わずか2カ月の開発期間
米大統領選の前哨戦で集計トラブル 原因は投票アプリのテスト不足?
2020年2月3日のアイオワ州党員集会で、利用された投票数集計用アプリケーションで集計ミスが発生した。アプリケーションのテストが不足していたことが原因ではないかと複数の専門家は指摘する。
米大統領選挙の皮切りであり、その回の大統領選挙の動向を占うものとして注目を集めるのがアイオワ州党員集会だ。党員集会とは、立候補予定者ごとの代議員(自党の大統領選候補者を選出するための党大会に出席する州の代表者)の配分を決める集会を指す。
2020年2月3日に実施された米民主党のアイオワ州党員集会は混乱に包まれた。前代未聞の集計トラブルが発生し、結果発表が大幅に遅れたためだ。これは投票数集計用のモバイルアプリケーションのテスト不足が原因だった可能性がある。この事件を受け、専門家は導入前のテストの重要性を改めて力説する。
New York Timesの記事によると、アイオワ州民主党が開発を委託した投票数集計用アプリケーションの制作期間はわずか2カ月だという。一方党関係者は、アプリの不具合が原因であることを否定していると同紙は伝える。
調査会社VDC Researchのエンタープライズモビリティ担当エグゼクティブバイスプレジデントであるデービッド・クレブス氏によれば、このアプリケーションについては当初からメディアが問題点を報じていた。プログラムの不備が原因でデータの一部しか集計できなかった可能性や、アプリを事前にダウンロードできず、インストールに苦戦した利用者がいる可能性があるという。
開発現場におけるテストツールの利用率
「この事件は、新しいデジタルツールの展開とトレーニングに問題があったことを示唆している」とクレブス氏は指摘する。VDC Researchは2019年に、ソフトウェア開発者・技術者772人を対象にテストツールの利用状況を調査した。Webアプリケーションの脆弱(ぜいじゃく)性を自動検出する動的アプリケーションセキュリティテスト(DAST)ツールを使用していると回答した人は13.1%。アプリケーションの実行時にコードをテストする動的テストツールを使用していると回答した人は17.8%だった。ツールの代わりに手動でのテストや自社製のテストツールを利用する開発者もいるという。「テストツールを使用している開発者の方が、使用していない開発者より不具合を発見する確率が高い」と同氏は述べる。
クレブス氏によると、アイオワ州党員集会で使用された集計アプリケーションのテストが不十分だった可能性はあるものの、詳しい情報がなければ断定できないという。「たとえ課題を解決できたとしても、的確な計画の立案と利用者のトレーニングを実施しなければ、問題は再発するだろう」とも付け加える。
なぜこうした事態につながったのか
調査会社Constellation Researchのバイスプレジデント兼主席アナリストであるディオン・ヒンチクリフ氏は、この状況を次のように述べる。「これまでで最も劇的なテクノロジーの失敗の一つだ。かつては集計アプリケーションが現実の選挙で明確に使われたことも、州レベルの規模で試されたこともなかった」
問題の集計アプリケーションについて、ヒンチクリフ氏は「開発期間が短く、十分な動作確認のための時間があまりなかったのだろう」と推測する。「このアプリケーションを開発したShadowという企業のことはあまり公表されていない。できるだけ世間にアプリケーション情報を公開しないことで安全性を確保する、いわゆる『隠匿のセキュリティ』手法を採用したるようだ。だが、それによってアプリケーションが正しく動作するかどうかの十分な精査を妨げたのではないか」(同氏)
ヒンチクリフ氏自身、米ミサイル防衛庁のシステムアーキテクトとしてアプリケーションテストを実施したこともある。「継続的なテストを実施する体制がない限り、アプリケーションを設計通りに機能させ、修正しても正しく動作し続けることを保証することはできない。これはアプリケーションのテストに精通した者なら誰もが知っていることだ」。同氏はそう見解を示す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー