「Edge」と「Chrome」 企業が選ぶべきWebブラウザはどちらか【前編】
Chromiumベースの新「Edge」がChromeに勝てる“たった一つの条件”
Microsoftが提供を始めた「Microsoft Edge」の新バージョンは、オープンソースの「Chromium」をベースにしている。同じくChromiumベースのGoogle「Chrome」との戦いに勝つために、Edgeに必要な要素とは何か。
かつて市場シェアを巡って熾烈(しれつ)な争いを繰り広げたWebブラウザ戦争が、2020年に再燃の兆しを見せている。
Microsoftは2020年1月15日、Webブラウザ「Microsoft Edge」の新バージョンの提供を開始した。これまでのEdgeはMicrosoft独自のレンダリング(描画)エンジンを採用していたが、新しいEdgeはオープンソースWebブラウザ「Chromium」を基本のソースコードに変更した。この変更によりEdgeと、同じくChromiumをベースにしたGoogleのWebブラウザ「Chrome」は、どちらも同じレンダリングエンジンを使用することになる。
新しいEdgeは従来のWebアプリケーションを実行しやすくしただけでなく、プライバシー保護を強化しているとMicrosoftは説明する。専門家は、管理機能が充実している点や企業用途を重視している点が企業にとって魅力になるとみている。
Netscape Communicationsが開発していたWebブラウザの「Netscape Navigator」対Microsoftの「Internet Explorer」や、Internet Explorer対Mozillaの「Firefox」といった競争から数十年を経て、またもやWebブラウザ戦争が始まる。調査会社VDC Research Groupのアナリストであるエリック・クライン氏は「過去になったことが再びよみがえるのは興味深い」と話す。
MicrosoftはOSでは優位だが、Webブラウザでは成功と失敗を経験している。現在はMicrosoftのWebブラウザよりも、ChromeとFirefoxの方がユーザーの人気を獲得しているとクライン氏は説明する。かつてMicrosoftの標準WebブラウザだったInternet Explorerは「Chromeと比べると速度や使いやすさで劣っていた」(同氏)。
「新しいEdgeの最強の競争相手はChromeになる」と、調査会社Forrester Researchのアナリストであるアンドリュー・ヒューイット氏は語る。ヒューイット氏によると、コンシューマー市場ではChromeが圧倒的なシェアを獲得している一方、ドイツのようにFirefoxが浸透している地域もある。
EdgeがChromeユーザーを奪うために必要なこと
アナリストは、Microsoftが企業に焦点を置き、企業向けソフトウェアの相互運用性に力を入れているとみている。クライン氏によると、Microsoftは企業向けソフトウェアをEdgeに移植しやすくすることで、EdgeでWebアプリケーションを実行しやすくしているという。
ヒューイット氏は「Microsoftはツールの利便性を高め、オフィススイート「Office 365」をはじめとする同社の製品/サービスからEdgeを使えるようにすることに重点を置いている」と言う。同社はEdgeを使用してオンラインファイル同期サービス「OneDrive」のファイルを表示できるようにするなど「Office 365ツールの使い勝手を良くしようとしている」(同氏)。
調査会社Enterprise Strategy Groupのシニアアナリスト、マーク・バウカー氏は、Edgeがユーザー企業の標準Webブラウザとなるには、Webアプリケーションのユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)を最大限に高め、ユーザー管理に必要なツールを提供する必要があるという。Chromeを使っている企業はユーザー管理用に別のコンソールを使用しなければならないが、Edgeを使うと既存のMicrosoftツールでユーザー管理作業ができ、クライアントOSに「Windows」を利用する企業にとって魅力的だ。
企業で使ってもらうには、エンドユーザーにとっても魅力的なWebブラウザでなければならない。近年は企業の間で、使用するWebブラウザを従業員に選ばせる動きが広がっている。「コンシューマー市場や個人ユーザーの好みが、企業向けWebブラウザ戦争の勝敗を分ける大きな要因になる」とヒューイット氏は話す。
コンシューマーの支持を獲得すれば、企業にも浸透する。企業が最も重視するのは安全性だとは限らない。「『Edgeには、こんなに便利な使い方がある』といった生産性のメリットが重要だ」(ヒューイット氏)。MicrosoftのWebブラウザを使わずに育った世代の人が企業に入社しつつあることを考えると「Microsoftにとって厳しい戦いになるだろう」とバウカー氏は指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
3
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
4
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
-
5
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
6
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
7
kintoneで実践 製造業のための「見積もり管理」改善のヒント
-
8
祝10周年! 創業者も予想できなかったRaspberry Pi活用例
-
9
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
10
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
4
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
7
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
10
マンガで学ぶXDR/MDRのメリット、中小企業のセキュリティ強化になぜ有効か?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー