ヒントは採用支援ツールにあった
「ブーメラン社員」のために、人事部門が退職支援ツールに求める機能とは
米国では、退職後に復職する従業員を「ブーメラン社員」と呼び、無視できない存在になっている。人事部門は退職プロセスを改善するために、手作業を自動化すること以上の価値をもたらすツールを求めている。
転職支援企業のRiseSmartで製品管理部門のシニアディレクターを務めるシリ・イエール氏は、退職プロセスで使えるツールを求めて、2018年9月11日~14日に米国ラスベガスで開催されたイベント「HR Technology Conference & Expo 2018」に足を運んだ。しかし「展示内容は不十分だった」と同氏は話す。
イエール氏によれば、カンファレンスで紹介されていた退職プロセス用テクノロジーは「単なるチェックリストだった」。従業員の退職時に人事部門が実行すべき手順を確実に履行するために考案されているにすぎない、と感じたようだ。「主要業界の担当者が退職時に提供すべきプロセスには愛が感じられない」と同氏は述べる。
こうした状況は、再雇用や採用活動の影響で変わるとイエール氏は考えている。
変わらない、元従業員の重要性
退職時に素晴らしい体験をしていれば「その退職者は将来、再び従業員として復帰するかもしれない」とイエール氏は指摘する。「退職者の体験は実に重要で、共感した友人や同僚が同じ企業の応募者になる可能性がある」(同氏)
人事部門にとって、退職プロセスで使えるツールが重要だと主張するのはイエール氏だけではない。こうした状況の変化は、採用時にテクノロジーを使用する機会が増えた結果である可能性がある。採用時に素晴らしい体験をしていれば、従業員エンゲージメント(従業員が会社へ自発的に貢献したいという意欲)が向上し、初年度の離職リスクが減るという考えが、企業の間で広がっている。同様に、退職時の体験を良くしようという取り組みも推し進められるようになっている。
自己都合でも人員削減の一環でも、退職した従業員は引き続きブランドアンバサダー(企業やブランドの魅力を好意的に発信し宣伝する人のこと)や顧客になる可能性があるだけでなく、ビジネス上のつながりや従業員の紹介を生み出す人材になり得ると考える必要がある。何らかの理由で退職した従業員が、やがて正社員や契約社員として再雇用され「ブーメラン社員」(退職後に復職する従業員)になることもある。
福利厚生テクノロジー企業Businessolverの社内調査では、クライアントの従業員の約17%がブーメラン社員だと分かったという。同社で最高戦略責任者を務めるラエ・シャナハン氏は次のように話す。「これは、かなり意味のある数値だ。だが離職という行為をプラスのものにしようと力を入れないのはなぜだろう」
特に若年層は数年で仕事を変える傾向がある。米国労働省労働統計局が2018年に公表した従業員在職期間に関する最新レポートによると、25~34歳の人材の平均在職期間は2.8年で、ここ10年この比率はほぼ変わらないという。
従業員の退職に対処する現在のツールは、ごく基本的なものだ。「現時点のツールは実際のところ、退職時に対処すべき多くの手動プロセスを自動化し、それに伴う時間を節約するものにすぎない」と話すのは、調査会社Nucleus Researchでアナリストを務めるトレボール・ホワイト氏だ。
ヒントになるのは採用支援テクノロジー
一部の企業では人事部門が採用支援ツールを使い、会社での出発点となる「入社」のプロセスを改善している。こうした企業は、会社の終着点ともいえる「退職」のプロセスにも同じ考え方を当てはめたいと考えるようになっている、とホワイト氏は話す。
人事部門でデータ分析の頻度が増え、退職時面談やその他の手段を通じて退職者から多くのデータを収集する可能性が高くなっている。それが退職プロセス支援ツールへの関心が高まっている理由の一つだというのが、同氏の見解だ。「実際には、退職に対処するツールは進化の初期段階だと考えられる」(ホワイト氏)
「ツールが退職時の対処を劇的に変える」と誰もが納得しているわけではない。転職支援企業のBPI groupでキャリアサービス部門のマネージングディレクター兼シニアエグゼクティブコーチを務めるスティーブ・スパイヤーズ氏も同じ考えだ。
退職時に依然として必要な「個別の取り組み」
スパイヤーズ氏は次のように話す。「退職時のプロセスをテクノロジーで支援することは可能だ。だが退職時には、それぞれ個別にカスタマイズした作業や文書の準備が必要になることが多い」
例えば解雇対象の人材の体験を改善するのは、複雑な取り組みになる。スパイヤーズ氏は「特にこうした取り組みを正しく実行するには、管理職がトレーニングを受ける必要がある」と指摘する。
いずれにせよ「最悪なのは、雇用主が退職する従業員に悪い印象を与えることだ」と話すのは、ITサービスマネジメントベンダーのServiceNowで人事向け製品ラインのバイスプレジデント兼統括マネジャーを務めるディーパク・バラディワジ氏だ。
2017年にServiceNowは、大企業向けの採用・転職サービスをリリースした。このサービスは、退職時のプロセスの効率向上を支援するように設計されている。その理由は特に、退職時には複数の部署が関連することが多くなるためだ。こうしたサービスは「資産が返却されるまでの時間を測定したり、退職プロセスのボトルネックを検出したりするなど、人事部門が分析したいことの情報源になる可能性がある」とバラディワジ氏は話す。
「結局、採用時の最初の印象を良くしようと努める企業は、退職時の最後の印象も同様に良いものにするのは当然だ」と話すのは、ServiceNowでHRエバンジェリストおよび変革リーダーを務めるジェン・ストラウド氏だ。
「従業員が企業を離れるときは、できる限り好印象が残るようにしたいと考えるはずだ。世界は狭いし、うわさはすぐに流れる」(ストラウド氏)
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