事例の力で理解を促進
AIの本当のすごさ、3つのユースケースから学んだこと
Gartnerのエリック・ブレゼノー氏によると、ユースケースに関して話をするのは物語を語ることに似ており、企業にとってAIがいかに大切なものであるかを証明する上で鍵になり得るという。
ユースケースは、理屈でなく見て分からせるものだ。機械学習や自然言語処理などの最先端技術においては、AIが実際にどう使用されているかを見ることこそが、AIの生み出し得る価値を実感できる機会となる。
Gartnerでリサーチディレクターを務めるエリック・ブレゼノー氏は、AIのユースケースは、物語を語るための型のようなものに例る。それは技術の仕組みを説明するのに役立つ。そして、AIについて誇大宣伝ばかり聞かされている人に、AIが本当に価値あるものだと証明する上で役立つというのだ。
ブレゼノー氏は最近、AIのユースケースに関する専門書を出版した。4部からなるシリーズの最終作だ。同氏は、AIの使用を開始した企業が得られる重要な要素を説明するためにさまざまなAIのユースケースに関して語っている。その中から3つを紹介する。
1. 他業種のAIユースケースからインスピレーションを得る
「私はクライアントに対して、他の業界におけるAIのユースケースからもインスピレーションを得ることを勧めることがよくある」とブレゼノー氏は新著の購買特典であるウェビナーで述べた。
ブレゼノー氏は2、3年前、戦闘機用エンジンメーカーでチーフエンジニアを務めていた友人とともにヨーロッパへ出張に出掛ける機会を得た。友人は、センサーフュージョン(最適化技術と複数のセンサーから集めたデータを統合的に管理するソフトウェア)を備えたより一層インテリジェントなコックピットを、AIを利用して開発する手法についてプレゼンテーションを行っていた。この技術は、パイロットがリアルタイムに情報を理解し、その情報に適切に対処する手助けをする。この技術によって、パイロットの命を守れる場合もあるだろう。
「彼は、このコックピットの仕組みに加えて、データのインプットやアウトプットの最適化を行う手法を幾つか説明していた」と、ブレゼノー氏は言う。
スウェーデンの大手銀行から参加した聴衆にとって、このプレゼンテーションは驚きと納得の入り交じったものとなった。同行の行員は、コックピットとはトレーダーのワークステーションのようなものであり、情報を素早く理解して瞬時に判断する必要のある場所だと理解した。トレーダーのワークステーションはセンサーフュージョンと類似の技術を導入している。
2、3カ月検討した後、同行のトレーディングデスクは戦闘機のコックピットのように様変わりし、AIのユースケースが新たなプロジェクトのインスピレーションの源となることが証明された。
2. ビジネスの問題を認識する
CIOはスキル、データ、あるいは技術に関して検討する前に、ビジネス上の問題をまず認識すべきだとブレゼノー氏は強調する。「ユースケースから考え始めることはお勧めできない。まずは、ビジネス上の問題の認識が必要だ。そのため、ビジネス上の問題を2つか3つ認識することから始め、成果を幾つか引き出せるまで数週間、詳細に調べる。そこが出発点だ」(ブレゼノー氏)
ブレゼノー氏が2、3年前にコンサルティングを担当したウオッカメーカーでは、米国のクリスマスシーズンに販売量をどう最大化するかがビジネス上の課題であった。ここでは機械学習を使用してデータを選別し、対象顧客とすべき最も適切な顧客セグメント、つまり、商品を購入する可能性が高い顧客を見つけることから始めたとブレゼノー氏は語った。
データから、最も商品を購入する可能性が高い顧客セグメントは、18歳から23歳までの若い男性だということが判明した。問題は即座に明確となった。米国では、ほとんどの地域で21歳未満の人はアルコール飲料を購入できないのだ。
「そのため、問題が複雑化した。国、都市、州それぞれが(商品を販売する)方法や認可の可否について、独自の規則を設けているからだ」(ブレゼノー氏)。ブレゼノー氏は規則を認識し、ルールベースのシステムに反映させ、国や都市、州それぞれが制定している法律を順守するようにした。
その上でブレゼノー氏と彼のチームは、製品を配送するプランを立案し、AIを使用して配送ルート管理や在庫管理などを最適化した。「数多くの規制を考慮に入れつつ、適切な柔軟性を維持し、適切な時間に適切な場所で確実に在庫を保管するという過去に学んだ方法を基に予測を行う必要があった」と同氏は語る。
3. 外部データの価値
ブレゼノー氏は中小企業に対して、AIを活用するに当たっては、たとえデータが十分にないと感じられる場合でも自社のデータを除外せず、考慮に入れるよう勧めている。
「企業規模やデータの量は、AIを利用すべきかどうかの判断に特に影響を及ぼさない。結果を導き出すために必要なのはデータの質だ」とブレゼノー氏は言う。
企業は社内データをサードパーティーのデータを用いて埋め合わせることも可能だ。フランスの小規模チェーンの洋菓子店もその一例だ。同社は、天候パターンが商品の売れ行きに影響を及ぼすため、それに応じて商品の陳列を変える必要があると考えた。そして、過去の販売データを引き合いに出し、そのデータと特定の天候パターンにおいてどの商品が最も売れているか、さらに、店頭の最も目立つ場所にどの商品を陳列すべきかを決定するために、局所的な天候に関するサードパーティーのデータを購入して組み合わせ、この考えが正しいことを証明した。
そして、天候不良の場合には、つやがありこってりした甘い洋菓子の需要が高くなることが判明した。「このプロジェクトは小規模だが、同社にとってはとても役立つものだった」と、ブレゼノー氏は語った。
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