デジタルワークプレースに対応したPCの展開Computer Weekly製品ガイド

デジタルワークプレースの需要は、機能性、モバイル性、接続性の向上につながっている。デスクトップITの変化について解説する。

2018年12月05日 08時00分 公開
[Stephen KleynhansComputer Weekly]

 企業と従業員や顧客との関係の在り方が変化する中で、職場も進化している。デジタルワークプレースの展開は、機能性やモバイル性、接続性への新たな需要を喚起し、生産性のさらなる向上や関係強化を実現している。多くのユーザーにとって、スマートフォンは真にパーソナルな端末としてPCに取って代わった。

 一方でPCは日常業務を処理する主要端末であり続け、相互接続や機能については依然として最も豊富な選択肢を提供する。デジタルワークプレースの台頭に伴い、PCのモダナイゼーションに改めて関心が集まり、売り上げの増大につながっている。2015年から2016年にかけて2年連続で減少していたビジネスPCの出荷は、2017年には3.3%の増加に転じた。

新たな水準のパフォーマンス

 PCは薄型化・軽量化が進み、新たなレベルの性能と接続性を提供する。スマートフォンで導入されたモダンな管理アプローチが現実的になる中で、各メーカーは煩雑なセットアップや複雑でコストがかさむ運用といった長年の問題に対応している。同時にPCの安定性は向上を続けた。入れ替えサイクルは長期化し、古くなった端末が増大しつつある。

 PCは時として、レガシー技術と見なされる。多くの作業をこなす端末としては必須だが、新しいアプリケーションやユーザーにとって必ずしも最初の一歩ではない。企業はデジタルワークプレースプログラムを開発・始動するに当たり、ユーザーの働き方を支え、コラボレーションやモバイル性を促進させる鍵となる技術としてのエンドポイントに目を向ける必要がある。ユーザーのニーズを総体的に分析し、モバイル性やコラボレーション、自律性をセキュリティや働き方と照らし合わせてチェックすることは、ワークスペースの設計やユーザーに合った端末選定の助けになる。

ノートPC

 ノートPCはビジネスPCの主流となった。持ち運びやすさが実現する柔軟性はユーザーに好まれ、デスクトップPCと比較したパフォーマンスや機能面での代償は、ほとんどが過去のものになった。ノートPCはデスクトップPCよりやや高価であり、一般的に寿命はデスクトップPCよりも短く、大抵は3年から3年半程度にとどまる。だがほとんどのナレッジワーカーにとって、ノートPCで実現する生産性の向上がそうした問題より優先される。

 企業が「Windows 10」へ移行する中、2-in-1端末が注目を集めている。2017年にはそうした端末がプロフェッショナル向けノートPC市場の34%を占めた。組織は、そうした端末をモバイルプロフェッショナルや経営幹部のため、そしてデジタルワークプレースプログラムの文脈の中で選択している。

 そうした端末の刷新が進んだおかげで、最新のシステムは幅広いユーザーに受け入れられやすくなった。いずれはコンバーティブルデザインが実現する柔軟性が勝るようになり、従来のような二つ折りのノートPCと入れ替わるだろう。だがそれには早くても3〜5年はかかる見通しだ。

 企業のバイヤーはコンバーティブル型を好む傾向がある。ハイエンドのウルトラモバイルPCの約70%〜80%はこのデザインが占める。取り外し可能な筐体は、12型のような小型の画面で使われることが多い。ほとんどのサプライヤーは10型や11型のノートPCやハイブリッドPCの提供を中止した。2018年はArmプロセッサを搭載した常時接続型のPCを含め、さらに薄型で軽量の2-in-1端末も登場している。

デスクトップPC

 デスクトップPCは、もはやオフィスワーカーの標準的な端末ではなくなった。今では主に、デスクに座り続ける従業員(コールセンター、事務作業など)、または移動を伴わずに高性能端末を必要とする従業員(エンジニア、クリエイティブ系など)向けの端末として使われている。ほとんどの企業が現在調達しているのは小型のデスクトップPCで、超小型PCも一般的になりつつある。そうした小型端末は出荷やインストールが容易で、大型のミニタワー端末に比べてそれほど高額でもなくなった。

 各PCメーカーは、会議室などのコラボレーション環境でターンキーデバイスとして使うための専用ハードウェア拡張機能やソフトウェアも組み合わせている。超小型PCよりもさらに小さい、いわゆる「スティック型」PCは、USBやHDMI機器にPCのフル機能を搭載している。そうした機器のほとんどはデジタル広告やキオスクに使われているが、まだPCのメインストリームとなるには至っていない。

価格と調達

 Windows 10の登場を受けて次々と新しい筐体のオプションが登場した後、現代のPCはモバイル端末とデスクトップ端末を横断する比較的なじみのある一握りのデザインに落ち着いた。そうしたデザインはPCを塗り替えてはいるが、根本から変えてはいない。PCサプライヤーにとって市場は依然として厳しく、競争が激しい環境の中でシェアを維持しようとして引き続きしのぎを削っている。これは結果として手頃な価格につながり、時には定価の45〜55%引きになることもある。

 一方で多くの企業はシステムの技術仕様を念入りに調べるのをやめており、このプロセスがIT部門から調達部門に移行された企業もある。結果として、法人向けPC市場は技術仕様に関する話題から調達モデルやライフサイクルサービスオプションへと焦点が移りつつある。ハードウェアのリースと、新しい「サービスとしてのPC」(あるいは端末)の両方に対する大手PCサプライヤーの関心の高まりは、この移り変わりを反映している。

 従業員が自由に使えるさまざまな端末が増えていることを前提として、法人顧客は向こう3〜5年の間にPCの役割がどう進化するかを考え、それに従って調達戦略を調整する必要がある。

 ITリーダーは、新技術をユーザーのニーズや職場の状況に沿わせることにより、そうした新技術が次世代の利用モデルをどう形成するかを決定しなければならない。

 サプライヤーについては、単純にコモディティハードウェアの提供能力だけでなく、その組織特有のニーズに対応できる能力に基づいて評価する必要がある。

「サービスとしての」モデルへの移行

 近年は、PCを購入するよりもリースすることへの関心が企業の間で復活している。これは多くのCIO(最高情報責任者)が、ユーザー数に応じて月額料金を支払う「サービスとしての」モデルへ移行したいと望んでいることの表れだ。リースすれば、IT部門は数年ごとに多額な設備投資のための予算を組むことなく、3年ごとのライフサイクルへと戻ることができる。ただし規模の大きい組織の場合、PC購入資金を借り入れるよりもリースの方が月額ベースの出費がかさむこともある。3年以上のリース契約は、ほぼ間違いなく金銭的に不利な取引になる。なぜなら4〜5年というライフサイクルは、多くの企業にとって十分過ぎるからだ。

 もう一つの代替として浮上している“PC as a Service”(PCaaS)を“Desktop as a Service”(DaaS)と混同してはならない。PCaaSはPCのリースを拡張したもので、ライフサイクルサービス(設定、イメージング、導入、延長保証)が、ユーザー当たりの月額料金に含まれる。

 初期の市場商品は成熟しているが、そうしたプログラムがどうすれば生き残れるかを探ろうとプロバイダーが実験を行う中で、料金や条件は依然として流動的だ。現在は全ての主要PCメーカーや大手エンタープライズリセラー、管理型ワークプレースサービスのプロバイダーが、何らかの形のPCaaSオプションを提供している。だが将来的なバリエーションやターゲットとする顧客は幅広い。

 今後はリースとPCaaSの両方とも増大が見込まれるが、恐らく両方を合わせても計画の展望が見通せる限りではエンタープライズ市場で50%を上回ることはないだろう。

本稿はGartnerのアナリスト、スティーブン・クレインハンズ、フェデリカ・トローニ両氏による「Market guide for enterprise desktops and notebooks, 2018」から抜粋。

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