セキュリティ強化や運用管理の効率化に効果
人工知能(AI)が「UEM」にもたらす4つのメリットと“落とし穴”
「統合エンドポイント管理」(UEM)に人工知能(AI)技術を活用すると、セキュリティ強化や管理の効率化に役立つ可能性がある。
モバイルデバイスやPCをそれぞれ別の管理製品で管理するのではなく、「統合エンドポイント管理」(UEM)を採用する動きが、企業の間で広がりつつある。その結果、非常に競争の激しい市場が誕生した。
BlackBerry、Citrix Systems、IBM、Mobile Iron、VMwareなど、ほとんどの「モバイルデバイス管理」(MDM)、「エンタープライズモビリティー管理」(EMM)ベンダーは最近になって、自社製品にPCの管理要素を搭載し、UEM化を進めている。Microsoftの「Microsoft Intune」など、従来のPC管理ベンダーもモバイルデバイス向けの管理要素を取り入れている。
大半のUEMベンダーの製品群は、それぞれの価値を高め差異化するために、機械学習などの人工知能(AI)技術を取り入れている。AI技術は大流行し、大げさに騒ぎ立てられる場面も目立つ。とはいえ、AI技術を搭載するUEMにはメリットが幾つかある。
メリット1.IDおよびアクセス管理の高度化
大多数の企業では、エンドユーザーはいまだにパスワードを使って社内LANに参加し、アプリケーションへのアクセス権を取得している。ID窃盗による侵害が起きたら、そのパスワードは悪用され、企業のシステムとデータ全てへのアクセスを許してしまう。ID窃盗はフィッシングの手口を使った主な攻撃ベクトル(手段や経路)となっている。
AI技術は、パスワードや二要素認証だけでなく、エンドユーザーが示す特徴によってもエンドユーザー本人かどうかを識別できる。例えばデバイスや場所、時間帯、アクセスしているアプリケーション、IPアドレス、タイピングの特徴などを利用してエンドユーザーを識別する。ユーザー認証という点では、こうした機能が非常に優れている。シングルサインオン(SSO)の実現を目標とする場合は、特に効果がある。
メリット2.アプリケーション監視の深化
従来の一般的なMDM/EMMやUEMは、アプリケーションのアクセス統計や、エンドユーザーがアプリケーションを使用した時間を収集している。だが取得後に分析対象となる情報の量は限られている。
AI技術は、使用中のアプリケーションとその使用方法に関する統計情報の収集に利用でき、単一障害点になりそうな重要なポイントやエンドユーザーの生産性低下に関するフィードバックも提供する。最終目標は、エンドユーザーの生産性を下げる原因となり、サポートの問題を引き起こすボトルネックの発見だ。アプリケーションや企業システムの異常を検出するという点では、AI技術は単純なデータテーブルよりもはるかに優れた仕事をする。
メリット3.セキュリティの強化
窃盗やシステム侵害から企業データを守るために、安全な環境を作る戦いが続いている。過去の情報や兆候を利用する固定的なセキュリティ対策でも、比較的古くて著名なマルウェア攻撃には対抗できる可能性がある。だが攻撃対象が変化し続ける中では、ゼロデイ脆弱性(パッチ提供前の脆弱性)のリスクの検出や評価も目標とする必要がある。
そのようなセキュリティリスクの検出は、他社製品のデータも含めた、エンドユーザーの行動に関する大規模なデータが基盤になる。このようなデータとAI技術を併用することで、アプリケーションやネットワークアクセスの中から悪意のあるパターンを発見し、被害が起きる前にそれらを遮断できる。
セキュリティとID管理は密接な関係がある。だが、これらは個別の評価が欠かせない。
メリット4.エンドユーザーサポートの効率化
新入社員のオンボーディング(早期戦力化のための配属プロセス)は依然として、従業員を組織に迎える取り組みの中でも特に地道で、難しい要素だ。IT部門によるサポートを何日も待つことなく、従業員が初日から各自の仕事を完了させるには、必要なツールと機能をその日から提供する必要がある。
AI技術を搭載するUEMは、エンドユーザーの役割や責任を理解した上で、そのエンドユーザーに手引きとなる情報を提供し、セットアップのプロセスを遂行させることが可能だ。さらにエンドユーザーが過去に経験した問題を基に構築したナレッジベースに基づき、補助的なFAQ(よくある質問とその答え)を用意することで、IT部門の負担を減らす。その結果、人手による一般的な準備プロセスに比べ、新入社員はごく初期から成果を上げられるようになる。数日がかりだったプロセスを、わずか数時間に短縮することもあり得る。
細部に潜む落とし穴
AI技術のメリットは、必要な機能をベンダーが製品に適切な形で搭載しているかどうかに左右される。AI技術の中でも機械学習は、最適な動作を「学習」するために大量のデータセットが必要になる。そのため最低でも必要なのが、導入対象のUEMによる機械学習エンジンのトレーニング方法を把握することだ。
多様なユーザーや組織による匿名データに基づいて継続的にトレーニングされるのか、それとも決まったデータセットを使った1回限りのトレーニングなのかを把握する。前者の方がデータセットの規模が大きくなり、エンドユーザーの入力が増えるほど、機械学習エンジンの判断精度が優れたものになる。
AI技術を搭載するUEMには、多くのメリットがある。ただし、それはAI技術が適切に実装、導入されている場合に限られる。企業は、AI技術の導入方法や、自社のエンドユーザーにとって不可欠な機能・特徴を徹底的に評価する必要がある。「AI」と名の付く機能が本当にAI技術に基づいているのか、そのような名前が付けられているだけなのかも評価する。詳しく調査しないで、ベンダーが質の高い機能を提供していると単純に思い込んではならない。
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