281人を容疑者として逮捕
ランサムウェアを超える勢いの「ビジネスメール詐欺」(BEC) FBIの推奨策は
2016年6月から2019年7月にかけて、世界のビジネスメール詐欺(BEC)の被害総額が260億ドルに達したことを米連邦捜査局(FBI)が明らかにした。さらに、BECに関わった容疑のある281人を逮捕したという。
米連邦捜査局(FBI)は2019年9月10日、2016年6月~2019年7月のビジネスメール詐欺(BEC)による被害総額が、世界で260億ドルを超えたと発表した。この数字は、実際の被害者がFBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)に報告した届け出に基づく。IC3は2019年4月に発表した「2018年版インターネット犯罪報告書」の中で、BECを「進行中の脅威」と位置付け、企業でサイバー犯罪関連の損失が増大する原因になっていると指摘した。BECによる世界の被害総額は、2018年5月から2019年7月にかけて2倍になったという。FBIはその一因がBECに対する認識の高まりにあるとみている。
FBIの見解は次の通りだ。「こうした詐欺はたいていの場合、ソーシャルエンジニアリング(人の心理的な隙を突く攻撃手法)やコンピュータへの不正侵入を利用したものだ。それによって攻撃者は正規のメールアカウントを侵害し、誤った宛先への送金を誘発させる手口を用いる」
保険金請求の二大理由はBECとランサムウェア
BECの影響はサイバー保険市場にも及んでいる。サイバー保険企業Cyber Risk Underwritersでマネージングパートナーを務めるジェフリー・スミス氏は、セキュリティカンファレンス「Black Hat USA 2019」に登壇した。スミス氏の発表内容によれば、同社に対する保険金請求の筆頭が、メールに関係するランサムウェア(身代金要求型マルウェア)とBECだったという。「BECによる保険金の請求はますます悪化しているようだ。送金する際は、それを受け取る相手に電話をかけて確認してほしい」と注意を促した。
2019年7月には、保険大手のAmerican International Group(AIG)が、サイバー保険の保険金を請求する理由として、BECがランサムウェアを抜いて筆頭になったと発表した。同社の報告書によると、2018年に欧州、中東、アフリカで報告されたサイバーインシデントのほぼ4分の1をBECが占めたという。
FBIは、メールアカウントを不正操作しようとする攻撃者に対抗するため、二段階認証を有効にするよう呼び掛けている。メールに記載されたURLが、本当に相手が名乗る企業に関するものかどうかを確認することも対策になる。ただし、攻撃者が正規のメールアカウントをハッキングしている場合は、この対策が必ずしもBECを防止できるとは限らない。
281人を摘出した「reWired作戦」
米司法省は、FBIが情報を公開した直後、世界の司法機関が連携してBECを摘発する「reWired作戦」(Operation reWired)を展開し、281人を逮捕したと発表した。
4カ月にわたって実施されたreWired作戦では、370万ドル近い資産が押収された。米国、ナイジェリア、フランス、イタリア、日本、トルコ、英国などで容疑者を逮捕し、うち74人は米国、167人はナイジェリアでの逮捕だった。米司法省によると、米国人以外でBECに関わる犯罪者の多くは「ナイジェリアを起点として世界中に分散した国際犯罪組織のメンバー」だという。
米司法省は、reWired作戦によって摘発されたBECの被害総額を明らかにしていない。だが逮捕された容疑者は、さまざま攻撃に関わっていたと推測される。中には「宝くじの当選金を受け取れる」と称して、虚偽の手数料や税金を標的に支払わせる「宝くじ詐欺」や、インターネットで身元を偽り標的をだまして送金させる「ロマンス詐欺」もあった。
「われわれはおまえたちがどこにいようと追及し続ける」。FBIのクリストファー・レイ長官はreWired作戦を通じ、BECに手を染める犯罪者にこのメッセージを突き付けるのだと声明で強調する。対して一般企業や国民には、「われわれはあなた方を守るために全力を尽くす。われわれが犯人に一歩でも近づくために、BECなどインターネット関連の犯罪をIC3に報告してほしい」と呼び掛ける。
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