クラウド型ログ管理「LaaS」の導入前に知っておきたい利点と注意点「LaaS」とは【後編】

システムの不具合や攻撃を予測するためには、ログ管理が有効だ。ログ管理ツールはオンプレミスシステムに導入する他、クラウドサービス「LaaS」を利用する選択肢もある。LaaSの利点と注意点とは。

2025年07月28日 06時00分 公開
[Kurt MarkoTechTarget]

 ログ管理は、システムが正常に動いているかどうかを把握できるので、企業にとって重要な取り組みだ。システムのログデータを管理して分析する方法の一つとして、クラウドサービス「Logging as a Service」(LaaS)の活用がある。ログ管理ツールをクラウドサービスとして導入するメリットとデメリットとは何か。LaaSの主要なベンダーと製品も含め、解説する。

LaaSのメリット、デメリットはこれだ

 LaaSはSaaS(Software as a Service)の一形態であるため、以下をはじめとするクラウドサービスならではのメリットがある。

  • 業務効率の向上
    • システム運用を外部委託することによって、IT担当者が本来の業務に集中しやすくなる。
  • 設備投資の抑制
    • サーバ購入費などの設備投資を抑えることができる。
  • 導入時間の短縮
    • 自社でシステムを構築する必要がないため、迅速に利用を開始できる。
  • 多様なシステムや働き方への適応力
    • クラウドサービスを利用するテレワークを中心に、さまざまな働き方で利用しやすい。
  • 継続的なアップデート
    • ソフトウェアアップデートやパッチ(修正プログラム)が自動適用にされるため、最新かつ安全な状態が保たれる。
  • セキュリティの強化
    • 一般的にクラウドベンダーは専門のセキュリティチームがインフラを監視、防御できる体制を持っているため、ユーザー企業での運用と比べて安全なシステム運用ができる。

 監視ツールベンダーSolarWindsが大規模なサイバー攻撃に遭った後、米国家安全保障局(NSA)は、企業に対してセキュリティ向上のためにクラウドサービスへの移行を推奨した。攻撃者が脆弱(ぜいじゃく)な社内システムに侵入した後、権限を昇格させるために、MicrosoftのID・アクセス管理システム「Active Directory」の不適切な設定を悪用する例が目立ったからだ。対策として、クラウドサービス版の「Azure Active Directory」(現「Microsoft Entra ID」)への移行が有効だとNSAは指摘している。これは、LaaSのようなマネージドサービスがいかにセキュリティ強化に貢献できるかを示す好例だ。

 一方で、LaaSには以下のデメリットもある。

  • 既存システムとの連携のしづらさ
    • 社内で利用中のアプリケーションや、独自に構築したシステムとの連携が難しい場合がある。
  • カスタマイズの制限
    • 企業が特殊な要件を持っている場合、LaaSに対して細かい設定ができず、要件を満たせない可能性がある。

 こうしたデメリットがありつつも、LaaSに検討の価値があるのは、ログ管理システムの導入や運用に関して、社内のスキルや人員、予算が不足していても、ログ管理に取り組みやすいからだ。特にオープンソースソフトウェア(OSS)を使ってログ管理システムを構築しようとすると、高度な専門知識が必要になる。

 LaaSに合わせてクラウドストレージを利用することによって、ログデータを保存するためのストレージ費用も削減できる可能性がある。クラウドストレージサービスには、Amazon Web Services(AWS)の「Amazon S3 Glacier」や「Amazon S3 Glacier Deep Archive」、Microsoftの「Azure Archive Storage」や「Azure Blob Storage」、Google Cloudの「Cloud Storage」などがある。

 LaaSの主なベンダーとサービスは以下の通りだ。

  • AWSの「Amazon OpenSearch Service」(旧「Amazon Elasticsearch Service」)
  • Datadogの「Log Management」
  • Mezmoの「Mezmo」(旧「LogDNA」)
  • Microsoftの「Azure Monitor」
  • New Relicの「New Relic」
  • Sematextの「Sematext」
  • SolarWindsの「Loggly」「Papertrail」
  • Splunk(Cisco Systems傘下)の「Splunk Cloud Platform」

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