「MMDC」の普及でエッジコンピューティングが身近に
「エッジコンピューティング」と「クラウドコンピューティング」の違いとは?
IoTのニーズが多様化するのに伴い、必要性が高まると考えられるのが「エッジコンピューティング」だ。「クラウドコンピューティング」との違いと、導入のハードルを下げる「MMDC」について説明する。
「エッジコンピューティング」は、クラウド環境の外側におけるあらゆるコンピューティングであると定義されることもある。この定義では対象が幅広く、多種多様なアプリケーションがエッジコンピューティングに含まれてしまう。エッジコンピューティングをもう少し厳密に説明するとしたら、遠隔のデータセンターで集中的にコンピューティング処理するのではなく、データが発生する場所の近くでコンピューティング処理するものだと定義できるだろう。
既成の製品やサービスによって、エッジコンピューティングによるアプリケーション構築を実現できるとは考えない方がよい。エッジコンピューティングは多様なアプリケーションを想定しているため、共通したネットワークのアーキテクチャは存在しない。アプリケーション固有の要件を満たすようネットワークを設計する必要がある。
エッジコンピューティングは新しい考え方ではない。例えば支社や支店にあるサーバはずっと以前からアプリケーションを実行しており、これもエッジコンピューティングに含まれる。エッジコンピューティングに対する関心が最近高まっているのは、IoT(モノのインターネット)の台頭に端を発している。現在、多様なIoTデバイスが開発されている。センサーによって温度を検知して定期的に報告を送信する単純な仕組みのものから、洗練した機能を搭載した高度なものまで、さまざまなIoTデバイスが登場している。
今後のエッジコンピューティングに影響を及ぼす要素として考えられるのは、IoTの拡大とデータ処理における要件の変化だ。こうした動きを見据えるに当たって、エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングの違いや関係性を整理しておくことが役立つだろう。どちらのコンピューティングにもメリットがある。最終的にこれらのコンピューティングをどのように取り入れるかは、アプリケーションを構築・運用する企業ごとの要望によって異なる。
エッジとクラウドのどちらを選ぶべきか
大量のデータを生み出すアプリケーションの場合、エッジで処理するのが最も適切だと考えられる。例えば大きな倉庫や産業施設では、数千個の温度センサーや湿度センサーが設置されることがある。IoTデバイスがこうしたセンサーの発するデータを検知・分析し、温度や湿度が一定値を超えた場合には何らかの対策を講じる、というアプリケーションを構築できる。このアプリケーションの場合は、データ量が比較的少量だと想定できるため、エッジとクラウドのどちらでも構成できる。
同様のアプリケーションをクラウドで動作させる場合、エッジで測定した全てのデータをネットワーク経由でクラウドへ転送する必要がある。エッジでデータ処理すれば、こうした測定値のデータ転送は不要になる。この場合、エッジとクラウド間の接続は定期レポートの送受信だけで済むことになる。絶えず大量のデータ送受信が発生する構成よりもコストを抑制できる。ネットワーク接続の運用にかかるコストと、エッジに配置するコンピューティング用インフラの構築と保守・運用にかかるコストのどちらを選択するかという問題になる。
プロセッサの価格はそれほど高額ではないため、ほとんどの場合、エッジコンピューティングの方がクラウドコンピューティングよりもトータルコストでは安価になる。どちらを選択すべきかはアプリケーションの要件によって異なる。慎重に要件を調査し、実現のための選択肢を検討した上で、決定する必要がある。
応答時間とセキュリティの検討
応答時間も、エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングのどちらを選ぶかの決め手になる要素だ。例えば、数千個のセンサーを設置した精油所があるとする。この精油所の各装置を監視するシステムは、温度が一定値を超えた場合に迅速に応答する必要がある。この場合、データをクラウドに転送すると、ネットワークによる遅延のために待機時間が発生し、応答時間が長くなる。結果として深刻な事故につながる可能性を生み出してしまう。
エッジコンピューティングかクラウドコンピューティングかを選択する際には、セキュリティも重要になる。セキュリティに関してはエッジコンピューティングもクラウドコンピューティングも、最善の対策を講じることができるとは限らない。重要な情報をエッジで処理して保管する場合、一拠点が攻撃を受けても企業の全データが侵害されることはない。ただしデータを保管する場所が増えると、それだけ脆弱(ぜいじゃく)性が高まるという意見もある。
セキュリティ専任者は企業の中核的な拠点にいながら、遠隔地の拠点を監視することが可能だ。ほとんどの場合、中央拠点にいるセキュリティ専任者がエッジの各拠点を遠隔で監視し、管理することになる。エッジにおける脆弱性や扱うデータの重要性について検討することは重要だ。例えばクレジットカード情報は、温度や圧力の測定値データよりもセキュリティ対策を強化する必要がある。
MMDCによるエッジコンピューティングの実装
エッジコンピューティングの主な導入先候補となるのは、倉庫、精製所、小売店などだ。最近では他にも導入できる選択肢が出ている。ここ数年、マイクロモジュール型データセンター(MMDC:Micro Modular Data Center)への注目度が高まっている。MMDCは、データセンターの構築に必要な要素を1つの筐体に搭載した製品だ。プロセッサ、ネットワーク、電源、冷却装置、消火機能といった要素を備えている他、電磁干渉への対策や衝撃・振動に対する耐性など、エッジでの利用を想定した特徴も持つ。
一般的にMMDCは中央のデータセンターで構成した後、データソースに近いエッジの拠点に輸送する。最小構成単位は製品によって異なり、1つのラックだけの小規模な装置から、複数のラックを基本とする大規模なものまである。建物内や製造拠点だけでなく、携帯電話の中継塔、基地局のような場所にも導入できる点がMMDCの特徴だ。
MMDCは多様なコンピューティング要件を想定できる。例えばクラウドベンダーは、クラウドの延長先や拡張先として、ユーザー企業の拠点にMMDCを設置する手法を導入している。企業のデータセンターとクラウド間のネットワークの遅延を抑制して応答時間を短縮する他、ネットワークにかかる通信コストを削減するメリットがある。ユーザー企業の中には、社内ITインフラのコスト効率を高める手段としてMMDCを導入しているケースがある。
今後のエッジコンピューティングはIoTとMMDC次第
新しい種類のIoTデバイスが今後も開発されることで、エッジコンピューティングがさらに普及することは間違いない。迅速な応答時間が求められるアプリケーションでは特にそうだ。クラウドコンピューティングの代替手段や補完手段の役割が期待される。MMDCのような新たな選択肢が登場することで、コンポーネントを購入して遠隔の拠点で組み立てるよりも、簡単かつ安価にエッジコンピューティングを利用できるようになるだろう。
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