「IEEE 802.11ac」とは格段の違い
アメフト強豪大学が「IEEE 802.11ax」を選んだ理由 9万人の競技場で高速通信
「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)は旧世代の無線LAN規格とは別物だという評判がある。それは本当だろうか。アメリカンフットボールスタジアムに導入したオクラホマ大学に、IEEE 802.11ax導入の理由と効果を聞いた。
オクラホマ大学(University of Oklahoma)にある「ゲイロードファミリーオクラホマメモリアルスタジアム」は、約8万9000人もの観客を収容するアメリカンフットボールスタジアムだ。この規模は米国の大学が持つアメリカンフットボールスタジアムの中でも上位に入る。オクラホマ大学のフットボールチームのホームゲーム(スタジアムを本拠とするチームの試合)はほぼ毎試合チケットが完売し、観客が席を埋め尽くす。
2019年秋、レギュラーシーズン初期(開催時期は9月から12月ごろ)に開催されたオクラホマ大学のある試合で、第3クオーター(1試合は4クオーター)が終わる前に観客が帰り始めた。同校でスポーツ関連の技術分野を率いるデービッド・ペイン氏は、この状況を見ても驚かなかった。
なぜIEEE 802.11axを選んだのか
オクラホマ大学は対戦相手のサウスダコタ大学(University of South Dakota)を42ポイントも引き離し、勝利は確実だった。その上、スポーツ専門のケーブルテレビ番組「ESPN」では、テキサス州における他大学の試合が始まっていた。
ペイン氏が驚いたのは、観客が帰り始めるのと同時に同スタジアムの無線LANアクセスポイントへの接続数が急増したことだ。同スタジアムは無線LAN規格「IEEE 802.11ax」(業界団体Wi-Fi Allianceによる名称は「Wi-Fi 6」)準拠の無線LANアクセスポイントを導入して間もなかった。
観客が減ったにもかかわらず無線LANへの接続数が増えたことをペイン氏が不思議に思っていると、観客席に残っている友人や同僚からショートメッセージが次々と届いた。「これはすごい」。目の前の試合を観戦しながらテキサスの試合をライブ配信で見ているが、映像が少しも途切れたり遅れたりしない、という内容だった。多くの観客がスタジアムにいながら2つのフットボールの試合を同時に見ていたことが、無線LANの接続数が急増した理由だった。
ペイン氏が確認した無線LANアクセスポイントのログでも、ESPNのWebサイトに多くの観客が接続していることを確認できた。
オクラホマ大学の事例は、IEEE 802.11axのデータ伝送の高速さと低遅延といった特徴が前評判通りであることを実証した。数万人が入るスタジアムのような高密度環境で動画のライブ配信を問題なく鑑賞できることは、旧世代規格の無線LANでは想像できないことだ。IEEE 802.11axは、高いビットレート(単位時間当たりに伝送するデータ量)と各種の新しい伝送技術を組み合わせ、効率性の高いデータ伝送を実現する。
コンサルティング企業West Gate Networksのアンドリュー・フローリッヒ氏は、企業のIEEE 802.11ax導入を支援する中で、1世代前の無線LAN規格である「IEEE 802.11ac」(Wi-Fi Allianceによる名称は「Wi-Fi 5」)との格段の違いを実感している。同氏はIEEE 802.11axへの移行で「目覚ましい効果が出る」と話す。オクラホマ大学の事例で顕著に分かるのは、IEEE 802.11axはデバイスの接続数が高密度になる環境に適した設計になっていることだ。
オクラホマ大学の場合、IEEE 802.11axを導入したのはスタジアムの大規模改修のタイミングだった。「ITインフラに大規模な予算を投入できる機会はあまりない。このタイミングでITインフラへの投資に関して最適な判断をしたかった」とペイン氏は語る。
2019年のレギュラーシーズン開幕前に導入を完了して運用を始めなければならなったが、導入のスケジュールに余裕はなかった。IEEE 802.11axは規格として登場したばかりで、無線LAN機器ベンダー各社が準拠製品の販売を開始するのを待つ必要があったからだ。仮に間に合わない場合は、旧世代であるIEEE 802.11acに準拠した製品を採用するしかなかった。
スケジュールが許すぎりぎりまで決断のタイミングを引き延ばし、最終的にAruba Networksが提供するIEEE 802.11axの準拠製品を導入できる見通しが立った。ペイン氏は「待つだけのかいがあった」と振り返る。2019年のレギュラーシーズンが閉幕するころには、観客が利用するデバイスもIEEE 802.11axの準拠製品が増えていた。ペイン氏の推計では観客がIEEE 802.11ax準拠の無線LANアクセスポイントに接続するデバイス数の30~40%がIEEE 802.11ax準拠品になったという。
「結果として私たちの決断は間違っていなかったと自信を持って言える」とペイン氏は話す。
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