期待は大きいのに普及が遅れている“10Gbps級”ネットワークの問題克服への挑戦を記したこの物語。ようやく問題解決の道筋が見えてくる……はずだったが。
この連載の第1回目「10Gbps通信の普及を阻んだ『高過ぎるエラー率』問題」では、、10Gbpsのデータ伝送速度を実現するイーサネット規格「10GBASE-T」の普及が遅れた理由について解説した。最近ようやく10GBASE-Tが普及しつつあるが、これはコントローラーの価格を下げる見通しがついたからだ。既に10GBASE-T準拠ネットワークカードの価格は100ドルを下回り、ネットワークスイッチもポート当たり100ドルを切った製品が登場している。過去の例でも、新しいイーサネットの規格が出たときに、ポート当たり100ドルを切ると急速に普及していた。
2002年の規格策定作業開始から15年が過ぎ、標準化完了の2006年から数えても10年以上たってしまった。データセンターあるいはサーバルーム内の接続に10GBASE-Tを使うという当初の目的は、完全に失敗した感もある。そのため普及した伝送速度1Gbpsの「1000BASE-T」を使い続けるしかないデータセンターやサーバルームでは、ラック間の接続には遅過ぎ、状況が悪くなるとラック内の接続でも伝送速度が足りない状況が続いた。
この時点で高速データ伝送を可能にする手法として「リンクアグリゲーション」(ポートトランキング)があった。リンクアグリゲーション(LACP:Link Aggregation Control Protocol)という技法で、複数の物理リンク(物理ネットワークインタフェースカード同士をつなぐ回線)を束ねて仮想的に1本の論理リンクにする。1000BASE-Tの物理リンクが2本なら2Gbps、4本なら4Gbpsの伝送速度が利用できる。これは比較的手軽に実現できる方法だが、その一方でポート数も増えるしケーブルも増える。ケーブルやポートが増えるということは、故障し得る場所が増えるという意味でもあり、システム管理者にとっては受け入れ難い。現実問題として10GBASE-Tと同じ帯域を1000BASE-Tで実現するためにはケーブル10本分の構成になる。さすがにこれでは論外と判断したIT担当者がほとんどだった。
次に登場したアイデアが、UTP(シールドなしツイストペア)ケーブル利用を諦める方式だ。10ギガビットイーサネット(GbE)には幾つかの規格がある。短距離向けだけを抜き出しても次のように4種類ある。
光ファイバーを利用する方法は、ケーブルやアタッチメントの値段が高いという問題を別にすれば一般的になった。ただし、10GBASE-CX4は4対の同軸ケーブル構成故に、ケーブルが太くコネクターも大きいため敬遠するIT担当者が多かった。そこで「SFF-8431」というコネクターの規格を利用して、ここに10GBASE-CX4の配線を組み込んだ「SFP+ Direct Attach」(当初の名称は「10G SFP+ Cu」だった)という規格が提案されたところ、これが多くのユーザーから好評で、2010年から市場でも広く扱われるようになった。光ファイバーや10BASE-CXに比べればはるかに低価格で済む代わり、配線長は最大15メートルとラック内配線は十分でも、ラック間配線にはギリギリという特性があり、光ファイバーとSFP+ Direct Attachが混在する「適材適所」のハイブリッド構成がしばらく続いていた。
ただ、2016年から新しい動きが出ている。1つは、10GBASE-Tの普及(とコントローラーの省電力化)を待っていられないが1000BASE-Tではもう遅過ぎるというユーザーに向けたアクセス回線の改善に向けた動きで、もう1つは、サーバの高速化/高性能化に伴い10Gbpsでも遅過ぎるため、さらなる高速な規格を求める機運の高まりだ。
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