「AIの消費電力」を考える【後編】
「AI」の消費電力を9割以上抑える方法とは?
機械学習モデルの訓練には大量の電力が必要だ。企業がこの問題に取り組むための解決手法を、人工知能(AI)技術の専門家の意見と共に紹介する。
前編「機械学習のCO2排出量は乗用車5台分? 『AI』の消費電力を減らすには」では、機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術の電力消費に関する問題と、その削減方法について専門家の意見を取り上げた。後編では、AI技術の消費電力を抑える別の方法を紹介する。
機械学習モデルの性能を高める上で大きな課題となるのが、ニューラルネットワークなどの機械学習手法で使用する、さまざまなパラメータ(重み)の調整だ。これは機械学習モデルの訓練に限ったことではない。ビジネスモデルやシミュレーションの最適化、オペレーションズリサーチ(計画に対して最も効率的な選択を導き出す手法)、物流、Programming by Example(PbE:実例を基にしたプログラミング)など、さまざまビジネス問題にもパラメータの調整が欠かせない。
PbEは、機械学習モデルに例を与えて訓練する手法だ。データの構造化に関連する入出力ペアの例などのサンプルデータを、モデルに与えることを考える。このような問題はパラメータの組み合わせ数の激増につながる。データサイエンティストがさまざまな組み合わせのパラメータをテストする場合、パラメータを1つ加えるごとに解の数が増えることになる。
ディープラーニング(深層学習)のパラメータ調整用ソフトウェアを開発するSigOptの共同創業者兼CEOであるスコット・クラーク氏によると、パラメータは深層学習モデルのパフォーマンスに大きく影響し、それがビジネスにも影響するという。パラメータ調整ではさまざまな種類の設定を評価しなければならず、それよって計算量が増加する。
パラメータ調整の手法は一つではない。単純な総当たりの手法では、あらゆる可能性をランダムに試行するため、計算量が多くなり、適切な解を見つけるまで時間がかかる。
パラメータ調整手法の改善で95%の消費電力削減
研究者やベンダーの間では、単純なランダム検索や総当たり検索ではなく、「ベイズ最適化」によりパラメータを最適化する手法の開発が進んでいる。ベイズ最適化とは、統計と近似法を併用して最適な組み合わせのパラメータを効率的に探す手法だ。SigOptの調査によると、標準的なランダム検索と比べ、ベイズ最適化を用いた場合は計算時間と消費電力を95%削減できるという。
量子コンピュータの新興企業IonQのプレジデント兼CEO、ピーター・チャップマン氏は「こうした大量の組み合わせ問題の多くは、いずれ量子コンピュータが1回の命令で解決できるようになる」と予想する。そうなれば、はるかに少ない入力データと最小限の訓練だけで学習する新しいタイプの機械学習が可能になる。
プログラマーが特定の問題の解決に使える手法は限られている。量子コンピュータが実用化すれば、これまで利用できなかった新しい手法が使えるようになると考えられる。あらゆる問題に適用できるわけではなく制約はあるが、量子コンピュータが得意とする問題については、今のコンピュータではコストがかかり過ぎてできないことも、新しい手法で実現できるようになる可能性がある。「量子コンピュータが商業市場に参入し、現実のビジネス問題の解決に役立つ日は近い」とチャップマン氏は考える。
IT幹部たちが皆、「量子コンピュータでAI技術の二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる」と信じているわけではない。機械学習ツールベンダーのDataikuでリードデータサイエンティストを務めるジェッド・ドアティー氏は次のように述べる。「量子コンピュータが登場してこの問題を解決することを期待するのは尚早だ。可能性としてはあるが、関連するハードウェアが実用化からは程遠いため、今は使えると分かっているものを改善することに集中する方がいい」
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「AIの消費電力」を考える
機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術は、膨大な電力を消費するという研究結果がある。この問題は企業のAI戦略にどのような影響を及ぼすのか、専門家の見解をまとめた。
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