結果を公開しつつ秘匿性も確保
不正選挙を防ぐMicrosoft「ElectionGuard」 その中核技術「準同型暗号」とは?
2020年の米大統領選挙に先立ち、Microsoftはオープンソースのソフトウェア開発キット(SDK)「ElectionGuard」を発表した。これにより、電子投票の結果を有権者自らが検証できるようになる。
Microsoftが提供する「ElectionGuard」は、選挙投票の安全性を高めるために利用できるオープンソースのソフトウェア開発キット(SDK)だ。同社は2019年5月に開催した開発者向け年次カンファレンス「Microsoft Build 2019」で、ElectionGuardを発表した。選挙システムベンダーがElectionGuardを使うと、有権者や第三者機関が、自分の票が正しくカウントされたかどうかを確認できるようになる。
投票システムを変える可能性を秘めたSDK
ElectionGuardの開発において、Microsoftはセキュリティ技術開発会社Galoisと提携した。GaloisはElectionGuardの重要な部分であるAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を開発した。
「ElectionGuardの目的は、選挙関連システムのベンダーなど、安全な選挙システムを構築したいと考える企業や人々が、通信の安全性を確保できるようにすることだ」。Galoisの研究エンジニアを務めるジョーイ・ドッズ氏はそう説明する。ElectionGuardに備わる、有権者や第三者機関が投票結果を直接検証できる機能は、有権者のプライバシーを損なわない選挙関連情報の提示を可能にする。ただし紙の投票用紙を使わないシステムは、この機能の対象外だという。
サイバーセキュリティ推進団体のCenter for Internet Security(CIS)で選挙セキュリティ担当シニアディレクターを務めるアーロン・ウィルソン氏は、ElectionGuardを「将来の投票制度を変える可能性があり、正しい方向に進歩している」と評価する。 ウィルソン氏は「安全かつ検証可能かつ正当な選挙システムを実現する」という、Microsoftが同社自身に課したミッションを支持している。「それら全ての要件を満たすことができれば、侵害困難な投票システムが実現し、既存のシステムを改善できるだろう」(同氏)
「準同型暗号」で安全性と正当性を確保
Microsoftのカスタマーセキュリティと信頼性部門の副責任者であるトム・バート氏は、ElectionGuardにより「検知されずに投票を不正操作することは不可能になる」と述べる。同氏のブログ記事によると、ElectionGuardによる選挙結果のエンドツーエンド検証は以下の2つの方法で実現しているという。
- ElectionGuardは、投票者ごとに一意の追跡コードを発行する。これにより、投票者は自分の投票が正しく記録され、改ざんされていないことを確認できる。
- ElectionGuardは仕様書をオープンにしている。有権者や立候補者、報道メディアなど投票結果を検証したい人は誰でも、自分で検証プログラムを開発したり、既存のプログラムをダウンロードしたりできる。そうして入手したプログラムを実行し、集計結果が発表と一致するかどうかを複数人で検証することにより、結果の正当性を確認することが可能になる。
この2種類の検証を実現可能にしたのが、ElectionGuardが採用する暗号化技術「準同型暗号」だ。一般的な暗号化では、復号するために必要な秘密の情報を持っていることが、正しい処理をしたことの証明となる。第三者が処理の正しさを検証できるようにするには、処理の実行者からその秘密の情報を受け取る必要がある。これに対し準同型暗号の場合は、秘密の情報を渡さなくても第三者が処理の正しさを検証できる利点がある。検証する第三者は、秘密情報を使わなくてもシステムが正しく動作したことを立証できる。これにより、他の暗号化方式とは違うレベルの透明性が確保される。
「準同型暗号は秘密投票(投票者の選択内容が分からない投票形式)による選挙の検証可能性にとって重要な要素だ」とウィルソン氏は説明する。「選挙には検証可能性と安全性が求められる一方で、投票の秘匿性と非公開性も必要だ。準同型暗号の特性は、選挙結果の検証可能性と、投票の秘匿性の維持という両目的を満たすだろう」(同氏)
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