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在宅医療・介護の多職種連携支援システム、明らかに便利なのに使われない理由
在宅医療・介護はさまざまな職種がチームを組んでサービスを提供します。しかし多職種間コミュニケーションのための情報共有システムは、あまり普及していません。その原因は、コストとスキルの問題に大別できます。
地域包括ケアシステム(注1)の完成を目指す2025年に向けて、各地で急ピッチの整備が進んでいます。地域包括ケアにおいて、医療と介護の橋渡しの役割を担う「在宅医療」が重要であることについては疑う余地がないでしょう。
※注1:地域の包括的な支援やサービス提供体制。厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに、地域包括ケアシステムの構築を推進している。
「在宅医療」は入院医療と外来医療に次ぐカテゴリーとして位置付けられています。日本では診療所への通院が困難な患者数は、決して少なくありません。急激な高齢化や核家族化の伸展、それに伴う独居世帯の広がりなどが、その背景にあります。2018年の診療報酬改定でも、在宅医療の裾野の拡大が盛り込まれたように、もっと多くの医療機関が在宅医療に参加することに対する期待が高まっています。
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在宅医療は、自宅や介護施設にいながら療養している患者を支援するサービスです。入院医療で提供している定期的な診察や検査、看護、介護、リハビリテーションなどを、出張あるいは施設サービスとして実施することになります。
入院医療よりもコミュニケーションが難しい在宅医療
在宅医療は、1人の患者に対してさまざまな職種(医師や看護師、薬剤師、理学療法士/作業療法士などのリハビリスタッフ、介護福祉士、訪問介護員、ケアマネジャーなど)の職員が関わります。各職種は所属する組織が異なることが一般的で、毎回患者ごとにさまざまな組み合わせで担当に当たることになります。入院医療であれば、異なる職種同士が院内で顔を合わせる機会を作りやすく、コミュニケーションは比較的容易です。在宅医療だと同じ場所、同じ時間に全ての職種が集まることはまれで、入院医療よりも職種間のコミュニケーションが難しくなります。そのような状況の中で患者の状態を関係スタッフが常に把握するためには、多職種間の情報共有の仕組みが重要になることは言うまでもありません。
多職種間連携システムを全員で使用するためには
多職種間での情報共有には、電話やFAX(ファクシミリ)、メール、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などさまざまな仕組みが利用されています。患者ごとにスタッフの組み合わせが変わるように、情報共有の仕組みも組み合わせごとに変わります。関係者はさまざまな仕組みを常に見て(聞いて)対処しなければならないのです。これがとても大変だということは容易に想像できるでしょう。全ての関係者が同一の仕組みを使って情報共有できれば、スタッフの負担は大幅に軽減できます。そこで地域ごとに多職種間連携システムを共同利用する試みが進んでいます。
多職種間連携システムに全関係者が入ってくれればよいのですが、さまざまな理由で全員参加とならないことが現状です。なぜなのでしょうか。
原因は、コストの問題とスキルの問題に大別できると考えられます。多職種間連携システムは無料ではありません。システム構築にも、日々の運営にも費用がかかります。アクセスするためには端末も用意しなくてはなりません。ITリテラシーやスキルレベルがばらばらで、所属する法人も異なるスタッフ全員に使ってもらうためには、定期的に説明会や勉強会を開く必要もあります。システムを運営する団体は、これらにかかるコストを継続的に負担する必要があるのです。たとえ初期導入コストを補助金で賄ったとしても、単発の補助金ではシステムを運営し続けるコストまでは賄えません。年間予算ベースではなく、少なくとも5年間継続的に捻出できる補助金があればいいのですが、補助金の予算は年度ごとに区切られるのが一般的なので、難しいのでしょう。
医療と介護のコミュニケーションの在り方を見直す必要がある
コストの問題の一方で、スキルの問題も依然として残ります。システム選定と導入は、使用する人々のスキルに左右されるという問題です。情報共有でPCやタブレット、スマートフォンを使うには、それらを使いこなすためのトレーニングが必要です。PCに苦手意識のある人は、情報を入力すること自体に抵抗を感じますし、定期的に情報にアクセスすることもないでしょう。この問題を解消するためには、リテラシーを向上させる研修(PC研修など)を定期的に実施してスキルの底上げを図るか、システムを誰でも使えるように改良するしかありません。
医療と介護の情報共有において、特に法人を超えた情報連携をする場合、得てしてかなり気を遣った回りくどい文章になりがちです。紹介状などの文面を見れば明らかでしょう。
企業やコンシューマーの世界ではSNSの利用が一般的になり、チャットツールをはじめ、メールよりもはるかに気軽なコミュニケーションツールも普及し、定着している時代です。にもかかわらず、医療や介護の現場で伝統的な情報共有形式にこだわっているままでは、有用なはずのITも利用しにくくなってしまうのではないでしょうか。今こそ、医療・介護分野のコミュニケーションの在り方を見直す時期に来ているのではないかと考えます。
次回は、「働き方改革関連法案と、医療機関のバックオフィス業務のIT化」について解説します。
著者紹介
大西大輔(おおにし・だいすけ)MICTコンサルティング
一橋大学大学院経営学修士(MBA)コース修了。医療コンサルティング大手に入社。2002年に医療IT機器の常設展示場「MEDiPlaza」を立ち上げ、企画運営、スタッフ指導、拠点管理などを担当。2016年10月に医療ICT専門コンサルタントとして独立し、MICTコンサルティングを設立。医療機関向けシステムの開発アドバイス、導入アドバイス、医療IT人材の育成などを手掛ける。過去2000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、公的団体を中心に講演を多数実施している。現在、医療事務・クラーク専門学校の非常勤講師も務めている。
このコラムについて
医療機関のIT化は他の業界に比べて5~10年は遅れているといわれます。また、医療現場でIT製品を導入する際、スタッフから不安の声が上がるなど、多かれ少なかれ障害が発生します。なぜ、医療現場にITが浸透しないのか。その理由を探るとともに、解決策を考えていきます。
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