「拡張分析」の用途5選【前編】
BIがAIで進化 「拡張分析」はデータ準備とクエリ能力をどう強化するか
BIベンダー各社は昨今、「拡張分析」に注力している。拡張分析がもたらす恩恵の中から今回はデータ準備とNLPベースのクエリについて紹介する。
ビジネスインテリジェンス(BI)やアナリティクスツールのベンダーは、自社製品の利便性を高めようとしている。その中で自社製品や機能群に「拡張分析」(Augmented Analytics)を追加する動きが広がっている。こうした中、企業の間では既に拡張分析の実例が蓄積され始めている。
拡張分析とは何か
拡張分析とは、BIアナリストや標準的なビジネスユーザーが簡単に洞察を活用できる高度な機能を用いて、絶えず収集するデータに対する複雑な統計計算を強化することを指す。拡張分析には、クエリを容易にする自然言語処理(NLP)などの人工知能テクノロジーが組み込まれていることが一般的だ。
「ここ10年で、利用可能なデータが爆発的に広がり、多様なソースやチャネルからデータを取得できるようになっている。そのため規模を問わず、企業はこのようなデータを整理して理解するための助けが必要になっている」。現在のBIにおける拡張分析の役割についてこう説明するのは、Adobeで分析サービス「Adobe Analytics Cloud」の製品管理部門のディレクターを務めるベン・ゲインズ氏だ。
分析会社Kinetica DBで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるダニエル・ラスキン氏によると、この役割の重要性が増しているという。ビジネスの意思決定方法が、ますますデータ主導になっているためだ。「データを集める者、そしてデータの使い方を知っている者が勝者となる」とラスキン氏は指摘する。
データを蓄え、必要に応じて分析するだけではもはや足りない。データを取り込み、継続的に評価して、即座に行動に移すことが必要になっている。「現在と過去の何十億個というデータを継続的かつ自動的に組み合わせて分析できれば、直ちに意思決定を具体化できる」(ラスキン氏)
このような必要性が拡張分析の飛躍的な成長を促している。WantStats Research And Mediaの調査部門であるMarket Research Futureは、拡張分析の世界市場は2023年まで年間24%の順調な成長を見せ、同年には130億ドル市場になると予想している。
ここからは、拡張分析の用途を紹介する。こうした分析強化の用途は大まかに5種類に分類できる。今回はそのうちの2つについて取り上げる。
用途1.データ準備
拡張分析の大きな用途がデータ準備だ。データアナリストは、処理対象の新しいデータを受け取るたび、多くのプロセスをこなす必要があった。「拡張分析やスマート分析は、こうしたデータアナリストの忍耐を要する全てのプロセスを削減する」と話すのは、データ分析会社Hexe Dataで業務執行役員を務めるクリストフ・スロウィッキー氏だ。それはどういうことなのか。
スロウィッキー氏の説明によると、これまでのデータアナリストは使える時間の80%を、ETL(抽出/変換/読み込み)プロセスによるデータの「クリーニング」に費やしているという。拡張分析を使うことで、こうしたETLプロセスを自動化できる。その結果、こうしたデータを操作するデータアナリストのこれまでの時間比率が大きく変わり、他の作業にもっと多くの時間を費やせるようになる。具体的には、データの隠れた意味を考察したり、データから洞察を導き出したり、ビジネスに役立つ提案を出すことなどに使える。
用途2.データの「クエリ能力」の強化
拡張分析のもう一つの主要な用途は、データのクエリ能力(queryability)を強化するためにAI技術を利用することに関係しているとゲインズ氏は述べる。つまり企業のどの部門に属する担当者でも、データに関する質問を投げ掛け、データと簡単に対話できるようになる。
この分野に非常に役立つのがNLPだ。NLPを活用すれば、自然言語で質問を入力したり話し掛けたりして、その質問を意味のある結果をもたらすクエリに「翻訳」できる。つまり「レポートに対するフィルターの適用方法を必ずしも理解していなくても、データに基づいて自身のビジネスを把握できるようになる」(ゲインズ氏)。
保険会社Allianzのイタリア現地法人は、スタートアップ(創業間もない企業)であるiGeniusの拡張分析テクノロジーを使用して「Allianz Virtual Advisor」という分析基盤を構築している。Allianz Virtual Advisorを使えば、保険代理人が各自のスマートフォンで音声やキー入力による自然言語クエリを使って、所得の監視、特定製品の実績、顧客プロファイルに関するデータにアクセスできる。
iGeniusが記事投稿サイトMediumに投稿した記事の中で、Allianzイタリア現地法人の最高執行責任者であるアゴスティーノ・フェラーラ氏は次のように語っている。
この新たな仮想アドバイザーは、専門の代理人で構成される当社のネットワークに参加する特別な同僚になっている。膨大な量のデータを非常に短時間で処理し、当社の保険代理人の日常業務を効率的にサポートできる同僚で、それが常に手の空いている状態でいる。この同僚には会話型AIの並外れた潜在能力が生かされている
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「拡張分析」の用途5選
ビジネスインテリジェンス(BI)の進化形とも言える「拡張分析」は、何に役立つのか。データ準備、NLPベースのクエリ、自動洞察など、拡張分析の主な用途を紹介する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
「身代金を支払う」以外のランサムウェア対策は本当にあるのか?
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
ネットワールド、ICカード認証対応のシンクライアント構築アプライアンスを販売
-
10
次世代RPA「ハイパーオートメーション」が急成長か Gartnerが予測
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー