期待の裏で高まる危険
「5G」導入が“致命傷”になる? 高まるセキュリティリスクと対策
5Gはそのメリットばかりが注目されがちだが、実はセキュリティの観点で注意すべき点が少なくない。利用する際は具体的にどのようなリスクに対処すればいいのだろうか。
5G(第5世代移動体通信システム)のセキュリティについて、世界中のネットワークベンダーや通信事業者(キャリア)、政府が懸念している。5Gのセキュリティリスクを懸念すべきはこうした企業や組織に限らない。ビジネスで5Gを利用するユーザーも、セキュリティやプライバシーの観点で5Gがどのような意味を持つのか理解しておくのが賢明だ。
5Gには導入に値する明確な利点がある。ブロードバンドサービスの通信速度が高速化し、大容量のデータ通信が実現し、データ通信の信頼性が向上する。こうしたメリットは、ユーザーにとっても企業にとっても分かりやすいものだ。これに対し、5Gがセキュリティやプライバシーの点でどのような影響を持つのかについては、5Gの利点ほど明確ではない。ただし理解可能なことだ。
以下で、5Gを安全に利用する上で考慮に入れるべき3つのポイントを解説する。
考慮点1.サプライチェーン
5Gによって、いつどこでも大量のデータを高速に送受信できるようになることが期待されている。こうした中、期待が広がっているのがAI(人工知能)技術の活用だ。機械学習によるトレーニングに必要なデータを収集したいというニーズはますます広がっている。5Gに準拠した膨大な数のセンサーの導入が一部では進んでおり、さらに広範囲に広がろうとしている。この動きは、運輸や公共サービス、農業など、あらゆる業種に広がるだろう。
センサーを組み込んだデバイスや装置の導入を計画しているならば、その企業のセキュリティチームは、さまざまな点から候補となるベンダーやそのベンダーが提供する製品をチェックし、適切な評価を下す必要がある。
ベンダーに関して注意すべきこととして、例えば下記のような点がある。
- 調達先メーカーが営んでいる事業の実態
- 調達先メーカーの事業所がある場所
- 調達先メーカーの過去の不祥事などの略歴
製品やサービスの観点では、下記のような、次のような点を明確にすべきだ。
- センサーの不正操作を防ぐために、どのような制御機能を備えているか
- セキュリティ侵害を検知するために、比較基準となるベースライン(しきい値)を設定する機能を備えているか
考慮点2.データ
大量のデータの送受信を見越して5Gを導入するのであれば、どれだけのデータ量を送受信できるようになるのかだけでなく、セキュリティの問題も理解する必要がある。企業は、以下のような問いに答えられるようにしなければならない。
- データをどのような方法で収集するか
- データをどこに保存するか
- 司法管轄が異なり、データ保護に関する規定も異なる地域にデータを移動することがあるかどうか
定期的にデータを分類し直し、データの価値を設定し直すことが重要だ。それにより、データライフサイクルを適切に管理し、厳しさが増す各種法令に基づくデータプライバシー基準に準拠することが可能になる。
データの収集ポイント、データの転送経路、最終的な保存先、さらに廃棄まで、一貫してデータを保護することが不可欠だ。ただしこれは本質的に、5Gがもたらす利点に逆行することになる。データ保護のために暗号化などの対策を講じれば、コンピューティングやネットワークにかかる負荷は大きくなり、レイテンシ(遅延)やコストが増加する可能性があるからだ。
センサーの中には、標準機能としては暗号化の機能を備えていない製品もあるだろう。その場合は、データの収集ポイントのできるだけ近くに、データ分析などに利用するハードウェアやソフトウェアを配置する必要が生じる。こうした考え方を、クラウドやその他データを移動する可能性がある場所に至るまで、一貫して浸透させる必要がある。
データが発生してから不要になるまで、データ保護を継続するということだ。
考慮点3.ネットワーク特性
5Gの低レイテンシと信頼性という観点では、何を考慮すべきだろうか。5Gによるレイテンシの低減は、これまでは現実的でなかったユースケースを実現可能にする。例えば、こうした5Gの特性が生きる分野の一つがヘルスケアだ。高齢者の生体情報をリアルタイムでモニタリングし、その値が正常レベルから逸脱したら介護者にアラートを送信する仕組みを採用すれば、介護にかかるコストを削減し、介護の質を高めることも可能になる。だが、悪意ある攻撃者が、パケットを再転送したりノイズを混入させたりすることによってレイテンシを発生させると、高齢者の生命が危険にさらされる可能性がある。
企業は、5Gの低レイテンシという特性が確保できない状況に陥った場合のビジネスに対する影響を理解し、先を見越した対策を講じておくべきだ。例えば、レイテンシを定期的に測定し、しきい値を超えた場合にはリスクを低減させる対策を講じることが重要だ。特に先述の高齢社の生体情報を基にした介護のようなケースでは、特に重大な問題につながる可能性があるため、レイテンシが発生した場合にはその旨を介護者にアラートで知らせる対策が必要になる。5Gの利用がビジネスにおける生命線であるならば、複数のベンダーを利用したり、接続を冗長化したりすることが賢明だ。
5Gのセキュリティ対策を早期に講じれば、確実に、そして安全に5Gの利点を享受できるだろう。
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