変化するネットワークの提供形態
「IP-VPN」から「SD-WAN」への乗り換えが急増する理由
企業の間で、SD-WANを採用する機運が急速に高まっている。マネージド型SD-WANサービスの充実や、SD-WAN市場で予測されるM&A(統合・買収)などに着目する。
2019年に予想される最も重要な動きの一つは、SD-WAN(ソフトウェア定義WAN)の普及が進むことだ。SD-WAN導入を検討中、2019年末までに導入予定、導入プロセスの途上にあるなど、SD-WANの導入に関して何らかの行動を取る動きが、企業の間で広がっている。
本稿では、SD-WANを導入する、または導入を検討している企業が想定すべき、SD-WANに関連する今後の動きについて紹介する。
調査会社のNemertes Researchは、2018~2019年のWANの市場動向について調査した。これによれば、回答企業の約23%が「SD-WANを利用する」と答えている。この23%の企業のうち約30%が、管理・運用を自動化できるマネージド型のSD-WANサービスか、キャリアなどのSD-WANベンダーが提供するインネット(in-net)型のSD-WANサービスを利用するという。インネット型のSD-WANとは、SD-WAN機能の一部または全てを、SD-WANベンダーが提供するネットワークによって実現する形態を指す。SD-WANベンダーのサービスが充実し、参考になる導入事例が増えるにつれ、SD-WANベンダーを利用する企業は今後増え続けると見込まれる。
WANの管理を外部委託している企業にとっては、その契約の更新やネットワーク機器のサポート終了がSD-WANへの移行を検討するタイミングになる。そのタイミングが増えるに連れてマネージド型やインネット型のSD-WANを利用する企業の数も増えるだろう。
企業はレガシーネットワークとSD-WANが混在する環境を長く継続したいとは考えないため、運用・管理の手間を効率化できるマネージド型やインネット型のSD-WANに対する関心は高まると考えられる。異なるネットワークが混在するネットワーク環境の管理は戦略的ではなく、それを望む企業はないはずだ。
SD-WANの導入を後押しする「ラストワンマイル」問題
SD-WANベンダーのネットワークと顧客拠点を接続する末端のネットワーク、いわゆる「ラストワンマイル」をいかに管理するかという問題がある。特にラストワンマイルがインターネット接続である場合の問題が、マネージド型のSD-WANを利用したいと望む企業が増える背景にある。
「SD-WANを利用する」と回答した企業のうち、過半数の約58%がラストワンマイルの管理に関する問題を解消したいと考えているようだ。そのうち、ラストワンマイルの管理をマネージド型のSD-WANの契約に含めることを希望する企業が約24%だった。SD-WANを自社で管理/運用するDIY(Do It Yourself)型にするにしても、マネージド型のSD-WANサービスを利用するにしても、ラストワンマイルの管理を外部委託したいと考える企業が34%に上った。
MPLSにとって転機の年
SD-WANの導入を理由に、IP-VPNなどMPLS(マルチプロトコルラベルスイッチング)網の契約を減らすか、利用を完全に廃止する企業が2019年に増えると予想される。Nemertes Researchの2017年の調査では、SD-WANを利用中の企業のうち、「MPLS網を廃止した」または「近い将来廃止する予定」と回答した企業はほとんどなかった。今回の調査では、約19%の企業がSD-WAN導入の一環としてMPLS網を「廃止する予定」か「廃止した」と回答している。
SD-WANベンダーの集約が急速に進展
SD-WANのベンダーは市場で過密状態にあり、M&A(統合・買収)による集約が進んでいる。直近の動きとしては、OracleがSD-WANのベンダーのTalari Networksを買収した。新たに市場に参入するSD-WANベンダーが今後増えると予想されるが、2019年に市場から撤退する既存のSD-WANベンダーは少なくないだろう。資金調達ができずに事業が完全に失敗に終わるケース、大企業に買収されるケース、複数のベンダー同士で合併して事業規模を拡大するケースが出てくると考えられる。
市場の現状を考慮すれば、新たなベンダーが、豊富な機能を備えたSD-WANサービスを提供する余地は確かにある。だが次第にこの状況は変わり、2021年にはSD-WANベンダーの数が恐らく10社程度に絞り込まれるだろう。
SD-WANの未来を担う機能とは
Cisco Systemsは、同社が提供するブランチルーター(支店・小規模企業向けルーター)の中核機能としてSD-WANを取り入れようとしている。WANを提供するキャリアにも同様の動きがみられる。SD-WANを導入予定の企業のうち過半数は、ブランチルーター、WANの管理ツール、ファイアウォールをSD-WANサービスで置き換えたいと希望している。そのためSD-WANはスタンドアロン(他の機器や機能と接続せずに単独で動作すること)ではなくなるだろう。
WANの最終地点に設置するデバイスは、今後は他の機能群と共にSD-WAN機能を備えることが必須条件になると予想される。今後SD-WANは、ベンダーによるSD-WANサービスによって導入するか、「NFV」(ネットワーク機能仮想化)として実現することになるだろう。NFVの場合、エッジ(ユーザー側のデバイスの近く)で提供されるサービスの一部として仮想ネットワーク機能を実現することになる。またはインネット型のSD-WANサービスとして提供される場合もある。
今後のSD-WANは、個別の製品/サービスではなく、さまざまな機能群を集約したエッジデバイスに組み込まれるだろう。既にこの分野で優位性を持つベンダーも登場している。2019年は他のベンダーもそうした動きに追随することになるだろう。
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