オンプレミスにはないメリットを整理
病院だからこそ「クラウド」を活用すべき7つの根拠
医療業界の間で、これまでは消極的だったクラウド活用の機運が高まりつつある。データ保護やコスト削減、災害対策などの面で、オンプレミスでは得にくいメリットがあるからだ。それは何なのか。
セキュリティや接続性、信頼性、コストにまつわる問題を理由に、医療業界は長い間クラウドに否定的な傾向にあった。しかし最近は、医療機関のクラウド活用事例が目立つようになった。病院や診療所は、ストレージの拡張性や災害復旧、データセキュリティの面でクラウドにメリットがあることを認識しつつある。医療機関の間では、オンプレミスのメールやアプリケーション、データなどを、パブリッククラウドやプライベートクラウドに移行させる動きが広がっている。
医療機関のIT部門は、治療やスタッフに必要なITインフラの要素とシステムが全て適切に機能するようにしなければならない。従来こうした要件を満たすには、クラウドを利用するよりも、医療機関が所有するデータセンターにITインフラを構築する方が容易だと考えられていた。オンプレミスであれば、ネットワークのアプライアンスやサーバの速度、ワークステーションの機種に加え、そうした機器のサポート担当者もIT部門が管理できる。
しかしオンプレミスでは、IT部門がハードウェアの入れ替えやOSの更新作業に時間と手間を取られることが多い。システムを確実にサポートするためには、データセンターでの経験を有するシステム管理者を確保する必要がある。そうなるとIT部門の管理者や幹部は、イノベーションに時間を費やすのではなく、IT環境ばかりに時間と手間をかけることになる。
こうしたこと全てに加え、病院では増加傾向にある医療情報を管理するために、ストレージを増やすニーズが高まっている。データ分析や人工知能(AI)関連の高度なアプリケーションを活用するために、コンピューティング能力を強化することも求められている。より高速で、柔軟性があり、コスト効率に優れたITインフラを求めるIT担当者にとって、オンプレミスはもう実用的なオプションでも、スケーラブルなオプションでもなくなっている。
医療機関がクラウドを検討すべき7つのメリット
初めてクラウドを導入するとき、IT担当者はオンプレミスの基本サービスを、幾つかSaaS(Software as a Service)に移行することから始めると簡単だ。メールやエンタープライズコンテンツ管理、VoIP(Voice over IP)、従業員用ファイルストレージは、HIPAA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)に準拠したまま、GoogleやMicrosoftなどのクラウドベンダーが提供するサービスに移行できる。
病院のアプリケーションやサーバは、クラウドに移行することで、従来のオンプレミスにあった制約を克服できる。オンプレミスの仮想マシンでホストしている電子カルテや研究用のシステムといった主要なサーバアプリケーションは、クラウドベンダーの仮想マシンやサービスに移行できる。医療機関で利用可能なクラウドを提供するベンダーには、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Google、IBM、Oracleなどがある。ここからは、医療機関がクラウドに主要システムを移行するメリットを、幾つか紹介する。
メリット1.従量制プランによるコストの削減
ITインフラの初期コストがかかるオンプレミスサーバとは異なり、クラウドサーバは使用した時間に対してのみ料金を支払うことになる。通常は分単位で課金する。そのため、病院は使っていないときは停止してコストを抑えることができる。
メリット2.複雑なライセンスの管理が不要
オンプレミス環境では、「Windows」やデータベース管理システム「SQL Server」のライセンス管理に多くの時間が必要になることがある。ほとんどのクラウドベンダーは、サブスクリプション料金にライセンス料金も含めており、ユーザーはライセンスの管理から解放される。
メリット3.高度なバックアップと災害復旧(DR)
「Microsoft Azure」やAWSなどのパブリッククラウドでは、高度なバックアップや災害復旧(DR)機能が利用できる。これらの機能を使い、重要なシステムを簡単かつ安全に復旧することが可能だ。
パブリッククラウドにはクラウド間復旧、毎時スナップショット、外部クラウドやオンプレミスへのレプリケーションに関するオプションも用意されている。こうした機能のほとんどはWebポータルで管理できる。そのため新しいクラウド環境を構築するときに、データの損失や破損を防ぐ対策をするための労力は、ほとんど掛からない。一方オンプレミスのハードウェアとソフトウェアのデータ復旧の仕組みは複雑で、コストも高くなる傾向にある。
メリット4.サーバをスケーリングするためのハードウェアの用意が不要
メモリ、ストレージ、CPUなどのハードウェアリソースを増やす作業は、Webポータルだけで完結する。電子カルテのアップグレードやテスト中、IT部門は数分で必要なリソースを追加し、作業が完了すればそれらを運用から外すことができる。
メリット5、ハードウェアのメンテナンスコストが不要
オンプレミスのハードウェアを保守/管理する必要がないため、メンテナンスコストがなくなり、サポートスタッフの人数も少なくなる。
メリット6.データマイニングサービス、分析サービス、AIサービスが利用可能
医療ケアの手法によっては、人工知能(AI)技術やデータ分析を必要とすることがある。医療機関は、Azureユーザーであれば、
- 機械学習ツール「Machine Learning Studio」
- ビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Power BI」
- ビッグデータ分析ツール「Data Lake Analytics」
が利用できる。AWSユーザーであれば、医療機関向け自然言語処理サービス「Amazon Comprehend Medical」などのサービスを利用可能だ。
これらのサービスで自機関が保持するデータを扱うときは、セキュリティやコンプライアンス(法令順守)の問題が起きないよう対策する必要がある。
メリット7.次世代セキュリティツールへのアクセス
医療データの侵害や、病院のデータを“人質”に取るランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃が引き続き報告されている。こうしたことを前提に、医療機関にとってクラウドへの移行は、サイバー犯罪と戦う重要な武器になることが証明されてきた。高度な脅威保護、侵入検知、セキュリティ監視などのセキュリティサービスを、クラウドのITインフラやアプリケーションに簡単に追加して利用することが可能だ。
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