IBM、Cloudera、Domino Data Lab、Oracle以外にも
人工知能(AI)で急成長のデータサイエンスツール、商用とオープンソースの違いは?
商用製品からオープンソースまで、人工知能(AI)を使ったデータサイエンスツールの選択肢が広がっている。うまく利用すれば、データアクセスや分析モデル作成、データ管理の共同作業が簡便になるだろう。
データサイエンスツールは、データサイエンティストのチームが高度な分析課題に共同で取り組むのを支援してくれる。チームはデータサイエンスツールを使って、各種データソースからデータを取り込み、目的に合った分析ツールや機械学習ツールを選び、大規模な分析モデルを作成してビジネスに役立つ予測ができる。これらのツールはビッグデータと高度な分析技術を組み合わせることで、企業が膨大なデータを管理し、モデリングプロセスをスピードアップできるよう支援する重要な役割を果たす。
データサイエンスツールに求められている役割は、分析チームがデータエンジニアやアプリケーション開発者と連携して進める自動化やコラボレーション、継続的な管理を支援することだ。だが「今あるツールの大半は、モデルの作成とデプロイ(配備)までしかカバーしていない」と、調査会社Constellation Researchのアナリスト、ダグ・ヘンシェン氏は指摘する。
「モニタリングと継続的なライフサイクル管理は通常、別扱いとなっている。IT担当者やアプリケーション開発者へのサポートはまちまちだ」(ヘンシェン氏)
調査会社MarketsandMarkets Researchによると、データサイエンスツール市場は年平均約39%のペースで成長し、2021年までに1010億ドル規模を超える見通しだ。調査会社IDCは、コグニティブ(認知)コンピューティングと人工知能(AI)ソフトウェアについて、ビッグデータおよび分析技術のカテゴリーの中で最も急成長している部類に入ると説明。今後数年間の年平均成長率(CAGR)は36.5%と予想する。
データサイエンスツールの中でも以下の4つは、コラボレーションやワークフローアプリケーション用の商用製品として代表的なものだ。
- Watson Studio(IBM)
- Cloudera Data Science Workbench(Cloudera)
- Domino Data Science Platform(Domino Data Lab)
- Oracleが買収したDataScience.comのツール
他にもさまざまなアプリケーション用の多様なデータサイエンスツールがある。例えば、Google、DataRobot、H2O.ai、SAS Instituteが手掛ける自動機械学習ツールは、各ユーザー企業の分析プロジェクトでモデルの開発とトレーニングに使われている。
オープンソースが開くさまざまな機会
さまざまなオープンソース言語(オープンソースの開発実行環境をそろえるプログラミング言語)やフレームワークが台頭している。それに伴いデータサイエンスツールの多くも、データサイエンティストがオープンソース言語/ツールを選択して利用できる。ヘンシェン氏によると、人気のある言語には「Python」「R」「Scala」などがあり、人気のあるライブラリには「TensorFlow」「PyTorch」「Keras」「scikit-learn」などがある。
商用ツールは制限が多過ぎると考える企業もある。その一因は、製品ジャンルが比較的新しいことだ。「こうした製品ジャンルは全て、ツールへの深いコミットメントを要求する。つまりベンダーロックインにつながってしまう」。システムインテグレーションと技術サービスコンサルティングを手掛けるInsightの国内業務責任者、ケン・セイアー氏はそう語る。「これまでのところ、われわれの顧客は一貫してオープンソースを選んでいる」
オープンソースと商用の両方のツールを手掛けるベンダーもある。こうしたベンダーの一社がAnacondaだ。同社は小規模なデータセットを使って機械学習モデルを開発できる、オープンソースのオンプレミスツールを提供している。一方で商用版の「Anaconda Enterprise」ならば「データサイエンティストが大規模なフルデータセットでモデルをトレーニングできる」と、同社の共同創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるピーター・ワン氏は説明する。
IDCは、世界のデータ量が2018年の33Z(ゼタ)Bから、2025年には175ZBまで増えると予想している。2025年には、保存された全てのデータの半分近くがパブリッククラウド環境に置かれる見通しだ。データサイエンスツールは、「Apache Hadoop」などのビッグデータシステムや、従来のデータストアに保存されたデータに対して、接続の簡素化とスピードアップに貢献する。「データサイエンティストは、データアクセスを実現しようとするたびに、IT担当者やデータエンジニアと共同作業をしなくても済むようになる」と、ヘンシェン氏は語る。
一部のデータサイエンスツールは、サードパーティーのデータソースやデータ準備ツールと連携できる。「従来のデータサンプリングやデータ移動の要件に縛られず、ツールを進化させる狙いだ」と、ヘンシェン氏は説明する。企業はより大規模な分析をしたり、反復プロセスを迅速化したり、モデルを開発したりできるという。
データサイエンティストとその志望者のためのツール
当然のことながら、データサイエンスツールは、主にデータサイエンティスト向けに作られている。DataRobotやSAS Instituteなどのベンダーは、ツールにある程度の自動化を導入して、データサイエンティスト以外のユーザーでも使いやすくしている。ただし「少なくともユーザーは、データや分析に精通しているパワーユーザーだろう」と、ヘンシェン氏は指摘する。
SAS Instituteは、自社のツールを幅広いユーザーにとって使いやすいものにしようとしている。「われわれのツールはユーザーインタフェース(UI)が選択できる」と、同社のアドバンストアナリティクスおよびAI製品管理担当ディレクター、ソーラブ・グプタ氏は説明する。同社はドラッグ&ドロップが可能なUIをビジネスユーザー向けに、プログラミング用UIをデータサイエンティスト向けに用意している。「当社のツールを採用すれば、データサイエンティストやビジネスアナリスト、開発者、企業役員など、さまざまな職種の担当者を集めたプロジェクトチームを編成できる」と、同氏は付け加える。
クラウドベースのデータサイエンスツールについては、データのプライバシーやセキュリティを懸念する企業が依然として存在する。そのためオンプレミス運用が有力な選択肢となる。金融や医療のような業種では特にそうだ。Domino Data Labのマーケティング担当副社長、ジョン・ルーニー氏によると、同社はクラウド版とオンプレミス版のデータサイエンスツールを提供している。これらのツールを利用するデータサイエンティストは、RやPythonのようなオープンソースツールに加え、SAS InstituteやDataRobotの商用ツールを組み合わせて利用できる。
ヘンシェン氏によると、高度な分析の分野ではこれまでSAS InstituteとIBMが最大の顧客基盤と売上高を誇ってきた。「これは今も変わらない。既存の投資やライセンスと保守サポート収入のおかげだ」とヘンシェン氏は語る。ソフトウェアレビューサイト「G2」はWatson Studioについて、データサイエンスワークフローの管理ツールの中で、ユーザーの全体的な評価が最も高い製品として挙げている。
調査会社Gartnerが2019年1月に発表したベンダー評価レポート「Magic Quadrant」では、商用ライセンスを提供しているデータサイエンスツールと機械学習ツールのベンダー17社を取り上げ、「ビジョンの完全性」と「実行能力」を軸に評価。その結果に基づいてベンダーを「チャレンジャー」「ニッチプレイヤー(特定市場指向型)」「ビジョナリー(概念先行型)」「リーダー」に分類している。
ビジョンの完全性と実行能力がともに高い「リーダー」に選ばれたのは、RapidMiner、TIBCO Software、KNIME、SAS Instituteだ。AlteryxとDataikuは実行能力が高い「チャレンジャー」に、DataRobot、Google、H2O.ai、IBM、Microsoftと他の2社は、ビジョンの完全性が高い「ビジョナリー」に分類された。
現在ではGoogleの「Cloud AutoML」やDataRobotの同名ツール、H2O.aiの「H2O Driverless AI」のような最先端の自動機械学習ツールもある。「だからといってデータサイエンティストが失業することはないだろう」と、Gartnerのアナリスト、スベトラーナ・シクラー氏は見る。「データサイエンティストは価値の高い問題に取り組むといい。機械学習には多大な関心が寄せられており、データサイエンティストの仕事は山ほどある」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー