クラウドが変えるセキュリティ市場【後編】
「SASE」とは? クラウドの弊害にセキュリティとネットワークの合わせ技で対処
クラウドサービスの利用が活発化するとともに、クラウドサービスにまつわるさまざまな課題が顕在化してきている。その対策として新たに登場したのが「SASE」だ。SASEはどのような機能を備え、なぜ登場したのか。
クラウドサービスの普及に伴って生じた新しいセキュリティやネットワークの課題に対処する製品分野として、調査会社Gartnerは「SASE」(セキュアアクセスサービスエッジ)を提唱する。同社の定義では、SASEは「クラウドサービスを安全かつ安定的に運用するための、セキュリティとネットワーク機能を統一した製品」だ。
SASEは具体的にどのような機能で構成されるのか。セキュリティおよびネットワークのどのような課題解消に役立つのか。前編「『SECaaS』はなぜ必要か? 従来型セキュリティ製品の“3大限界”を打破」に続く本稿は、こうしたSASEの基礎を整理する。
「SASE」の構成要素
クラウドサービス特有のセキュリティやネットワークの問題を解決する機能を網羅的に提供するのがSASEだ。以下にSASEを構成するセキュリティ機能やネットワーク機能の例を挙げる。
- セキュリティ機能
- CASB
- エンドユーザーがクラウドサービスを利用する際に発生するデータを監視し、不正利用を検出・防御する。
- SWG(セキュアWebゲートウェイ)
- URLフィルタリングやプロキシサーバなど複数のWebセキュリティ機能を組み合わせてWebサイトへの安全なアクセスを可能にする。
- ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)/SDP(ソフトウェア定義境界)
- データの送受信中やその前後に認証を設けて、送信側と受信側が互いに正規の相手であるかどうかを厳密に検証したり、通信路を暗号化したりして通信の安全性を確保する。
- CASB
- ネットワーク機能
- SD-WAN(ソフトウェア定義WAN)
- 物理的なネットワークに仮想ネットワークを構築し、WANのトラフィックを一元的に制御する。
- CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)
- コンテンツ配信用のサーバを各地に分散させ、エンドユーザーと最寄りのサーバを接続することで効率的にコンテンツを配信する。
- WAN最適化
- WAN経由のサーバへのアクセスを高速化することで、サーバに配備されたアプリケーションのパフォーマンスを向上させる。
- SD-WAN(ソフトウェア定義WAN)
「SASE」登場の背景にある2つの課題
SASEが必要になった背景には、クラウドサービスの普及に伴って顕在化した2つの課題がある。1つ目は従来型セキュリティ対策の限界、2つ目はトラフィックの増大だ。
従来型セキュリティ対策の限界
業務システムのクラウドサービスへの移行が進めば、エンドユーザーは社内LANを経由しなくても業務システムを使えるようになる。一般的にはインターネットに接続できれば、クラウドサービスを利用できるからだ。そのため業務システムを使うデバイスは社内PCに限定されなくなり、私物デバイスを含めた社内外の多様なデバイスが対象になる。
セキュリティ担当者にとっては、管理対象のネットワークやデバイスの種類が増えるほど、一貫したセキュリティポリシーの適用は難しくなる。さらに業務システムもデバイスも社内外に散在する状況では、インターネットなどの社外ネットワークと、LANやWANといった社内ネットワークの「境界」でセキュリティ対策を講じる従来型のセキュリティ対策は意味を成さなくなる。
こうした課題に対処するには、ネットワークの境界や個別のデバイスではなく「人」に焦点を当て、その人が境界の外にいるのか、内にいるのか、どのようなデバイスを使っているのかを問わず、必要な人に必要なだけのアクセス権限を付与するセキュリティ対策が求められる。こうしたセキュリティ対策の考え方を「ゼロトラストセキュリティ」と呼ぶ。
トラフィックの増大
クラウドサービス側にある業務システムを運用する場合、エンドユーザーは社内LANの外部にあるインターネット側のサーバに接続する。この際、業務システムの利用に伴うさまざまなデータがインターネットに出ることになる。業務システムがオンプレミスのインフラ内にあることを前提とした従来型のネットワーク構成では想定していなかった負荷が、ネットワーク機器にかかる可能性があるのだ。高負荷の状況を放置していると、通信遅延などのネットワークの問題が発生する可能性がある。
こうした問題を回避するには、トラフィックの増大に応じてネットワーク機器を増強する、あるいは負荷を分散させるためにトラフィック経路を最適化するといった対策が求められる。
従来型セキュリティ対策の限界とトラフィックの増大という、クラウドサービス導入拡大に伴うセキュリティとネットワークの課題を包括的に解決する手段として、Gartnerが考案したのがSASEだ。同社はCASBをはじめとするセキュリティ機能と、企業が安全かつ安定的にクラウドサービスを利用するために必要なネットワーク機能を統合した製品としてSASEを定義した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
クラウドが変えるセキュリティ市場
企業でのクラウドサービス導入が活発化していることを複数の調査結果が示している。それを受けた2020年以降のセキュリティ市場展望や、クラウド化する企業ITを守るセキュリティアーキテクチャ「SASE」を紹介する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
2
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
3
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
4
「恥を知るべきだ」 AIデータセンター反対運動を招いた事業者の秘密主義
-
5
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
6
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
7
私も“AIエージェント開発者”に? 裾野を広げる「Agent Bricks」とは
-
8
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
-
9
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
10
パスワードはなぜ死んだか 情シスが今すぐ始めるパスキー移行の現実解
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
4
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
10
マンガで学ぶXDR/MDRのメリット、中小企業のセキュリティ強化になぜ有効か?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー