プライベート5Gなどの自営無線網を導入した企業の大半が、ネットワークエッジ(ネットワークの末端)に新たにエッジ装置を導入するか、導入を計画していることが分かった。両者を組み合わせるメリットとは。
通信機器ベンダーNokiaは調査会社GlobalDataに委託して、「5G」(第5世代移動通信システム)を自営網として運用する「プライベート5G」などのプライベート無線ネットワーク(自営無線網)を導入した企業の実態を調査し、その結果をレポート「Nokia 2024 Industrial Digitalization」として公開した。同レポートは、ネットワークエッジ(ネットワークの末端)技術の重要性を指摘している。自営無線網とネットワークエッジを組み合わせることで、どのようなメリットが得られるのか。
ネットワークエッジは接続の安定性だけでなく、遅延にも影響を与える。自営無線網を導入した企業の39%が、導入後にエッジサーバなどのエッジ装置を導入していた。52%の企業はエッジ装置の導入を計画していた。自営無線網とエッジ装置を組み合わせることで、通信の遅延を削減してAI(人工知能)技術を活用しやすくなる。
この調査結果について、GlobalDataでエンタープライズ技術およびサービス部門の調査ディレクターを務めるゲイリー・バートン氏は「自営無線技術には、接続性と投資利益率(ROI)の向上という面で明らかなメリットがある」と述べる。その上でバートン氏は「AI技術や分析ツール、エッジ装置の導入によって、より多くのメリットがもたらされる」と付け加える。
Nokiaの調査レポートは、航空関連のサービスプロパイダーであるLufthansa Technikが自営無線網を活用した事例を取り上げている。同社は、航空機部品の詳細な検査をするために自営無線網を導入し、複数のカメラで撮影した動画を素早くアップロードできるようにすることで、遠隔検査を効率化している。
航空機エンジンの検査工程において、AI分析アプリケーションを実行するサーバを航空機エンジンの近くに持ち込む必要があることもLufthansa Technikにとっての課題だった。同社は自営無線網とエッジ装置を組み合わせることで、サーバを物理的に移動させる必要がなくなった。
Lufthansaグループ内のITコンサルティング企業Lufthansa Industry Solutionsのクラウディウス・ノーク氏は、自営無線網の導入について「安定した信頼性の高いセキュアな接続を広範囲で利用できるようになった」と評価する。その上でノーク氏は、そうした接続は「遠隔検査に欠かせないものだ」と語る。
自営無線網の導入以来、Lufthansa Technikは敷地内で無線接続が可能な場所を増やして50台以上のクライアントデバイスを接続してきた。「だが、自営無線網に接続するクライアントデバイスの数はまもなく数100台に増え、最終的には1000台以上が接続するだろう」とノーク氏は予測している。
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