名古屋大学医学部附属病院が研究データ基盤をパブリッククラウドに移行する際、データ保護制度やガイドライン順守は大きなハードルだった。解決策として「Amazon Web Services」(AWS)の採用に至った理由は。
医療情報を研究に用いる場合、「データの匿名化」にまつわるさまざまな問題がある。これを診療科ごとに解決しようとすると、診療科ごとにデータベースが乱立したり、サイロ化したりして非効率になりがちだ。名古屋大学医学部附属病院も同様の問題に直面した。部分最適でなく全体最適を目指した同院は、診療科ごとにばらばらに管理していたデータを集約させた「シーズ情報収集管理システム」と、研究者同士の情報共有に利用する「プロジェクト共有システム」をプライベートクラウドに構築し、研究者のデータアクセスと情報共有の問題を解決した。
こうして名古屋大学医学部附属病院は、診療科の垣根を超えた施設内共同研究や多施設共同研究がスムーズに実現しやすい環境を構築した。その完成には約2年を要し、運用管理の面でも負荷は小さくなかったという。
名古屋大学医学部附属病院の先端医療支援部門でシステム情報室長を務める杉下明隆氏は、システムをパブリッククラウドに移行することを検討したが、医療情報システムに関わる法令やガイドラインの順守が大きなハードルだった。前編「名古屋大学医学部附属病院も直面 なぜ診療科ごとにデータベースが乱立する?」に続き、後編となる本稿は、同院がシステム基盤にクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)を選んだ理由と、AWSで運用しているシステムの実例を紹介する。
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