3ポイントで分かる、「エッジネットワーク」がAIの性能を引き出す理由遅延や費用の課題を解消

組織のAI技術活用の壁になっているのが、膨大なデータを扱うことに伴う通信遅延や高額な運用費だ。これらの課題を解消する可能性がある「エッジネットワーク」の概要と、その利点を3つの視点から解説する。

2025年07月09日 06時00分 公開
[Kerry DoyleTechTarget]

 エッジネットワークとは、スイッチやルーターといったネットワーク機器をネットワークの「エッジ」(末端)に配置し、エッジでデータの通信制御や処理を実施するアーキテクチャだ。データ処理の場所をデータセンターからエッジに移すことで、サービス要求への応答速度が向上する。データセンターに必要な処理能力を減らすこともできる。

 特にエッジネットワークは人工知能(AI)技術の利用に際し、組織にさまざまなメリットをもたらす。具体的にはどのようなメリットなのか。

エッジネットワークの「3つのメリット」はこれだ

 従来型ネットワークを利用してAI関連の処理を実施すると、現場で取得したデータをデータセンターに送信して処理する。そのため、データセンター内のネットワークインフラに負荷がかかる他、データ分析のリアルタイム性が損なわれる場合もある。エッジネットワークを採用すれば、こうした課題を解決できる可能性がある。以下でエッジネットワークの利用によるメリットを見てみよう。

メリット1.ネットワークインフラの最適化

 エッジネットワークの中核的な機器になるのは、エッジスイッチだ。エッジスイッチは、AIモデル用のデータを収集したり、AIモデルの分析結果に基づいて動作したりするデバイス(AIデバイス)とネットワークの間のゲートウェイとなり、データ通信を制御する。エッジスイッチの中には、ネットワークに接続するだけで即時稼働可能な「プラグアンドプレイ」型や、高度な管理機能を備えたものがある。

 エッジネットワークの構築で有効なのは、データセンターの機能を複数の小さな単位に分割する「モジュール型データセンター」だ。この方式では、機能ごとにデータセンターが独立しているので、必要に応じてデータセンターを拡張したり縮小したりできる。物理的な設置スペースを抑えられるため、建設や運用のコスト削減を図れる他、AIデバイスが生成するデータの送信時間の削減にも貢献する。

 エッジネットワークでモジュール型データセンターを用いる場合、エッジにモジュール化したデータセンターを設置する構成になる。この構成の利点は、データ転送に必要な通信路容量を抑え、レイテンシ(通信遅延)を最小化できることだ。データを移動させずにエッジで処理することで、データ送信時の攻撃リスクを減らすことも可能になる。

メリット2.運用負荷の軽減

 エッジネットワークの構成機器は通信データを分析し、異常を特定してネットワーク運用担当者に通知する。ここにAI機能を組み込めば、異常発生時の対処や修復といった作業を自動化し、ネットワーク運用担当者の負荷軽減を図れる。

 ネットワーク全体の可視性が高まることも利点だ。ネットワーク運用担当者はエッジネットワークに接続されているデバイスの状態、業務プロセス、イベントなどをリアルタイムで監視できるようになる。

メリット3.コスト削減とビジネス価値の創出

 エッジネットワークはネットワークインフラの最適化や運用負荷の軽減ができることから、コスト削減につながると考えられる。特に従量課金制のモジュール型データセンターの建設や運用は、従来型データセンターと比べて大きなコスト削減効果を見込める可能性がある。

 ネットワークの遅延を抑えられるエッジネットワークでは、エンドユーザーがさまざまなAIツールを迅速に利用できるようになる。そのため、ユーザー体験が向上し、業務効率の向上につながり得る。

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