2020年09月02日 08時00分 公開
特集/連載

アプリケーションモダナイゼーションの障壁を克服する方法Computer Weekly製品ガイド

クラウドネイティブと誰もが口にするものの、ほとんどの企業は何もない所からやり直せるほど幸運ではない。レガシーアプリケーションをどうすれば前進させられるかを検討する。

[Sebastian Klovig Skelton,Computer Weekly]
iStock.com/vkyryl

 あらゆる企業がアプリケーションポートフォリオのモダナイズを目指してデジタルトランスフォーメーションを進める中で、技術統合に関する課題やプロジェクトの効率性がその取り組みの妨げとなっている。

 MuleSoftが発表した2020年のConnectivityベンチマーク報告書によると、IT組織の99%は5年以内にデジタルトランスフォーメーションプロジェクトの実施を予定しているが、うち85%は統合上の課題がそうしたプロジェクトを減速させていると回答した。

 MuleSoftの報告によれば、平均的な企業が保有しているアプリケーションは900前後に上るものの、現時点で統合できているものはそのうち28%にすぎない。セキュリティやビッグデータ分析といった新技術への投資に伴いインテグレーション需要は増大の一途をたどり、新しいデータソースに対応するためさらなる統合の必要に迫られるIT部門の負担も増す。

 Boomi(訳注:2010年にDellが買収)がERPに関して実施した別の調査では、少なくとも欧州のIT組織にとってモダナイズにまつわる課題は人とプロセスの問題と、技術的問題の2つに分類できることが分かった。

 「モダナイゼーションプロジェクトは適切に管理する必要があり、はっきりした目標と測定、コミュニケーションを確立しなければならない」。Boomiは「ERPイノベーターのジレンマ」という報告書の中でそう指摘し、最大の技術的課題として「一部のレガシー技術がまだ使われている複雑なハイブリッド環境をまたぐデータの統合と管理」を挙げた。

 モダナイズを必要とする旧式のシステムの範囲を考えただけでも、この状況は一層複雑になる。Gartnerは「アプリケーションモダナイゼーションをビジネス中心、持続的、マルチプラットフォームとする必要性」に関する報告書の中で、全拠点の全アプリケーションを網羅する包括的でコスト効率の高いインベントリのためには、エンタープライズITポートフォリオはあまりに規模が大き過ぎると警告した。

 そうした課題を克服するためには、フォーカスを絞ったやり方でプロジェクト計画が立てられるよう、ワークフローの評価と分類を行って優先順位をつけながらデジタル資産への相対的な観点を持ち続け、異なるアプリケーションがどのようにつながっているのかを把握しなければならない。

分類と優先順位

 使用中の全レガシーアプリケーションを含むデジタル資産の把握は、多くの組織にとって気が遠くなるような作業かもしれない。Mendixの最高技術エバンジェリスト、ニック・フォード氏はIT意思決定者に対し、ポートフォリオのマッピングを行ってデジタル資産を把握することから始めるようアドバイスする。

 「どんなアプリケーション資産であっても、統合可能と思われるアプリケーションやもはやふさわしくなくなったアプリケーション、市販製品との入れ替えや再構築が簡単にできるアプリケーションが見つかる傾向がある」とフォード氏は言う。

 「資産を見渡して、どう合理化するかを検討し、短期間で最も重要な恩恵をもたらす領域を選び出す」

 MuleSoftのサービスバイスプレジデント、イアン・フェアクラフ氏によると、ほとんどの組織には「相互接続されたアプリケーションの非常に複雑な関係」があり、それがイノベーションの足かせになっている。

 「われわれが話題にしているIT資産は過去30〜40年かけて成長してきた。そうした組織の多くは、時間をかけた技術投資をしていなかった」と同氏は述べ、そうしたアプリケーション間の連携性の欠如が、動きの速い現代的なアプリケーションポートフォリオ構築の大きな妨げになっていると言い添えた。

 Mendixのフォード氏と同様に、フェアクラフ氏もモダナイズプロジェクトを「重点分野」に分割することを奨励する。そうすることで、ITチームがまず最重点事項から取り掛かれるようになる。

 「恐らくは、取り組む必要さえないものもある。そこで分類を行って、そうしたITシステムについてはあと数年稼働させたら引退させることを決める」とフェアクラフ氏は助言する。

 フェアクラフ氏は自身が関わった困難なモダナイズプロジェクトについて、プロジェクト完了のために必要な作業量が「完全に過小評価されていた」と指摘した。このプロジェクトは500以上のアプリケーションで構成されるIT資産に関わるもので、この顧客は全てがどうつながっているのかを理解していなかった。結果として、プロジェクトのコストは「飛躍的に」膨れ上がった。

 「1つのアプリケーションのモダナイズに取り掛かるたびに、複雑に絡み合った別のアプリケーションが見つかった。このため単純にそのアプリケーションを切り離して新しい環境に移行させることができなかった」(フェアクラフ氏)

 プロジェクトチームが新旧のシステム間の接続に対応するためには、新しいインテグレーションの開発が必要だった。

 この問題を解決するために、同チームは優先度に応じてアプリケーションを金、銀、銅に分類した。金に分類されたアプリケーションには、それぞれ銀や銅のアプリケーションが幾つも付随していた。そうしたアプリケーションは、優先度は低くても金のアプリケーションと一緒に移行させる必要があった。

 こうした手順を取ることで、プロジェクトチームは金指定のアプリケーションに重点を置きながら、全てが適切に機能することを確認できたとフェアクラフ氏は振り返る。

データの管理

 英ロンドンで2012年に創業したdisguiseは、ライブ音楽用のソフトウェアとハードウェアの構築を専門に手掛ける。同社の技術はU2やケイティ・ペリーなどのコンサートの他、映画業界や英女王の式典のような特別行事にも使われている。

 同社は急成長してわずか2年で従業員は27人から131人に増えた。クラウドポートフォリオの規模も大きく、営業マーケティングシステムにはSalesforceを、会計システムにはNetSuiteを、開発用にはJiraを使っている。

 「われわれは大量のデータを蓄積し、高速で移動していた。だが特定の方向に高速移動しなければ、どこへも到達できないとは限らない。従って、私がやらなければならなかったことの一つはその資産を横断するデータをまとめることだった」。disguiseのグローバルビジネスインテリジェンステクノロジー責任者、イバン・ロッシュ氏はそう語る。同氏は2019年初め、6週間かけて同社のモダナイズニーズに関する評価とプランニングを行った。

 その結果、市販のコネクターとBoomiが手掛ける特注のAPIを組み合わせれば、disguiseとSalesforce、NetSuite、Jira、ハードウェアのメーカーを連携させ、全てのデータを「マスター」レベルで管理できることが分かったとロッシュ氏は言う。

 これによって実現するデータの可視性と一貫性のおかげで、disguiseはプロセスの最適化に着手でき、システムのさらなる拡張が可能になった。

 「このアーキテクチャのおかげで、われわれは現在、既に持っているものを向上させている。同時に、現在導入しているコネクターのおかげで大きくなることもできる」(ロッシュ氏)

 「現在使っているシステムの中には、われわれと歩調が合っていないものもあるかもしれない。だが、データウェアハウスにデータ構造があって、それに関するBoomiのルールがある限り、現在保有しているシステムのうち1台の電源を落とし、新しいシステムを導入して、まるで最初からあったかのようにそのシステムを稼働させることができる」と同氏は言い添えた。

 異なるシステムやアプリケーションの入れ替えができるようになったことで、disguiseのインテグレーションに関連した柔軟性は大幅に高まり、さらなるモダナイズ計画用のワークフロー診断と分類の助けにもなった。

レガシーWindows

 アプリケーションのモダナイズは、レガシーハードウェアをなくすことだけにとどまらない。

 Rancher Labsの欧州・中東・アフリカ(EMEA)担当バイスプレジデント、オリビア・マース氏は言う。「何世紀もの歴史を持つ会社であれ、設立から数年しかたたない会社であれ、誰もが一律に直面する課題がある。それは新システムとレガシーシステムの共存管理のこともあれば、モダナイズに必要な経費と時間の投資のこともある」。

 多くの企業は、クラウドファーストあるいはクラウドネイティブになりたいという野心を持つ。すなわち、既存のアプリケーションの大部分をクラウドに移行して、新しいアプリケーションはクラウドで開発・運用することを目指している。

 「Kubernetesを使えば、企業はレガシー機能を新しいクラウドネイティブアプリで利用して、経費と貴重な時間を節約できる」とマース氏は話す。

 だが、オンプレミスワークロードの70%はWindows Serverで運用されており、それがコンテナ化の妨げになっている。しかしWindowsコンテナのおかげで、その状況も変化した。

 Windowsコンテナを活用しているのが、Rancher Labsの顧客で欧州のテレマティクス最大手のABAXだ。「高度な車列追跡システムと車両制御システムから送られてくる大量のデータを処理しているにもかかわらず、同社は長年の間、Windowsをベースとする時代遅れの技術に依存していた」とマース氏は解説する。

 ABAXは長年をかけてWindowsで中核的なサービスを構築しており、マース氏によれば、それを継続したい意向だった。だが、インフラの大部分を再構築するとコストと時間がかかることが予想された。

 マース氏によると、ABAXのシステムエンジニアはWindowsコンテナを利用して、ミッションクリティカルなワークロードをWindowsとLinuxコンテナの両方で運用できる。このコンテナは、デプロイされているのがオンプレミスかクラウドかを問わず、一元的に管理できる。

 コンテナ経由であれ、マスターデータ管理システム経由であれ、企業による複雑なアプリケーションモダナイゼーションを支援できる技術は幅広く存在する。ただし、そうした技術を選定してプロジェクトを効率的に遂行するためには、それを支える適切な組織構造が必要とされる。

 「課題の大部分は組織にある」とMendixのフォード氏は話し、モダナイズは「ビッグバン」ではなく組織の最上層部の支持を必要とする継続的、反復的プロセスだと言い添えた。

 「レガシーのモダナイズとは、組織全体を活用することであり、ほとんどの場合そのソフトウェアを提供するビジネス問題に最も近い人を活用する。それは、適切なプラットフォームと適切なガバナンスモデル、適切な組織構造を持つことに由来する」。フォード氏はそう結論付けた。

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