パンデミックで変わるコミュニケーションツール市場
新型コロナでZoomなどの「Web会議」の成長と“脱PSTN”が加速する?
新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機に、コミュニケーションツールを見直す動きが広がっている。「Zoom」などのWeb会議ツール好調の裏で、何が起こっているのか。市場の動きをまとめた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響で、Web会議ツールの活用が広がっている。感染症予防のために対面での会議を減らすと同時に、Web会議ツールを使い始めたオフィスワーカーは少なくない。電話(音声通話)の代わりにWeb会議ツールを利用する動きも広がりつつある。
Web会議ツール好調の裏で“PSTN離れ”も
Q&Aサイトを運営するJustAnswerの開発責任者、ジョシュア・トレタコフ氏の場合、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まる前は、音声通話を使って会議や報告をすることが週に6回ほどあった。パンデミックが始まってからは、音声通話の代わりにMicrosoftのユニファイドコミュニケーションツール「Microsoft Teams」やZoom Video CommunicationsのWeb会議ツール「Zoom」を使うようになったという。トレタコフ氏は「Web会議ツールを利用する時間はパンデミックが始まる前と比べてほぼ倍増し、音声通話は全く使わなくなった」と話す。
トレタコフ氏はパンデミックを機に、JustAnswerの従業員が利用していた仮想電話番号(使い捨ての電話番号)を取得するサービスを解約した。今後の従業員同士の連絡にはMicrosoft Teamsを使うことを考えているという。
パンデミックの影響によるWeb会議ツールの利用拡大は今後も続く可能性がある。調査会社Wainhouse Researchが最近実施した調査によると、企業のIT製品とサービスの購買を担当する回答者の76%が、少なくとも2020年末まではパンデミック以前より高い水準でWeb会議ツールの利用が続くと想定している。一方Wainhouse Researchのマネージングパートナーであるマーク・ビーティー氏は、社内の従業員ごとに一つずつ音声通話ツールのライセンスを購入する計画だった企業は、計画を考え直すことになると予想する。
今後は同じベンダーの音声通話ツールとWeb会議ツールを併用するユーザー企業が増加する可能性がある。Wainhouse Researchの調査では、Cisco SystemsのWeb会議ツール「Cisco Webex」やTeams、Zoomなどと連携できる音声通話ツールを「すでに利用している」と回答した企業は222社に上った。この調査では、使用または導入を検討している音声通話ツールについて、Microsoftの「Office 365」(現「Microsoft 365」)と回答した企業は69%、Cisco Systemsの「Webex」と回答した企業は65%、Zoom Video Communicationsの「Zoom Phone」と回答した企業は48%だった。
コミュニケーションベンダー各社は、音声通話機能とWeb会議機能を同時に提供できるようにするための準備を始めている。PBX(構内交換機)の機能をクラウドサービスとして提供する「クラウドPBX」のベンダーであるRingCentralや8x8は最近、自社の製品群にWeb会議ツールを加えた。Zoom Video CommunicationsやLogMeInなどのWeb会議ベンダーは、自社のWeb会議ツールを補強する音声電話ツールを提供し始めている。
音声通話市場とWeb会議市場の線引きはあいまいになり始めている。中には音声通話機能とWeb会議機能を素早く切り替えることができるコミュニケーションツールもある。
企業の間でWeb会議ツールの導入が進む一方で、PSTN(公衆交換電話網)の音声通話サービスの契約数は縮小傾向にある。調査会社Nemertes Researchのアナリスト、アーウィン・レーザー氏によると、Teamsの導入を機にPSTNの音声通話サービスを解約する企業も存在する。調査会社Gartnerのアナリスト、ブライアン・ドハティ氏は「Web会議ツールの導入はいつ進んでも不思議ではなかった。“PSTN離れ”はかなり前から始まっていた」と語る。
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