長年比較されてきたWindowsとLinux。その違いを理解する鍵は、OSの中核「カーネル」にある。ハイブリッド型のWindowsと、モジュール性に優れたLinux、それぞれの強みと制約を整理する。
長年にわたって比較の対象になってきた「Windows」と「Linux」。この2大OSをより深く知るには、OSの中核ソフトウェアである「カーネル」の仕組みを押さえることが近道だ。本質的な違いは、このカーネルの設計思想にこそある。
Windowsは、「モノリシックカーネル」(基本機能をひとまとめにした設計)と「マイクロカーネル」(機能をできるだけカーネルの外に分離する設計)の特徴を組み合わせた“ハイブリッド型”を採用している。オープンソースかつコミュニティー主導で開発され、モノリシックカーネルを基盤とするLinuxとは異なる進化を遂げてきた。本稿は、Windowsカーネルの設計や制約、Linuxとの相違点をひもときながら、設計の違いが実用面にどのように影響するのかを掘り下げる。
WindowsカーネルとLinuxカーネルは、設計思想に大きな違いがある。Microsoftは、モノリシックカーネルとマイクロカーネルの要素を併せ持つハイブリッド型を採用しており、ウィンドウシステム(画面操作に関わるソフトウェア層)の一部もカーネルに組み込んでいる。
これに対してLinuxは、一貫してモノリシックカーネル構造を採用している。カーネルの構成要素が一体化しているとはいえ、カーネルモジュールの部品単位で機能を後から追加、削除できる仕組みを持っているため、カスタマイズ性や拡張性に優れる点が特徴だ。世界中の開発者によってオープンソースで進化を続けており、機能追加も柔軟かつ迅速に行われる。
Windowsは、リアルタイムのコンピューティングスケジューリングに対応している。コンピューティングスケジューリングとは、CPUなどのコンピューティングリソースを、どのプロセスに、どの順番で、どれくらいの時間割り当てるかを決める制御処理を指す。これはLinuxではカーネル6.12で導入された機能だ。
ドライバの分離(カーネルから独立した場所にデバイスドライバを配置)や管理手法においてWindowsはLinuxとは異なる。Windowsは音声や動画の処理に関しては非常に成熟したライブラリ(プログラム部品)を備えている。こうした特性は、クリエイティブ用途においてもWindowsの魅力の一つとなっている。
Windowsを構成するソースコードは、Microsoftが保有するプロプライエタリ(商用・非公開)なコードであり、外部の開発者がそれを自由に閲覧したり、変更したりすることはできない。つまり、OSの機能追加や設定変更、セキュリティ対策のタイミングと内容は、全てMicrosoftが一元的に管理しており、ユーザーや開発者はそれに従うしかない。このようなクローズドな設計は、OS全体の安定性や一貫性の確保には有利だが、その反面、柔軟なカスタマイズや独自開発の余地が限られ、開発者側が自由に制御できる領域は非常に少ない。
Windowsは、多種多様な機能やコンポーネントを標準でOSに組み込んでいる。その結果、システム全体が非常に大規模かつ一体化した構造となっている。機能ごとに部品を分離、再構成するモジュール性や、カスタマイズ性はあまり高くない。こうした特性は、メモリやストレージなどのリソースに制約があるIoT(モノのインターネット)デバイスとの相性が良くない。結果として、より軽量かつ柔軟な構成が可能なオープンソースのOS(例えばLinux系OS)の方が選ばれやすくなっている。
アップグレードのタイミングや内容がMicrosoftの管理下にあるのもWindowsの大きな特徴だ。管理者が望むかどうかにかかわらず、システム更新が自動的に実行される仕組みになっている。MicrosoftはOSのサポート期間をコントロールし、必要に応じてカーネルを更新するだけでなく、プロセッサや周辺デバイスとの互換性に制限を加えることもある。
このような一元的な管理は、OSの安定性やバージョン間の一貫性を保ちやすくなることにつながり、企業で使う場合の信頼性確保にも寄与している。一方で、セキュリティ対策や機能追加の方針を開発者自身で柔軟に決定したり、タイミングを調整したりする自由度は失われがちだ。カスタマイズ性を重視する開発現場では、このコントロールのしづらさが制約となることもある。
次回は、LinuxとWindowsのどちらを選ぶかを決めるための観点を解説する。
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