現在の人工知能(AI)は誇大広告? 真の知能を獲得するまでの道筋とは必要なのは“正しく期待“すること

現在のAIツールはまだ、真の人工知能とは呼べない。このことは近い将来、企業がこのテクノロジーをどのように使用するかに影響するかもしれない。

2017年07月31日 05時00分 公開
[Ed BurnsTechTarget]

関連キーワード

CIO


「Sloan CIO Symposium」のWebサイト《クリックで拡大》

 現在世間で人工知能(AI)と呼ばれているテクノロジーが誇大広告の通りの性能を発揮していると、誰もが信じているわけではない。また、現実と広告との間に生じているギャップは、大企業が最終的にこのテクノロジーをどのように利用するかに影響を与える可能性がある。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)のジョシュ・テネンバウム教授は、同大学内のスローン経営学大学院で2017年5月に開催されたカンファレンス「Sloan CIO Symposium」でパネルディスカッションに登壇し、「真の意味でのAIはまだ実現されていない。脳と心の働きに、まだ解明されていない部分があるからだ」と発言した。

 パネルディスカッションの登壇者たちはその席上で、現在AIと呼んでいる適用事例と、真のAI、つまりそれ自身で思考して学習することのできるプログラムとの違いについて議論を戦わせた。シンポジウムの参加者は総体的に、AIの現状と理想としての真のAIとの間には大きなギャップがあることを認識した。

 「私がここで皆さんにお知らせしたい警告は、正しい期待をすることだ」と、ロボティクス企業Clearpathの共同設立者兼CTO(最高技術責任者)であるライアン・ギャリピー氏は語る。「企業で働き、このテクノロジーについて調べている人が期待をむやみに高めて、思い切って(AIの)テクノロジーを導入したものの、何も成果を挙げられなかった例を、われわれは過去に散々見てきている」

AIは有望だが大局的に捉える必要がある

 今日AIと呼ぶシステムは間違いなく、わずか数年前のAIテクノロジーを大幅に改良したレベルのものだと、ギャリピー氏は話す。例えばClearpathでは、鉱山や倉庫での作業向けに、産業用の自走式車両を製造している。こうした自走式車両は、ある程度(のレベル)の機械学習とコンピュータビジョンがなければ機能しないが、現在これらのテクノロジーは一般的にAIのカテゴリーに分類される。

 ただし、ここまで進歩したとはいえ、人間が一切監督しなくても自ら考えて行動する自律型ロボットにはまだ遠いと、ギャリピー氏は指摘する。

 「ここに、われわれは注意を払うべきだ」と、同氏は続ける。「AIには途方もない可能性があるが、どんな問題でも人間が介入することなく解決できるとまでは言えない」

 ここでのポイントは、用語の定義だけではない。現在流通しているAIが真のインテリジェンスなのか、またはそれには及ばないかどうかは、それぞれの製品の使い方に関わる問題だ。結局のところ、本当に自律的でインテリジェントなシステムが登場すれば、それは定型的な単純作業からより高いレベルの知識作業まで、あらゆる作業の完全な自動化への道を開く可能性がある。

 現在人間が行っている作業は全てAIで自動化できるという主張については、幅広い場面で議論を巻き起こしている。ただしパネリストは、このようなトピックに関しては人々の想像が先走りがちだとも指摘する。現在のAIテクノロジーは、大勢の人々を仕事から解放するほどのレベルには達していないからだ。

 今日のテクノロジーではどちらかといえば、仕事を自動化するというよりは、労働者の数を増やす可能性の方がずっと高い。

 「AIは最初に世に出た頃から、人間の能力を補強するのか、それとも自動化によって人間に取って代わる存在となるのか、常に論争の的となってきた。そしてその論争がまさに今、再び盛り上がっている」と、MITのメディアラボ所長 伊藤穣一氏は語る。「自動化が最適な答えではないと思う」

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 双日テックイノベーション株式会社

ニッセイ情報テクノロジーに学ぶスマートワーク推進、会議&外線電話の課題解消

ニッセイ情報テクノロジーでは、テレワークから出社へ移行する中で、会議の効率化と外線電話の対応が課題となっていた。そこで同社は、テレビ会議システムやクラウドPBXを活用し、柔軟な働き方を実現するための環境を整備した。

製品資料 株式会社ジャストシステム

紙を用いた業務から脱却、製造業でのペーパーレス化を推進するための打開策とは

製造業では、紙ベースの業務が依然として多く残っているが、業務効率やセキュリティの観点で考えると、ペーパーレス化の必要性は高い。本資料では、その推進を支援するノーコード開発に対応したクラウド型の業務管理システムを紹介する。

製品資料 株式会社ジャストシステム

社内に眠る情報を徹底活用、「データドリブン」に向けて押さえたいポイント

会社内には多種多様な情報が存在している。そこには、ビジネスをドライブし新たな価値創出につなげる起点となる貴重なデータもあるはずだ。そうしたデータを生かし、データドリブンを実現するためのヒントと具体的方法を紹介する。

製品資料 株式会社ecbeing

受注業務DXを基礎から解説:得られる効果から実現するための手段まで

昨今、受注業務をWebに移動することで新規顧客の獲得や売り上げの増加へとつなげる取り組みが加速している。そこで本資料では、受注業務のDXがもたらす効果や、DXを実現するための2つの手段などを分かりやすく解説する。

製品資料 株式会社ecbeing

顧客との取引を変革する受発注システム、効率化できる4つの業務と注意点を解説

企業間の取引を効率化すべく、受発注システムの導入が広がっている。その活用で具体的にどの業務を効率化できるのか、また導入に当たってどのような点に注意すればよいのか。受発注システムの導入で押さえておくべきポイントを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。