セキュリティ特化のLinuxを比較【前編】
「Kali Linux」とは? “攻撃者目線”でセキュリティを学べるOS
巧妙化するサイバー攻撃からシステムを守るには、防御する立場も攻撃者の視点を理解する必要がある。そのための侵入テストに活用できるLinuxディストリビューション「Kali Linux」とは。
OS「Linux」は、個人の画像編集から教育目的での利用、ITインフラを支えるサーバOSまで、現代のIT分野でさまざまな役割を担っている。競争相手がひしめき合う中で、あるLinuxディストリビューション(配布パッケージ)が他のディストリビューションに対して優位に立つための戦略の一つが、特定の分野に特化することだ。「Kali Linux」と「ParrotOS」は、まさにこの戦略を採用している。本連載は、これら2つのセキュリティとプライバシーに特化したディストリビューションを比較し、用例ごとに最適なのはどちらか、判断の手助けとなる情報を提供する。
Kali Linuxとは?
併せて読みたいお薦め記事
Linuxディストリビューションの比較
Kali Linuxは、「Debian」から派生したディストリビューション「BackTrack」の後継として開発された。セキュリティ専門家向けに、豊富な侵入テスト、フォレンジック、脆弱(ぜいじゃく)性スキャンなどのツールがプリインストールされている。オープンソースソフトウェア(OSS)の理念に従って、Linuxのパッケージマネジャー(ソフトウェアのインストールや更新を管理するソフトウェア)を使い、必要に応じて自由にカスタマイズできる。
主な機能とツール
豊富なツール群をプリインストールしていることが、Kali Linuxの最も重要な特徴だ。エンドユーザーはLinuxのインストールからシステムの構築までを手動で実施する手間を省くことができる。ツールの依存関係や設定も、Kali Linuxの開発チームが管理している。
Kali Linuxの具体的な特徴は以下の通りだ。
- Debianを土台としたアーキテクチャ
- 広く普及しており、参考情報が充実しているディストリビューションであるDebianを基に開発されている。
- さまざまなデバイスや形態で実行可能
- 物理マシンや仮想マシン(VM)などに導入できる。
- 特定の業務に応じたカスタマイズ性
- 定期的なアップデート
Kali Linuxは、セキュリティのさまざまな分野で活用できる機能群を標準で搭載している。以下にその例を挙げる。
- 情報収集ツール
- 「Nmap」「theHarvester」「WhatWeb」など
- 脆弱性スキャンツール
- 「Nikto」「Lynis」など
- エクスプロイト(脆弱性悪用プログラム)検証ツール
- 「Metasploit Framework」など
- 無線LANのセキュリティ評価ツール
- 「Aircrack-ng」「wifite」など
- パスワード解析ツール
- 「John the Ripper」「hashcat」「Hydra」など
- ネットワーク診断・解析ツール
- 「Netcat」「tcpdump」「Wireshark」など
インストールと運用
Kali Linuxはさまざまな形態のシステムに導入可能だ。
- 物理マシン
- VM
- 「VMware vSphere」「Hyper-V」「QEMU」「Oracle VirtualBox」といった仮想化ソフトウェアで構築したVM向けに、構築済みのイメージが提供されている。
- 「Android」搭載モバイルデバイス
- クラウドサービス
- コンテナ
- 外部メディア
- USBメモリなどの外部メディアから直接起動する「Live Boot」を利用できる。
- 「Windows」で実行できるLinux「Windows Subsystem for Linux」(WSL)
- 「ARM」アーキテクチャ採用プロセッサを搭載したデバイス
Kali Linuxはオープンソースの強みを最大限に生かしている。ビルドスクリプト(ソフトウェアのビルドを自動実行するプログラム)は、運用開発支援サービス「GitLab」で公開されており、直接閲覧・利用できる。その他、特定の用途に応じて、既存のビルドスクリプトを改変して独自のKali Linuxを構築することも可能だ。
ドキュメントとコミュニティー
公式のフォーラムに参加すれば、メンバーと問題について議論したり、質問や回答をしたり、ツールについて深く学んだりできる。チャットツール「Discord」にも専用チャンネルがあり、Kali Linux愛好者や開発者とチャットで交流が可能だ。Kali Linux開発チームは、「Mastodon」などのソーシャルネットワーク(SNS)も活用し、利用者とのコミュニケーションを図っている。
Kali Linuxは、公式サイトに公式ドキュメントを掲載している。カテゴリーごとに整理されており、コンテナから特定のツールに関する情報まで、幅広い内容を網羅している。標準搭載ツールもパッケージごとに整理されており、それぞれの関連性を確認可能だ。
何ができるのか
セキュリティに特化したKali Linuxを使えば、侵入テストや攻撃用ツールに関する知識と技術を、攻撃者の目線から深く探求できる。現代に不可欠なセキュリティツールについて学んだり、セキュリティ監査を実施したり、自社システムで侵入テストを試したりするには優れた選択肢だ。
セキュリティ専門家にとって、Kali Linuxは間違いない選択肢だと言える。ただし、Linux初心者向けではないことを忘れてはならない。OSの操作、コマンドラインインタフェース(CLI)、ソフトウェア管理、権限管理といったLinuxでの標準的な操作に習熟していることが前提になる。Kali Linuxの学習サイト「Kali Training」が提供するトレーニングコース「Kali Linux Revealed」の利用や、特定の学習コースと試験を修了することで得られる認定資格を取得も視野に入れよう。
次回は、ParrotOSの概要を紹介する。
TechTarget.AIとは
TechTarget.AIは、TechTargetジャパンの記事の一部で生成AIを補助的に活用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳・編集して国内向けにお届けします。編集部による内容の確認を徹底しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget.AI
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド -
製品資料
「入札市場」徹底解説:入札で結果を出す企業はどんな方法を使っているのか? -
製品資料
入札活動の成否を分ける情報収集 “狙い目案件”を効率よく見つけるには?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
5
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
6
脱VMwareの最適解 NTTデータと日立製作所が示す国産仮想化基盤
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
「脱Excel」はなぜ現場に潰されるのか 反発を封じる“3つの論理”
-
9
「VMwareのコスト」に悩んでいるユーザー企業に送る、VMwareを残す・捨てる基準
-
10
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー