女子高生AI「りんな」は人間に投資信託を買わせることができるか?AIチャットbotの可能性について識者が対談(1/2 ページ)

AIチャットbotを、例えば個人の資産運用にどう活用することができるか。日興アセットマネジメントの神山直樹氏とLINEの砂金 信一郎氏が語り合った。

2018年06月12日 05時00分 公開
[冨永裕子]

 コンピュータが人間に代わり、資産運用をする「ロボアドバイザー」が続々と登場している。ここに日本マイクロソフトが開発した、女子高生という設定のAI(人工知能)チャットbot「りんな」を活用したら、個人の資産運用にどう関わることができるか。

 2018年5月23日に開催された「Teradata Universe Tokyo 2018」では、日興アセットマネジメントの神山直樹氏(チーフ・ストラテジスト)とLINEの砂金 信一郎氏(Developer Relations Team マネージャー/プラットフォームエバンジェリスト)が、りんなによる投資信託販売の可能性を議論した。本稿ではその内容を再構成した上で、ハイライトとなる部分を紹介する。

「会話を続けること」に最適化したりんな

りんな りんなは2018年6月現在、LINE公式アカウントで約700万人の友達を有する(出典:日本マイクロソフト)《クリックで拡大》

 りんなは、日本マイクロソフトが運営する「人間とより長く会話を続けること」に最適化したAIチャットbotだ。AIといっても、問い掛けに対して正解を返すわけではない。例えば「明日晴れるかな」と聞いても「晴れです」ではなく「どこか出掛ける予定でもあるの?」などと答えることがある。これに対して人間が「今日はディズニーランドに行こうと思っている」と続けることで、会話のラリーが生まれるわけだ。

 りんなはビジネスでも利用されている。例えばローソンLINE公式アカウントは、りんなと連携し、ローソン公式キャラクターの「ローソンクルー♪あきこちゃん」がお薦め商品を教えてくれたり、ローソンの商品名でしり取りをしてくれたりと、ユーザーと双方向のコミュニケーションを取ることで、多くのファンを獲得している。

 これと同様に、りんなを金融の領域に応用することで、例えば資産状況を監視して何かサジェスチョン(提案)をしてくれるといった可能性が出てくるのではないか――。議論は、そこから出発した。

今の投資家の考えとAIを使った解決策

神山直樹氏 日興アセットマネジメントの神山直樹氏

神山 りんなの存在を知ったとき、「投資信託を売ってくれることになる」という勘が最初からありました。日本では投資をしたことのない人がほとんどです。今後の投資意向も少なく、説得に時間がかかります。宣伝をすればインターネット証券の口座開設は増えるのですが、入金するところまで至らない。銀行でも対面で説明して投信を販売していますが、1時間ぐらい説明しても完全な理解は難しい。長い時間をかけて人間が説明すると、コストが見合わないという問題もあります。

 運用で必要なのはサジェスチョンですが、20歳の人と60歳の人では理解度も手元の金融資産も違いますから、それぞれにカスタマイズが必要です。LINEの中で「ボーナス出た後どうしたの?」から会話がつながれば、その人に合ったサジェスチョンができるのではないかと思います。

砂金 信一郎氏 LINEの砂金 信一郎氏

砂金 LINEでは2018年1月に新会社LINE Financialを設立し、金融事業を拡大する計画が始まっています。LINEの中心的ユーザーはPCよりもスマートフォンを使っている人たちです。今月余ったお金を投資してもらうことがLINEならできそうですし、これまで(金融とITを融合させたFinTech領域で)培ってきたベストプラクティスを武器に、LINE自身がメガバンクの代わりになるかもしれません。窓口でリスクの説明を受けてから金融商品を購入するのとは違うアプローチで、投資に対する心の壁を取り払うアプローチを考えてみてもいい。

りんなが一人一人に個別のアドバイスをしてくれる世界

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       1|2 次のページへ

新着ホワイトペーパー

製品資料 アルテリックス・ジャパン合同会社

AIを活用してより良いインサイトを獲得、「AI対応データ」を準備する方法

AIをビジネスで生かし、大きな成果を得るには、「AI対応データ」が必要だ。しかし、AI対応データを手に入れるためには、地道なデータ準備が不可欠となる。本資料では、AI対応データを準備するための6つのステップを紹介する。

市場調査・トレンド ジェネシスクラウドサービス株式会社

1000人のCXリーダーに聞いた、CX向上に向けたAI活用で失敗しないためのポイント

カスタマーエクスペリエンス(CX)向上を目的としたAI活用が広がっているが、自社の対応の遅れを危惧している企業も少なくない。そこで、1000人のCXリーダーを対象とした調査の結果から、AIの導入を成功に導くためのヒントを紹介する。

製品資料 株式会社primeNumber

生成AIの価値を最大化するための「新しいデータ基盤」の在り方とは?

生成AIがビジネスの現場に浸透し、業務の効率化や意思決定の迅速化に貢献している。一方で、期待していたような成果を得られていないという声も聞かれる。その理由とともに、生成AIの価値を最大化するデータ基盤の在り方について解説する。

技術文書・技術解説 アイティメディア広告企画

クラウドか、オンプレミスか? AI時代のインフラに求められる要件とは

AI導入の成否は、その土台となるインフラに左右されると言っても過言ではない。企業がAIモデルの性能を最大限に引き出すために、インフラ構築時に検討すべきポイントを体系的に解説する。

製品資料 NHN テコラス株式会社

初心者向けに徹底解説:生成AIのビジネス活用で重要なポイントとユースケース

文書作成の効率化、マーケティング支援、顧客対応補助など、業務に生成AIの活用を考えている企業は多い。本資料では、生成AIの基本的な仕組みから、ビジネス現場での活用例までを紹介。失敗しない生成AI導入に役立てることができる。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...