クラウド利用や海外展開が増える中で、企業ネットワークは複雑さを増し、ネットワーク再構築を検討する企業が少なくない。今後、デジタル時代に求められる理想的なネットワークとはどのようなものだろうか。
ネットワーク基盤が刷新できなければ、日本企業はデジタル時代に生き残ることができない――調査会社アイ・ティ・アール(以下、ITR)の甲元宏明氏は、こう強調する。日本企業が抱えるネットワーク基盤が、従来の物理制御によるアーキテクチャに依存したままであることが、今後デジタル時代に企業が成長する機会を損なう原因になり得るという。
企業側もこの課題感を持っている。ITRが実施した「IT投資動向調査2019」で、重要戦略として企業が回答した内容で最も多かったのは「IT基盤の統合・再構築」で、3番目には「全社ネットワーク環境の刷新・見直し」が入った。ネットワーク基盤の刷新は同様の調査で常に上位に入る項目ではあるものの、裏を返せば重要度は高いが取り組みにくい項目とも受け取れる。
「日本企業は必要に応じて拠点ごとに別々のネットワークを組んできた。そのため管理が非常に煩雑になっている」と甲元氏は語る。企業のIT担当者が抱えるネットワークの課題として「利用者やID管理が複雑」「構成管理が容易でない」「頻繁なレイアウト変更が困難」といった内容が多くなっているという。「大企業であっても一貫したネットワークのアーキテクチャがあるわけではなく、さまざまなネットワークを組み合わせることでコストを削減してきたのが現実」
デジタル時代に必要な企業の行動様式とは何か。甲元氏は、変化に対して迅速に行動できることや、外部との迅速かつ柔軟な連携ができることなどを挙げる。Amazon.comやUber、Netflixなど、デジタルテクノロジーによって成長してきたデジタルネイティブ企業が持つ行動様式を取り入れることができる支えとしてのネットワークが必要だ。
現在の日本企業の一般的なネットワーク基盤はどのようなものだろうか。国内の主要拠点では、広域イーサネット、IP-VPNなどのネットワークサービスを利用している。小規模拠点では通信事業者が提供する地域IP網を使用しているケースが多いだろう。
こうした従来のネットワークはデータセンターを中心にして組まれてきた。これが今後のビジネスシーンで不利になる懸念がある。全てのネットワークが一度データセンターを通過する必要があるため、クラウドの利用や海外展開の増加で接続数が増えた場合、トラフィックが増えたりインフラが集中し過ぎたりすることで、外部との迅速な応対を阻害してしまう可能性があるからだ。
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