「NVMeストレージ」の実力を最大限に引き出す【前編】
NVMeストレージの性能向上に「ファイルシステム」が重要な理由
ファイルシステムによっては、NVMeの高いパフォーマンスが発揮できないことがある。本稿ではその理由を明らかにする。
「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)は、フラッシュメモリベースのストレージを最大限活用できるようにするプロトコルだ。だがNVMeは課題も生み出す。
NVMeは遅延が非常に少ない。それが、ストレージインフラにおいて他のコンポーネントの弱点を浮かび上がらせる。インフラに不備があると遅延が大きくなり、NVMeの価値も下がる。
ストレージインフラの中で問題になりやすい要素の一つがファイルシステムだ。ベンダーはファイルシステムの構造を考え直す時期に来ている。特にファイルシステムが一番のボトルネックになるのを防ぐには、ファイルシステムとNVMe準拠のストレージ(以下、NVMeストレージ)の関わり方を見直さなければならない。
ファイルシステムが重要な理由
一般的に、機械学習などの人工知能(AI)技術をはじめ、高速さが求められるアプリケーション処理(以下、高速ワークロード)に利用するファイルシステムはスケールアウト型だ。スケールアウト型のファイルシステムは、複数のストレージサーバ(ノード)で構成される。各ノードの内部ストレージを集約し、ユーザーやアプリケーションがアクセスできる1つのストレージプールにする。
高速ワークロードが頼りにするのは、ファイルを複数のノードに分散配置する並列構造のファイルシステム(分散ファイルシステム)だ。この構造であれば、任意のノードからユーザーやアプリケーションにサービスを提供できる。一方で全てのストレージI/Oが特定のプライマリーノードを経由する直列構造のファイルシステムは、プライマリーノードの処理が追い付かなくなり、ボトルネックとなりやすい。
ほとんどのNVMeストレージは、ブロックストレージ向けに設計されている。結果として、ファイルシステムによるオーバーヘッドは回避できる。ただし高速ワークロードを処理するために、ブロックストレージにファイルシステムを追加することが少なくない。最新技術を利用したアプリケーション、特に機械学習やビッグデータ分析を処理するアプリケーションは、ファイルシステムが適している。
ファイルシステムが追加されたブロックベースのNVMe準拠ストレージは、設計が適切であれば、ブロックベースのSAS(Serial Attached SCSI)準拠ストレージよりも高速になる可能性が高い。ただしブロックをそのまま使うストレージと、ファイルシステムが管理するストレージのパフォーマンスの差は大きい。企業が必要とするのは、NVMe向けに最適化されたファイルシステムだ。
ベンチマークから分かること
ベンダーが自社のファイルシステムの能力を実証するために使用するベンチマークテストは幾つかある。こうしたテストの大半は、NVMe準拠のブロックストレージと分散ファイルシステムを利用する。こうした分散ファイルシステムには、IBMの「IBM Spectrum Scale」などが使われている。
非営利団体SPEC(Standard Performance Evaluation Corporation)の最新ベンチマークテスト「SPEC SFS 2014」では、テスト環境のストレージ数やストレージの種類、ノード数を変えると、上位を占めるベンダーが大きく変わる。大抵の場合、ハードウェアベンダーは、必要な数よりも多くのハードウェアを用意してファイルシステムのオーバーヘッドを回避しようとしている。その結果、価格が跳ね上がり、大半の企業にとっては手頃とは言えなくなっている。
本当に重要なのは、ハードウェアとファイルシステムが各企業のワークロードの種類や予算と調和して、適切なパフォーマンスを発揮できるかどうかだ。ほとんどの企業には、NVMeストレージとファイルシステムの完璧な組み合わせを作り出せるほど無限の資金はない。IT担当者は、必要な成果を実現できる、最もシンプルな構成を探す必要がある。
後編では、NVMeストレージのパフォーマンス向上を阻む原因と、その解決策を示す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「NVMeストレージ」の実力を最大限に引き出す
フラッシュメモリベースのストレージに最適化された高速インタフェース規格の「NVMe」。せっかくNVMe準拠のストレージを導入しても、使い方によってはパフォーマンスを十分に引き出せない可能性がある。その理由と解決策に迫る。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー