「『拡張分析』『自然言語』『グラフ分析』が、データおよびアナリティクス市場を変えつつある」とGartnerは指摘する。これに伴い、ユーザーはより簡単にデータを理解、共有できるようになってきている。
2019年のデータ分析のトップトレンドは「拡張分析」ツール、「自然言語処理検索」「グラフ分析」だ。
「BI(ビジネスインテリジェンス)ツールで機械学習とAI(人工知能)を利用してデータの準備を自動化し、ユーザーによる洞察の発見と共有を支援する分析手法を拡張分析という。拡張分析は2018年あたりからトレンドとなっており、このトレンドは加速している」。Gartnerのアナリストを務めるリタ・サラム氏はそう語る。2019年2月にオーストラリアで開催された同社のイベント「Gartner Data & Analytics Summit」で、同氏はデータおよびアナリティクス技術のトップ10トレンドに関する共同セッションを実施した。
Gartnerが紹介した2019年のデータおよびアナリティクス技術のトレンドリストは、トレンド化している技術の重要性を印象付けた。「これらの技術は、『データおよびアナリティクスのコンテンツを誰がどのように作るか』『高度な分析による洞察を誰が利用できるか』『人々がデータおよびアナリティクスをどのように利用するか』『われわれはどのような分析を大規模に実行できるか』に大きな影響を与えるだろう」。サラム氏は、同イベント後の取材に対してそう語った。
「アーリーアダプター(先進技術を早期のうちに導入する人や企業)は拡張分析ツール導入においてその効果を享受するようになっており、ますます期待が高まっている。同時にアナリティクス、BI、データサイエンス、ML(機械学習)のベンダーが、データ分析環境に拡張分析機能を追加する動きが活発になっている」(サラム氏)
Gartnerは「分析環境の機能は成熟化が進んでいる」という見解を出している。このことから、拡張分析ツールをデータおよびアナリティクス市場における「ディスラプション(創造的破壊)の次の波」と呼ぶ。これを受けて同社は、データ活用と分析に関する部門のリーダーに対し、拡張分析ツールの導入を勧めた。2020年までに、拡張分析は分析ツールやBIツール、データサイエンスや機械学習ツール、組み込み分析ツールを導入する主要な動機となる見通しだ。
「現在のデータおよびアナリティクスに関するトレンドの中でも、拡張分析ツールは長期的に見て、企業に最も大きな影響を与えるだろう」とGartnerのアナリストであるジム・ヘア氏は見解を示す。
「デジタル企業を取り巻くデータが増加の一途をたどる中で拡張分析は、業務におけるコンテキストに応じて、分析者にとって大事なことだけを知らせる存在として重要だ。加えて組織の誰もがどこからでも分析を利用できるようにすることで、分析による洞察を入手できる人の範囲を広げる。しかも拡張分析は、現在の手動のアプローチと比べて、分析のために必要な時間やスキルが少なく、分析における解釈のバイアスも小さい」(ヘア氏)
機械学習ソフトウェアベンダーのDataRobotでシニアディレクターを務めるジェン・アンダーウッド氏は、「拡張分析ツールはデータおよびアナリティクス担当者にとって、最も重要なイノベーションだ」と語る。
アンダーウッド氏は、セルフサービスBIがこの10年間、アナリティクスソフトウェア業界を変えてきたように、拡張分析は、現代のアナリティクスを変えつつあると指摘する。同氏は拡張分析を「インテリジェントオートメーション」とも呼んだ上で、次のように述べる。「拡張分析がもたらす最大の進歩は、ビジネスユーザーや『シチズンデータサイエンティスト』(専門家でないデータサイエンティスト)がより簡単に分析を実践できるようになることだ」
「拡張分析によって、データサイエンティスト以外の人も高度な分析技術を利用できるようになる。それにより、膨大なデータソースから手掛かりを見いだしたり、複雑な問題を解決したり、結果をより良く最適化したりできるようになってきている。こうした非専門家によるアナリティクス『シチズンデータサイエンス』というトレンドの波は、これまでの市場の変化よりもはるかに早く起こりつつある」(アンダーウッド氏)
Gartnerは市民データサイエンティストの数について、2020年までに専任データサイエンティストの5倍のペースで増えるだろうと予想している。拡張分析ツールは、こうした流れを大きく後押しする見通しだ。
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