2017年07月06日 05時00分 公開
特集/連載

10Gbps通信の普及を阻んだ「高過ぎるエラー率」問題超高速ネットワークの挫折と復活【第1回】(1/2 ページ)

ITシステムが扱うデータが爆発的に増大している今、超高速ネットワークへの期待は大きい。しかし“10Gbps級”ネットワークの普及は遅れている。これは、その原因と克服への挑戦を記した物語だ。

[大原雄介]
2008年に登場した10GBASE-T準拠のデータセンタースイッチ。32ポートの10ギガビットイーサネットを収容して当時の価格は税別で350万円だった

 データトラフィックは日々増大している。だからこれまで以上に高速で広帯域のネットワークが必要になる。この予測が大きく外れることはまずないだろう。ここでいうネットワークは、バックボーン回線だけではなく、データセンターやサーバルームの中にあるコンピューティングユニットとストレージの接続も当てはまる。

 2010年まで、ラックに多数のブレードサーバを収めるようなケースでは、サーバとラックに設置したスイッチは、データ転送速度が1Gbpsのギガビットイーサネット(GbE)規格「1000BASE-T」ベースの接続で間に合っていた。ただ、スイッチは1000BASE-Tでは転送速度が足りないため、光ファイバーなどを利用して10Gbpsのデータ転送速度を実現した10GbEを使うのが一般的だった。当時はラック間の接続にだけ、10GbEを利用していた。

 ところがブレードサーバの処理能力が向上し、ストレージでHDDの代わりにSSDを搭載して転送性能が向上した結果、スイッチとサーバの間で使っていた1000BASE-Tでもデータ通信容量(帯域)が飽和するようになった。この1000BASE-Tの帯域飽和は今に始まった話ではなく、かなり以前から関係者が警告していた話でもある。

 この問題を解決する方法も幾つかの提案が出ていて、複数の1000BASE-Tポートを束ねて高速化するトランキングや、直接光ファイバーを接続してより高速(10Gbps〜)なイーサネットを使うなどの方法が既に実用化している。ただトランキングは接続に要するポート数が増えることにつながる。スイッチ側のポート数が増えることは価格を押し上げる大きな要因となるため、普及のためには長期的に考えるといい方法ではない。高速なデータ通信を可能にする光ファイバーに関してもコストの問題が無視できない。

 この問題を解決する方法も実は以前からあり、10Gbpsのデータ転送速度をUTP(シールドなしツイストペア)/STP(シールド付きツイストペア)ケーブルで実現する「10GBASE-T」という規格を策定している。この規格に準拠した製品も登場しているが、普及しているというには程遠い状況だ。また近い将来にデータセンター内のブレードサーバに広く入る、という話もない。今回はその理由について説明する。

その原因は「ケーブルに対して無理難題な要求」

       1|2 次のページへ

ITmedia マーケティング新着記事

news020.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2023年12月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news091.jpg

倒産する? マスク氏は金持ちなんだから自腹を切ればいいのでは? Xの将来に関する5つの考察【前編】
主にイーロン・マスク氏の言動をきっかけに広告主の離脱が進む中、Xの将来はますます不透...

news034.jpg

世界の一流ブランドはなぜ「ゲーマー」を重視するのか
ブランドがZ世代を理解し、彼らと適切なコミュニケーションを取るためには、何よりもまず...