医療データ保管の新しい選択肢「クラウドバックアップ」【前編】
医療機関のデータ消失リスクを減らす「クラウドバックアップサービス」とは
クラウドのストレージにデータをバックアップする「クラウドバックアップサービス」は、医療機関にどのようなメリットをもたらすのか。簡潔に説明する。
医療データのバックアップ手段として、パブリッククラウドのストレージにデータを転送してバックアップを取る「クラウドバックアップサービス」がある。「医療業界においても、データを的確に保護する方法としてクラウドバックアップサービスは検討に値する選択肢となる」と、AOSデータの代表取締役社長、春山 洋氏は話す。同社は医療業界を含むさまざまな業界向けにバックアップやデータ復旧製品を提供している。
春山氏の話を基に、クラウドバックアップサービスの強みや弱みについて、前後編にわたって解説する。
併せて読みたいお薦め記事
医療クラウドサービスの製品動向
医療機関のクラウド利用に関するTIPS
ハード故障の心配から解放するクラウドバックアップサービス
春山氏はクラウドバックアップサービスの大きなメリットとして、ユーザーがストレージハードウェアの故障リスクを心配する必要がないことに注目する。
医療情報システムのバックアップ作業は「院内に用意した外付けHDDやNASと、バックアップ用ソフトウェアを組み合わせてローカルバックアップを取るだけ」という医療機関は珍しくない。ローカルバックアップの場合、バックアップデータの保管が適切でないと、いざというときに復旧できなかったり、HDDの故障や災害によるデータ消失を防ぎ切れなかったりする。
バックアップを欠かさず取っていても、災害や経年劣化によるHDDの物理故障に由来するデータ破損は、どうしても一定の確率で発生する。データ復旧サービスを利用してもデータが復旧できないケースや、復旧に数十万円の費用がかかるケースもある。こうしたリスクを低減し、ローカルバックアップの弱点を補う手段がクラウドバックアップサービスだ。
冗長構成でデータ消失リスクを抑制
一般的なクラウドバックアップサービスは、データを国内の複数拠点で冗長化して管理し、ハードウェアの物理故障によるデータの消失リスクを抑えている。通信回線の速度やサービス品質は年々向上しているため、取得したバックアップを短時間でクラウド側へ転送できる。予定したスケジュールで自動的にバックアップを取る機能や、バックアップの成否をメールで通知する機能などを組み合わせれば、さらに安定的に運用できるだろう。
医療機関でバックアップを取る必要のある主要なシステムには、レセプトコンピュータ(レセコン)や電子カルテ、医用画像ファイリングシステム(PACS)がある。これらのシステムが保管するデータは、診療行為や保険請求に関わるため、とりわけ重要度が高く、データにアクセスできなくなると業務がストップしてしまう。中でもクラウドバックアップサービスに向いているのがレセコンのデータだ。レセコンのデータはテキスト形式(CSV形式)で比較的容量が小さいため速く転送でき、バックアップの必要性も高い。
クリニック向けのクラウドバックアップサービスも充実へ
従来、医療機関向けのクラウドバックアップサービスは小規模~大規模病院向けのものが中心だったが、AOSデータの「AOSBOX Business Plus」のように、クリニックの利用を想定したサービスも登場している。今後さまざまなITベンダーが参入し、医療業界向けに比較的低価格なサービスを立ち上げる可能性がある。クリニック向けのクラウドバックアップサービス利用料の一例として、AOSデータの場合は100GB当たり月額1250円~1666円(税別)のプランがある。
クラウドバックアップの賢い選び方
医療データを保管するためのクラウドバックアップサービスを選定するに当たっては、まず保管先のクラウドサービスが、クラウドサービスで医療情報を取り扱う際の「3省3ガイドライン」に準拠しているかどうかの確認が必須だ。3省3ガイドラインとは、
- 厚生労働省発行「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版」
- 経済産業省発行「医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン」
- 総務省発行「クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(第1版)」
の3つを指す。
バックアップの取り忘れや、何らかのエラーでバックアップが取れていないといったトラブルが起こる可能性は常にある。確実なバックアップを実行するために、選定中のクラウドバックアップサービスに自動バックアップ機能や、バックアップデータに不具合があった場合の通知機能があるかどうかも確認した方がよい。
クラウドバックアップサービスは一般的に従量課金制や月額定額制で、保管するデータ量が多くなるほど利用料は上がる。大量のデータを保管したいけれどもコストも抑えたいというニーズに応え、一部のクラウドバックアップサービスは「コールドストレージ」プランを用意している。めったにアクセスしなくなったデータ(コールドデータ)を長期間、安価に保管できるプランだ。電子カルテデータなど、ほとんど参照しないが保管する必要のあるデータは、コールドストレージプランを利用すると保管コストを削減できるだろう。
領収書のように頻繁に見返す必要がない、アクセス頻度の低いデータは、コールドストレージプランを利用すると長期保管のコストを抑えられる。コールドストレージプランは低料金の代わりに、標準よりも応答時間や転送速度を下げたり、データ復元速度を遅くしたりしているのが一般的だ。
後編では、医療業界を取り巻く法制度を整理した上で、医療機関がクラウドバックアップサービスを選定する上で確認しておきたいリスクと、クラウドバックアップサービスが苦手とする用途などを整理する。
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医療データ保管の新しい選択肢「クラウドバックアップ」
医療データのバックアップ手段の一つに「クラウドバックアップサービス」という選択肢がある。クラウドバックアップサービスの仕組みと、こうしたサービスで医療データを保護する際のメリット、注意点について詳しく説明する。
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