名古屋大学医学部附属病院も直面 なぜ診療科ごとにデータベースが乱立する?臨床医学研究に「AWS」を使う【前編】

臨床医学研究の現場では、診療科ごとに研究用のサブデータベースが乱立する「サイロ化」の問題がしばしば起きる。同様の問題に直面した名古屋大学医学部附属病院は、解決に向けてどのような取り組みをしたのか。

2019年09月13日 05時00分 公開
[重森 大]
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 医療分野は一般的に情報管理が厳しく、考慮すべき制約事項が少なくない。患者情報に対して、原則として持ち出し禁止の院内規定を設ける施設もある。医学研究には患者情報を匿名加工した上で利用する必要があり、多くの医療現場では診療科ごとに研究用のサブデータベースを乱立させてしまう「サイロ化」の問題が起きている。

 こうした問題を解決するために、匿名加工した医療情報をクラウドに蓄積し、複数施設と共有して研究や地域医療連携のために活用しようとするプロジェクトが目立ち始めた。名古屋大学医学部附属病院もプライベートクラウドで、研究利用を目的としてデータを一元管理するシステムを構築した。完成には約2年かかり、運用管理の負担やデータの利便性の面でさまざまな課題が浮上したという。

 新たに浮上した課題の解決を目指して名古屋大学医学部附属病院は、システムインフラをクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)へ移行した。同院の杉下明隆氏は、2019年6月開催のイベント「AWS Summit Tokyo 2019」で、匿名加工医療情報をクラウドで適切に扱うために重視した要素について語った。前編となる本稿は、クラウドデータ基盤を構築するまでに起きていた「診療科別にデータベースが乱立」と「医療情報の匿名化」という2つの課題について解説する。

杉下氏 名古屋大学医学部附属病院の杉下明隆氏

 杉下氏は名古屋大学医学部附属病院の先端医療開発部先端医療・臨床研究支援センターに所属し、先端医療支援部門のシステム情報室長を務める。同氏は「現代医療を基準にして、数年以内の実現を目指して開発するのが『先進医療』。『先端医療』はさらにその先、十数年から数十年先を視野に入れて開発する領域だ」と説明する。

シーズ情報収集管理システムとプロジェクト共有システム

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