鍵を握るのはWAN接続
「SD-WAN」でネットワークコストが安くなる“これだけの理由”
SD-WANでは、コスト削減の利点が強調されることが少なくない。どのようにコストを削減できるのかを考察する。
ここ数年、企業のIT部門はセキュリティ対策を強化し、アプリケーションを効率的に管理し、ビジネスの継続性を確保するため、LANやWANといった企業ネットワークの改善に注力してきた。ネットワークは基本的にあらゆるビジネスに不可欠なインフラであり、その技術は急速に進化している。
「SD-WAN」(ソフトウェア定義WAN)の導入を検討している企業は、コスト削減がSD-WANを利用する最大の利点だと考えている場合が少なくない。SD-WANによるコスト削減効果は確かに重要視すべき点ではある。だが忘れてはならないのは、SD-WANはネットワークの複雑さを軽減し、短時間でネットワークをプロビジョニング(配備)し、アプリケーションを効率的に展開できる点だ。
クラウドサービスやIoT(モノのインターネット)、BYOD(私物端末の業務利用)が普及しつつある中で、ネットワークの接続性を向上させるための投資は、IT部門にとって最重要事項の一つとなっている。SD-WANベンダーもこのニーズを重要視している。
まずはSD-WANのコスト面での利点について詳しく考察する。
インターネット接続によるSD-WANのコスト削減
SD-WANによってコスト削減が実現するのは、インターネット接続による効果が大きい。筆者は最近、レイヤー3での通信を実現するMPLS(マルチプロトコルラベルスイッチング)網で接続した約250箇所の拠点にまたがる、大規模なWANの再構築に取り組んでいる。MPLS網はIP-VPNといった通信事業者が提供するVPN(仮想プライベートネットワーク)サービスを実現するために採用されており、基本的には「枯れた技術」に位置付けられる。
ベンダーはSD-WANを利用する企業に対して、費用対効果の高い月額50ドル程度のビジネス向けインターネット接続サービスを提供しているケースが少なくない。SD-WANを実現するネットワーク機器を使えば、ネットワークの状態を自動的に制御し、接続を最適化することが可能だ。一方でインターネット接続サービスにはサービスレベル契約(SLA)の評価があまり高くないという弱点がある。
ネットワークサービスのSLAの評価は、ネットワークのパフォーマンスと故障からの回復時間が主な評価の基準となっている。SD-WAN導入によってコスト削減を実現して予算面の条件を満たしているとしても、低コストのインターネット接続サービスの場合、回復時間が長くなる可能性がある。
サポートの問題もある。インターネット接続サービスのサポートは、専用線や閉域網によるプライベートWANサービスのサポートと比べて充実していない。MPLS網を使ったWANサービスのネットワークベンダーのサポートは、顧客重視だといえる。遅延やパケット損失などの問題が発生した場合は、ネットワークベンダーのコアネットワークにアクセスして、それらの問題に対処できる。インターネット接続では機能停止など解決に時間のかかる問題が発生する可能性は低いが、アプリケーションのパフォーマンスを低下させる問題は考慮に入れる必要がある。
海外展開している企業は、現地のインターネットサービスプロバイダー(ISP)のネットワークを複数利用することでコスト削減が可能だ。ただしこのケースでは、トラフィックは複数の未知のホップ(ネットワークの中継設備)にルーティングされる。そのため、予期しない待ち時間が発生したり、トラブルシューティングの難しい問題が発生したりする可能性がある。
それを念頭に置いて、企業は自社の拠点を重要度で分類する。SD-WANを選択すべきかどうかを判断するのではなく、アプリケーションを利用する拠点のユーザーの要望に対して、どのような接続方法が最適かを判断しなければならない。
コスト削減の対象は基盤となるWAN接続
SD-WANのライセンス料金は、利用する機能によって異なる。料金の内訳が具体的でない場合もあることには注意が必要だ。SD-WANには一般的に、ゼロタッチプロビジョニング(出荷時にすぐに使用できる状態になっていること)の特徴が組み込まれている。接続を確立するためのエンジニアの作業は不要だ。WANが将来的にソフトウェアベースになることを前提にすれば、コスト削減は技術力に依存しない。差異化要因になるのは、WANの接続性だ。
MPLSに話を戻すと、その目的は、企業のポリシーを満たす適切なネットワーク接続を選択し、ユーザーが求めるアプリケーションの操作性の要求に応えることだ。インターネット接続を利用すればコストを削減できるという理由だけで、MPLSを排除すべきではない。
WANに移行することでMPLSが不要になり、結果としてコスト削減が実現することはある。例えば3G(第3世代移動通信システム)や4G(第3世代移動通信システム)を使った低価格のインターネット接続を介して、SD-WANをプロビジョニングすることが可能だ。ただしこのケースを推奨できるのは、ネットワークに遅延があってもビジネスに致命的な問題が発生しないアプリケーションに限られる。
トラフィックの流れを最適化できることもSD-WANの特徴だ。複数の異なるネットワークに接続できるようにし、どのネットワークをどのような状況で使用するかを選択できる。SD-WANを使えば、ネットワークの状態に関する統計情報を取得し、必要なデータ伝送速度の決定やアプリケーションパフォーマンスの改善に役立つ洞察が得られる。
SD-WANによるその他のコスト削減効果
注目度はそれほど高くないが、どの企業にも利益になるSD-WANのコスト削減効果がある。その一つはネットワークを仮想化することでプロビジョニングを迅速化し、新しい拠点の立ち上げのためにスタッフが出張する必要をなくせる点だ。
SD-WANでは利用可能なネットワークリソースを最大限に活用することで、ネットワーク全体の効率性を向上させる利点がある。つまり、あるネットワークにアクセスが集中した時は、他のネットワークを利用できる。例えば特定の時期にトラフィックが急増することがある。通常はフェイルオーバー用に用意しているネットワークに、急増したトラフィックを逃がすことが可能だ。
ネットワークを管理する上では、問題が発生する可能性がある全ての要素を考慮に入れておく必要がある。例えば優先的に利用するネットワーク接続が切断した場合、ネットワークを復旧させるためのプロセスを準備しておかなければならない。
MPLSとインターネット接続を比較する際、SLAの評価は意味を成さない可能性がある。MPLSの利用停止を検討している企業は、ビジネスの継続性の観点から、最悪のシナリオを想定して判断するとよいだろう。
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