Lightsailに向く用途/向かない用途
AWSのVPS「Amazon Lightsail」と仮想マシン「Amazon EC2」を価格と機能で比較
「Amazon Lightsail」と「Amazon EC2」のそれぞれのインスタンスを比べるため、双方の使いやすさ、管理のオプション、価格体系を評価する。特にデータ転送コストには注意が必要だ。
「Amazon Web Services」(AWS)は2016年後半に「Amazon Lightsail」という仮想プライベートサーバ(VPS)のサービスをリリースした。このサービスはAWSインフラを基盤に構築され、コンピューティング、ストレージ、ネットワーク、DNS、セキュリティなどの各種クラウドサービスを統合する。目的は、ビジネス規模の大小を問わず、新たなWebサイトの迅速な立ち上げを容易にすることだ。Lightsailは料金体系も分かりやすい。
AWSはパブリッククラウド市場で最大のシェアを誇る。だが、シンプルなWebサーバ機能では、DigitalOceanのような小規模競合企業が静かに市場に浸透し始めている。Lightsailはこうした競合企業と同等の構成モデルをAWSに取り込み、さらに多くの機能を追加する企業に移行の道筋を示すものだ。
Lightsailの各インスタンスには、さまざまなサービスのパッケージが含まれる。コンピューティング用の「Amazon EC2」(Elastic Compute Cloud)、ストレージ用の「Amazon EBS」(Elastic Block Stor)、DNSクエリ用の「Route 53」、セキュアな管理用のSSL(Secure Sockets Layer)暗号化などがその例だ。
Lightsailの価格は各コンポーネントと同程度に設定されている。ただ、コンポーネントによっては、はるかに安価な設定になっているものもある。例えばLightsailとEC2を比べてみると、Lightsailインスタンスにはインターネットデータ転送の許容量が1~5TB含まれているのに対し、EC2では1TB当たり90ドル課金される点が大きく異なる。
併せて読みたいお薦め記事
Amazon EC2を比べる
Amazon EC2関連のAWS機能
構成はシンプルに保つ
Lightsailは、代表的なAWSサービスに関連する価格、構成、管理の詳細を全て習得しなくても、企業がサーバを稼働できるようにする。Lightsailは、予測可能な月額料金で導入できるオプションを幾つか提供する。だが、ビデオエンコーディングや分析などの高度な構成を求められる環境や、CPUのパフォーマンスを高く保つ必要のあるアプリケーションには向いていない。
サーバは、メニューインタフェースから数分で稼働できる。Lightsailには、事前構築された仮想イメージが幾つか含まれている。開発者は、SSD、DNS管理、静的IPアドレスで事前構成されたパッケージを選択できる。パッケージは、AWSの「Linux AMI」またはUbuntuで実行でき、LAMP(Linux、Apache、MySQL、Perl/PHP/Python)、LEMP(Linux、nginx、MySQL、MariaDB、Perl/PHP/Python)、MEAN(MongoDB、Express、AngularJS、Node.js)などのさまざまな開発者スタックを含むことができる。
開発者は、Drupal、Joomla、Magento、Redmine、WordPress、GitLabのような人気のアプリと共に、Lightsailを導入、構成することもできる。AWSはSecure Shellの管理機能を幾つか追加し、キー管理やブラウザプラグインを意識しないでサーバをセットアップできるようにしている。
Lightsailのインスタンスは、AWSマネジメントコンソールに直接表示されることはない。だが開発者は、Virtual Private Cloudのピア接続を設定すれば、他のサービスに関連付けられる高度な機能にアクセスできる。また、次のような高度な機能向けのさまざまなAPIも使用可能だ。
- GetBundles:マシン設定リストを取得する
- CreateInstances:Lightsailのインスタンスを1つ以上作成する
- GetInstances:Lightsailの全インスタンスのリストを取得する
- GetInstance:特定のインスタンスに関する情報を取得する
- CreateInstanceSnapshot:インスタンスのスナップショットを作成する
- CreateInstanceFromSnapshot:スナップショットからインスタンスを作成する
シンプルではないもの
Lightsailは、企業が一般公開するWebサイトを導入するのに役立つ。開発者がLightsailのインスタンスを開始および停止できるので、理論上は、インスタンスを実行していないときはコストを削減できる。だが実際には、Lightsailのインスタンスが停止中でもAWSは課金を続ける。課金を一時的に停止するには、インスタンスをバックアップして、Lightsailからそのインスタンスを削除しなければならない。しかし、それまで使用していた静的IPアドレスがLightsailインスタンスに関連付けられなくなってもWebサーバの管理を続ける場合は、そのIPアドレスの維持に1時間当たり0.005ドルから月額3.60ドルの料金が別途発生する。
各アカウントには、Lightsailインスタンスが20個、静的IPが5個、DNSゾーンが3個という制限がある。シンプルなユースケースでは問題にならないが、こうした制約の中でLightsailを大規模に導入するのは難しい。
バンドルと段階的
Lightsailの料金を、EC2を基盤に構築される個別のサービスの料金と比較してみよう。企業はコンピューティング、ストレージ、ネットワークの要件をEC2を使って計画すると、コストを削減できる可能性が高い。AWSではEC2サーバのバックアップや、稼働/停止を素早く行う優れたツールを提供する。だがLightsailのインスタンスは、長期間実行される部門アプリケーションや個別アプリケーションに適したオプションだといえる。
512MBのRAMと20GBのSSDストレージを含むLightsailの基本料金パッケージは月額5ドルだ。同じCPUとメモリを持つEC2「t2.nano」インスタンスの料金は1時間当たり0.0059ドルになる。これを月額に換算すると月720時間として4.25ドルになる。だがこれにはSSDとデータ転送のコストは含まれていない。LightsailパッケージとSSD RAMを同量にすると、t2.nanoは月額6.25ドルになる。
Lightsailパッケージの最高額は月額80ドルだが、これは月額67.86ドルの「t2.large」インスタンスとほぼ一致する。t2.largeインスタンスは、SSDが80GBで月額75.86ドルになる。ただし、ストレージをHDDにすればコストを削減できるが、Lightsailのオプションにはこの選択肢がない。
DNSオプションのコストはどちらもほぼ同じだ。Lightsailパッケージでは、月300万回のDNSクエリを利用できる。これは100万回のクエリ当たり0.40ドルに相当する。EC2の場合、100万回のDNSクエリ当たり0.40ドルをRoute 53に支払う(割引なしの場合)。DNSクエリの回数が上限を超えると、Lightsailとの差額は月額1.20ドルになり、Lightsailが有利になる。
大きな違いが出るのはインターネット転送コストだ。Lightsailパッケージには、インターネットデータ転送許容量として月1~6TBが含まれている。EC2の場合、最初の1GBを超えると1GBごとに0.09ドルかかる。例えば、EC2アプリがインターネットに5TB送信するとする。Lightsailパッケージを利用すれば80ドルになる。t2.largeベースのEC2アプローチの場合はこれが525.86ドルになる。内訳はEC2インスタンスのコンピューティングコストに67.86ドル、8GBのEBSストレージに8ドル、転送に450ドルだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] 複雑化しがちな「SASE運用」 IT・医療・金融などの事例に見る導入成功の秘訣 -
製品資料
[フォーティネットジャパン合同会社] 「SD-WAN」導入で失敗しないための5つの重要事項 -
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] VPNの代替候補「ZTNA」を理解できるようになる“3大要素”とは? -
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] すぐ分かる「SD-WAN」選定のポイント 成功企業はどんな成果を出した? -
製品資料
[SCSK株式会社] 「Dropbox」管理・運用の困りごと解決ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
3
SAP導入後も残る“Excel依存” 京急電鉄は「kintone」でどう解消した?
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
5
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
6
「エージェントを作るな、スキルを作れ?」 Anthropicが提唱するAI運用の勘所
-
7
RAGで「データをAIに送る」運用が限界を迎えている理由
-
8
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
9
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
10
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー