新人IT担当者でも分かる「統合エンドポイント管理」(UEM)【第1回】
いまさら聞けない「UEM」とは? 「MDM」や「EMM」との違いを比較
「UEM」製品とは何かを理解するには、「MDM」製品や「EMM」製品との違いを整理することが先決だ。その上で製品の成り立ちや必須機能に注目することが重要になる。
この連載について
「統合エンドポイント管理」(UEM)製品という製品分野が一般的な存在になりつつあるが、UEM製品について正確に説明できる人はそう多くない。このシリーズは新人のIT担当者に向けて、UEM製品の定義から成り立ち、主要ベンダーとその特徴、選定方法などを複数回に分けて解説する。
「統合エンドポイント管理」(UEM)製品とは何か。それを説明する前に、「エンドポイント」の定義を確認しよう。エンドポイントとは、企業または団体のネットワークに接続し、主にエンドユーザーが利用するデバイスの総称だ。具体的にはPCやタブレット、スマートフォンなどのデバイスを指す。従ってUEM製品とは、これらのエンドポイントを一元管理できる製品のことだ。
エンドポイントを管理する製品として「モバイルデバイス管理」(MDM)製品や「エンタープライズモビリティー管理」(EMM)製品などもある。それらとの違いを整理しながらUEM製品について解説する。
日本の歴史を振り返ると、1980年代からPCが一般的に業務利用され始め、それらを管理する製品として「クライアント管理製品」(もしくは「IT資産管理製品」)が使われるようになった。当時はエンドポイントという言葉もなく、エンドユーザーが利用し、かつネットワークにつながるエンドポイントといえばPCしかない時代だった。
MDMからEMMへ
2010年にAppleがタブレットの「iPad」を発売すると、これを業務利用しようとする動きが現れるようになった。さらに当時のiPadと同じAppleのモバイルOS「iOS」搭載のスマートフォン「iPhone」や、GoogleのモバイルOS「Android」搭載のスマートフォンなども同様に業務利用されるようになった。これらは、PCとは全く異なるアーキテクチャであり、かつ個人利用を想定したエンドポイントだった。主に組織利用のPCを想定した従来のクライアント管理製品は主にWindowsのみを対象としていたため、これらの管理が困難で、専用の管理製品が必要になった。そうして登場したのがMDM製品だ。
MDM製品の管理対象となる範囲は、ハードウェア情報収集、ソフトウェア情報収集、ロック、ワイプ(データ消去やリセット)、利用制限、位置情報トラッキングなどだった。ここにアプリケーションの配布ができる「モバイルアプリケーション管理」(MAM)製品や、ファイルの配布ができる「モバイルコンテンツ管理」(MCM)製品が登場。MDM製品にMAM製品やMCM製品の機能を組み合わせたスイート製品が、EMM製品と呼ばれるようになった。
EMM製品の導入は進んでいるものの、現状ではEMMという言葉は十分に普及しているとは言えない。EMM製品をいまだに「MDM製品」と呼んでいる人も少なくない。
UEMへと発展した「2つの流れ」
iOSやAndroidの業務利用が広がるにつれ、EMM製品も企業に普及した。IT管理者にとっては、従来のPCを管理するクライアント管理製品とEMM製品とを併用する事態となり、管理負荷が増大することになった。その負荷をなるべく軽減すべく、全てのエンドポイントを一元管理するための製品としてUEM製品が登場した。つまりUEM製品は、以下のような位置付けになる。
UEM製品=クライアント管理製品+EMM製品
(EMM製品=MDM製品+MAM製品+MCM製品)
UEM製品の開発には2つの流れがある。一つはPC専用の管理製品であるクライアント管理製品にEMM製品の機能を付加したもの。もう一つはEMM製品にクライアント管理製品の機能を付加したものだ。一言でUEM製品と言っても、それぞれの流れによって、実装している機能に違いがある。
クライアント管理製品から発展してきたUEM製品は、EMM分野で若干不足している機能があったり、逆にEMM製品から発展してきたUEM製品は、PC管理の機能で不足している部分があったりする。考えられる全ての管理機能を、あらゆるエンドポイントに対して提供できているUEM製品は、現在のところ見受けられない。
UEMに求められる機能
繰り返しになるが、UEM製品はクライアント管理製品とEMM製品の機能を併せ持つ。主要な管理対象OSはiOSやAndroidに加えて「Windows」「macOS」「Chrome OS」だ。UEM製品としては最低限、PC系OSのWindowsまたはmacOSのいずれかに加え、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイス系OSのiOS、Android、Chrome OSのいずれかが管理できる必要がある(Chrome OSを搭載する「Chromebook」はPCという扱いにもできるが本稿ではモバイルデバイスと位置付ける)。
UEM製品に求められる機能には一般的に以下が挙げられる。
- ハードウェア資産管理
- エンドポイントのメーカーやモデル、CPU、メモリサイズ、ディスクサイズ、SIMカードの情報などハードウェア情報の収集と表示
- ソフトウェア資産管理
- インストール済みソフトウェア情報の収集や表示、ライセンス管理
- 位置情報トラッキング
- リモートロックやリモートワイプ、遠隔操作
- 利用制限
- パスワード制限、カメラなどのアプリケーション無効化
- 各種設定
- メールアドレスや無線LANなど
- アプリケーション管理
- アプリケーションの配布や削除など
- コンテンツ管理
- ファイルの配布や削除など
- パッチ/アップデート管理
通常、UEMベンダーはOSベンダーが提供しているAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使用して製品を開発している。従って上記機能においてOSごとに実現の可否が異なる。OSベンダーが公開しているAPIの範囲で、全ての機能を実装していることが望まれる。
UEM製品によっては、以下の機能を実装しているものもある。
- ポリシー/タグ管理
- 操作ログ収集
- LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)連携
- Webフィルタリング
- プリンタやルーターなど周辺機器の管理
- 他製品との連携
前述の通り、UEMベンダーはOSベンダーが提供しているAPIの範囲内で製品を開発しているため、基本的な機能について大きな差はない。従って差異化のためにベンダー個別の機能を追加したり、コンソールのUI(ユーザーインタフェース)を見やすくしたり、低価格で提供したりといった工夫をしている。
提供形態はクラウドが主流
調査会社アイ・ティ・アールの「ITR Market View:ユニファイド・エンドポイント管理市場2018」が示すように、日本においてはUEM製品の機能をクラウド形式で提供するUEMサービスが圧倒的に主流だが、米国や欧州諸国ではオンプレミス形式に抵抗のないユーザー企業が少なくない印象だ。
情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書2017」にあるように、IT技術者のうちIT企業に勤務している割合は、日本が72%、それ以外の国では50%以下。特に米国では34.6%だ。つまり米国のIT技術者は大多数がユーザー企業に属している。そのため導入や運用負荷のかかるオンプレミスUEM製品の利用に抵抗がない可能性がある。
日本においては、技術者の数が少ないにもかかわらず、IT部門に要求される業務は外国と変わらない。なるべく負荷がかからない形でニーズを満たす必要があるため、価格面やセキュリティ面でメリットがあるオンプレミスUEM製品を選ばず、クラウド形式のUEMサービスを選ぶ企業が主流なのだと考えられる。
次回は、主要なUEMベンダーを挙げ、その特徴を紹介する。
田北幸治(たきた・こうじ)
アイ・ビー・シー 代表取締役社長
大学院修了後、外資系コンピュータベンダーで金融機関向けシステムエンジニア(SE)、営業を経験。その後IT企業を立ち上げ、ソフトウェア事業を展開。外資系ソフトウェア企業の日本代表を経て、2015年にエンドポイントセキュリティやエンタープライズモビリティー管理(EMM)に特化した製品を扱うアイ・ビー・シーを立ち上げる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
新人IT担当者でも分かる「統合エンドポイント管理」(UEM)
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー