し冷静になるべきだ」という意見があるかと思えば、「AI技術は急速に進化していて、既に実用的に役立っており、無限の可能性が期待できる」という意見もある。
現在はAI技術について多様な情報が飛び交っている。AI技術の現状はどうなっており、2019年にはどのような方向に進み、将来のビジネスにどのような役割を果たすことになるのだろうか。
現状のAI技術は宣伝しているほどの成果を実現していないという人もいれば、医療やジャーナリズムをはじめとする多くの業種や専門分野で世界的にAIの導入が進んでいると見る人もいる。
AIの急激な進歩は創造すべきでないものを創造してしまう危険があると警鐘を鳴らす人もあれば、そうした見方は非現実的な終末論だと批判する人もいる。
専門家の意見はさまざまに分かれている。AI技術の急激な進歩に規制や標準化は追い付いていない。AI技術の将来はまだ明確ではないものの、未来図は少しずつ具体化しつつある。
それは多くのスタートアップとともに動き始めている。
スタートアップの増加と統合
2018年12月5~6日、米ニューヨークで「AI Summit」が開催された。KPMGのプリンシプルを務めるトッド・ロア氏は大勢の来場者で賑わう展示会場を見て、次々と誕生するAI関連のスタートアップは数え切れず、「イベントに行くたびに新しい会社が増えている」と語る。
2018年で3年目を迎えた「AI Summit」には、AI技術やAI関連製品のベンダーや開発者、購入を検討する企業などが数多く集まった。出展ベンダーの多くが2016年か2017年創立の新興企業であり、独自の機械学習技術や自然言語処理(NLP)技術を提供し、ベンチャー投資家から多額の資金を調達している。
このようにイノベーションを売りに資本を集める急成長中のスタートアップは多数誕生しているものの、いずれはそれらも大企業に併合され、GoogleやAmazonなどの巨大企業によるAI市場の独占が続くものとみられている。
「大手クラウドプロバイダーが長期的なAIベンダーになるだろう」とロア氏は予想する。
未来学者エイミー・ウェブ氏が2006年に創設したコンサルティング会社Future Today Instituteも同様の予想を示している。
同社の報告書「2019 Trend Report for Journalism, Media & Technology」は「大企業9社がAI市場を支配する」と予想しており、米国ではAlphabet、Amazon、Microsoft、IBM、Facebook、Apple、中国ではTencent、Baidu、Alibabaが市場を支配すると推測している。
「どのようなテクノロジー分野でも、少数の企業が市場を支配すると、人材と知的財産の独占が起こりやすい」と同報告書は述べている。
同報告書は、今後はこの種の集中化の利点と欠点、そしてより活発な競争が必要かどうかを議論することが重要になると付け加えた。
使いやすさの向上と継続的な民主化
2019年の企業向けAIツールは、より安価に、より簡単に利用できるようになり、民主化が継続して進むと予想される。
アナリティクス関連の著作を多く発表している米バブソン大学情報技術教授トム・ダベンポート氏はAI Summitのイベントで語り、「流れは市民データサイエンティストの方向に進んでいる」と述べた。
セルフサービス分析とAIのツールの進歩によって「市民データサイエンティスト」が増えている。市民データサイエンティストとは、専門家ではないがデータ分析を行うことができる人たちを指す。数年前までは専門家でなければデータ分析を行うことはできなかった。AIや機械学習を活用した拡張分析を利用できるようになったことで、IT担当者やエンジニア、経営者たちも自力でデータ分析ができるようになってきている。
数学コンピューティングソフトウェア会社のMathWorksでエンジニア兼製品マーケティングマネージャを務めるセス・デランド氏は「機械学習ツールは年々使い方が簡単になっている」と話す。
MathWorksが販売するデータサイエンスツールは、簡単に使えるようにするために、ポイント&クリックインタフェースを備え、機械学習技術を採用しているという。
デランド氏によると、MathWorksの顧客の多くを占めるエンジニアたちは、機械学習モデルの構築を支援するMathWorksのアプリケーションは使い方が簡単で、それ自体を学習ツールとして使うこともできると話しているという。
エンジニアたちは数学や科学の知識はあるが、データサイエンスの専門家ではない。少し前までは、データサイエンスの専門家でなければ機械学習モデルを構築することなどできなかった、とデランド氏は語る。
企業が利用できるビッグデータはこれからも増え続け、演算能力は高まり、AIベンダーの数も増加することを考えると、AIを利用したこうしたソフトウェアはさらに簡単に使えるようになっていくだろう。
ロンドンに拠点を置くコンサルティング会社RELX Groupが2018年に実施したAI技術の将来に関する調査では、回答した企業経営幹部の88%が「AIと機械学習は自社の競争力向上に役立つと思う」と答えたという。
一方、そうした技術を既に導入していると回答した企業は56%にとどまっており、AIツールに大きな需要があることを示している。
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