クラウドアプリ開発の初心者向けガイド
クラウドネイティブアプリ開発者なら覚えておきたい「4つの基礎」
クラウドネイティブアプリケーションを開発する際に、検討すべき要素とは何か。基礎となる要素4つと、開発を支援するツールについて説明する。
「クラウドネイティブ」という言葉は、開発者がスケーラビリティといったクラウドの性質を念頭に置いてアプリケーションを設計、開発、提供することを意味する。クラウドネイティブのアプリケーション開発には一般的に、マイクロサービスやコンテナが関連付けられる。これはクラウドネイティブアプリケーションが、最新の開発手法に沿って作成されることが多いためだ。
従来のウオーターフォール型ソフトウェアの開発ライフサイクルとは対照的に、クラウドネイティブアプリケーションはもっとアジャイルな手法で開発されることが多い。自動化されたデリバリーパイプラインを通じて、アプリケーションの運用環境は頻繁に変更され、インフラはコードレベルで管理されるようになった。
併せて読みたいお薦め記事
アプリケーション開発の最新事情
コンテナ型仮想化技術の基礎知識
クラウドネイティブアプリケーションの4つの要素
クラウドネイティブアプリケーションは、インフラの可変性を意識して設計しなければならない。そうしたことから、開発者は「Docker」のようなコンテナ管理ツールに頼ることになる。コンテナ管理ツールは、基盤となるインフラを気にしないでアプリケーションを運用可能だ。
開発者が、複数の独立したマイクロサービスを組み合わせる「マイクロサービスアーキテクチャ」に基づくアプリケーションを構築する際も、コンテナ管理ツールは大いに役立つ。マイクロサービスアーキテクチャは、必要に応じたスケーリングが容易なアプリケーションを実現する。
Herokuの創設者の1人、アダム・ウィギンズが執筆したアプリケーション開発者の参考資料「The Twelve-Factor App」は、クラウドネイティブアプリケーション開発の基礎となる要素を幾つか取り上げている。これらの要素の中から、以下の4つについて詳しく説明する。
- ビルド、リリース、実行
- プロセス
- 並行性
- 廃棄の容易性
ビルド、リリース、実行
「ビルド、リリース、実行」のアプローチでは、クラウドネイティブアプリケーションの開発とデプロイの各段階を区別する。まずアプリケーションのコードを、ソースコードそのものから「ビルド」と呼ばれる実行可能な単位に変換する。次に、このビルドを、実行環境での動作に必要な構成にする。これを「リリース」と呼ぶ。最後に、このリリースしたファイルを実行する。
この明確に定義されたワークフローはしばしば、オープンソースの「Jenkins」や「Capistrano」のような、デプロイと継続的インテグレーション(CI)のためのツールと結び付けられる。これらのツールでは自動テストや過去のビルドへのロールバックを実行できる。問題が発生した場合は、以前に構築したリリースを新しい環境や異なるインフラで再実行できる。アプリケーション全体をデプロイし直す必要はない。
プロセス
クラウドコンピューティングでは、複数のステートレスのプロセスとしてアプリケーションを扱う。ステートレスプロセスは、プロセス同士でデータを共有せず、互いに独立している。そのためプロセス同士でデータを共有し、互いに密接に関連するステートフルのプロセスよりも、はるかにスケーラブルで管理しやすい。
クラウドネイティブのプロセスは、多くの方法で実行できる。Herokuの同名サービスなど、開発者が用意した構成値に基づく独自のランタイム(実行環境)を提供するサービスを使う方法もある。実際のプロセスの実行には、Dockerなどのコンテナ管理ツールを活用するのが一般的だ。コンテナは、特定のアプリケーションの実行に必要な単一のプロセスをカプセル化する。ステートレスのアプリケーションの使用を支援する優れた方法だと考えられる。
並行性
クラウドネイティブアプリケーションは一般的に、サーバの増加で処理能力を向上させるスケールアウトができるようになっている。同時に実行可能な複数のステートレスプロセスに分離できるためだ。プロセスは、それがステートレスの場合、効率的にスケーリングできる。モノリシック(一枚岩)のアプリケーションは、今のところサーバそのもの処理能力を向上させるスケールアップしかできない。
開発者がモノリシックなアプリケーションを複数のプロセスに分割すれば、各プロセスを稼働させるサーバを効率良くスケーリングして負荷に対処できるようになる。こうしたプロセスの管理とスケーリングを自動化するツールは多数提供されている。例えばオープンソースのコンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」の他に、クラウドベンダーが提供する専用サービスなどがある。
廃棄容易性
幾つかのクラウドベンダーは、コストを下げるために、ユーザーの入札によって料金が変わるインスタンス(仮想マシン)の「スポットインスタンス」を提供している。スポットインスタンスによって、スケーラビリティをより安価に確保できるようになる。ただしスポットインスタンスにはプロセスが突然終了するリスクも伴う。必ずアプリケーションが強制終了するわけではない。それでも廃棄容易性を目的に設計されるクラウドネイティブアプリケーションでは、アプリケーションの自己修復能力の重要性が高くなる。
アプリケーションの想定外のエラーに備え、シャットダウンの手続きを円滑に進められるようにしなければならない。加えて他のプロセスから分離しないプロセスは、データを保持する、つまりステートフルにする必要がある。自己修復システムは、Kubernetesのようなコンテナオーケストレーションツールや、オープンソースの「beanstalkd」や「RabbitMQ」などの堅牢(けんろう)なメッセージキューイング(MQ:システム同士が任意のタイミングでデータを送受信できる仕組み)ツールを使用して設計する方が簡単だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
生データを隠してデータ連携 KDDIが4000万人の顧客情報を安全に分析できた理由
-
5
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
6
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
7
エンジニアの生産性はどう測る? マネジメントに不可欠な可視化の実現方法とは
-
8
大阪証券取引所がHiRDBで実現した「世界トップレベルの応答速度」を誇る新売買システム
-
9
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
10
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー