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公共セクターITのDX(デジタルトランスフォーメーション)
公共セクターにおけるデジタルトランスフォーメーションの進展はまちまちだ。だが中にはこの戦略を取り入れているCIOもいる。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は民間、公共を問わず、あらゆる業界でほぼ全組織が目指す究極の目標となった。デジタル化は、クラウドやビッグデータといったサービスやシステムを使って既存のプロセスの効率と効果を高めることを伴う。
DXについては盛んに宣伝されているものの、現場のデジタル化の現実には失望することもある。業界団体Cloud Industry Forumの統計は、進展が乏しい現実を物語る。英国で完全な形のDX戦略を定めている組織はわずか4分の1程度(28%)にすぎない。
公共セクターは特に、進展状況に幅がある。Gartnerによると、政府機関のCIO(最高情報責任者)は完全な形のデジタル戦略の策定に苦慮している。実際のところDXという用語は、公共セクターにおいてはサービスのオンライン化やレガシーのモダナイズ追求といった、より控えめなITプロジェクトを指している。
フォーカスの微妙な変化
公共セクターのDXは、完全なデジタル化ではなくフォーカスがかすかに変わっただけのように見えることもある。それでも落胆することばかりではない。公共セクターには、デジタル化を求める声を、組織をもっとうまく機能させる方向に変化させるチャンスに転換させているCIOもいる。
Pension Protection Fund(PPF)のサイモン・リステ氏は、2018年末にCITO(最高情報技術責任者)に就任して以来、組織内に戻すITを増やすことに重点を置いてきた。それまでPPFは、ガバナンスやセキュリティ対策、アーキテクチャ、サービスデリバリーといった要素を含め、IT業務の大部分をマネージドサービスプロバイダーに委託していた。
リステ氏は、自身の尽力でもたらした変化についてこう説明する。「われわれは現在、インソーシングとアウトソーシングのハイブリッドプラットフォームを運営している。内部リソースのみに依存するIT部門は望まない。PPFにとってのリスクを低減するため、われわれはこの2つを組み合わせたアプローチを取っている。内部リソースと外部リソースの間で満ち引きができる状態にあることを知っておきたい」
リステ氏は、同組織のサービスのデジタル化を支援するために自らが開発したハイブリッドプラットフォームを使っている。今後数年の主要目標は、職員がどんな端末を使っていても、いつでもどこからでもPPFのアプリケーションを利用できる状態にすることにある。
同氏はまた、PPFのサービスに頼っているPPFメンバーがさまざまなデジタルチャネルや端末を使って確実に同組織に接触できるようにしたいと考えている。自らつくり出したインソーシングとアウトソーシングの組み合わせは、デジタル化の需要が高まったときに外部のプロビジョニング経由で拡張できる可能性を秘めていると同氏は言う。
「つまり私は自分のケーキが欲しいと思い、間違いなくそれを食べたいと思う。社内の技術的能力を求めると同時に、外部に切り離された別のパートナーも持ちたいと思う。そこでセキュリティパートナーやサービスデリバリーパートナー、プロジェクト管理パートナーと連携する。だが、そうしたパートナーは全て切り離されているので、互いの間で真に健全な競争がある」
リステ氏のアプローチは、公共セクターの草分け的なCIOがデジタル化の時代においていかにITの役割について再考し始めているかを物語る。そうした技術責任者は、純粋な外部委託のモデルからプロビジョニングのバランスを保つ方法を考えるモデルへとシフトしている。そこでは組織がリソースと能力を保持しながら、適切な時期にアプリケーションをクラウドに移行させることができる。
Northampton General Hospital NHS TrustのCIO、ヒューゴ・マシアス氏もオンデマンドITを支持する1人だ。実際に同氏は、公共セクターのIT責任者が外部サービスのプロビジョニングを活用しようとしないのは嘆かわしいとの考えで、「誰もがクラウドの恩恵を受けられると思う」と語る。
マシアス氏は情報主導の病院を作り出したいと考えている。そこでは紙ベースの記録への依存を断ち切って情報をデジタル化し、ナレッジを共有してヘルスケアの向上に役立てることができる。既に進歩はある。同組織はAlfrescoのコンテンツ管理技術を使って選択的経路管理を把握する一助としている。
管理すべき外来予約が年間30万件に上る中、組織を横断する患者の診療向上にデジタル化を役立てたいとマシアス氏は言う。同氏によると、DXプロジェクトの成功はIT部門とそれ以外の部門との間で共同のアプローチを持つことが鍵を握る。基準は重要な役割を果たし、機能横断的なインテグレーションを支えるためにはCIOができる限り開かれた姿勢を保つ必要がある。
マシアス氏は言う。「協調的、結合的なアプローチを取り、オープンスタンダードへの移行を視野に入れなければならない。そうすれば、クラウドの活用はずっと容易になる。そうすることで統合エンジンのような分野にそれほどの労力は必要なくなり、適切な情報が適切な形になる。オープン標準を採用すれば、誰にとってもずっとやりやすくなる」
Royal Marsden NHS Foundation TrustのCIOであるリサ・エメリー氏も、クラウドを賢く利用することで真に違いが出ると信じるITリーダーの1人だ。Royal Marsden NHS Foundation Trustは、研究プロセスを支えるためのクラウド利用に目を向けて「Microsoft Azure」でインスタンスを運用しているという。
「可能なものは全てオフプレミスにしたいというのがわれわれの考え方だ」と同氏は語る。「われわれはAzureのテナントを確保して、幾つかのことを横断して進めている。ただ、現時点ではレガシー資産に目を向けている。現在は400台を超すサーバがあると思う」
公共セクターのIT指導者にとっては、依然として古い機材が重要な課題になっている。「われわれは廃止に目を向け、続いて可能なものをクラウドに移行する。しかしそれは一般的なシナリオだ。アップグレードして移行できるレガシーがある一方で、隔離や廃棄など何らかの措置を考えなければならないほど旧式なものもある」とエメリー氏は話す。
Royal Marsden NHS Foundation Trustは引き続き、クラウドを活用する方法を模索している。同病院はがん研究所と共同で生物医学研究センターを運営している。エメリー氏によると、同病院はオンデマンドITへのアプローチを発展させるため、専門家のアドバイスやコンサルティング経由も含めて、どうすればがん研究所とうまく連携できるかについて研究しているという。
草分け的研究に役立てるクラウドの力を認識している公共セクターのIT指導者は他にもいる。サセックス大学のITディレクター、ジェイソン・オリバー氏は、自身の技術部門が大学の研究をどう支えるかについて考えることを現時点の重点分野にしていると話す。
高等教育機関の研究は、物理的な機器と高性能コンピューティングインフラで行われている。オリバー氏はサセックス大学の研究者やMicrosoft、Amazon Web Services(AWS)などのハイテク大手と緊密に連携して、同大学が研究者のニーズに応えるためにパブリッククラウドをもっと活用できる方法を模索している。
「それは単純なことではない」とオリバー氏は言う。「われわれは、自分たちのワークロードを早くクラウドに移行できるよう、IT大手と非常に緊密に連携して研究とは何かを理解してもらおうと努めている」
Transport for Greater Manchester(TfGM)のIT責任者マルコム・ロウ氏は、オンデマンドITサービスへの大きな転換を既に実現した公共セクターのCIOの1人だ。TfGMはSnowflakeのクラウドを基盤とするデータプラットフォームをAWSで運用して、移動に関する重要なデータの活用と分析を行っている。
ロウ氏によるとTfGMは現在、オンデマンド技術スタックを使って運輸網のマイクロシミュレーションを行い、そのデータセットから移動パターンを抽出している。同組織にとって、クラウドをベースとしたDXのメリットは明らかだ。
「われわれは、組織にとってより戦略的な情報分析プラットフォームを導入できている。これは月ごとに、継続的に構築する。このおかげで組織に関する洞察や分析を深めることができ、事業部門が運輸網について理解を深める助けになる」と同氏は語る。
ロウ氏が自らの役割の中で特に力を入れているのは、同組織が技術を使って行う全てに設計原則を持つことだという。
その重要な原則の一つはコモディティサービスのためのクラウドファースト戦略だとロウ氏は言い、「現在は、まともな考え方をする人なら誰も、自分たち自身のデータウェアハウスを構築して運用しようとは思わない」と言い添えた。
ロウ氏によると、公共セクターのCIOにとっての教訓は明らかだ。すなわち、デジタル化の恩恵活用に着手できる方法をできるだけ早く見つける必要がある。「小さく始めて、それを実現できる用途を探す必要がある。私にとって、それは全て概念実証に尽きる。ユーザーにとっての真のトランスフォーメーションを実現し、デジタル化によってどんな価値が引き出せるかを示すことだ」と同氏は話している。関連記事
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