セキュリティに心理学を応用する【前編】
セキュリティの“想定外”に動じない心の準備「コグニティブレディネス」とは?
セキュリティ対策に役立つ心理学的な要素に「コグニティブレディネス」がある。なぜ有用なのか。セキュリティに詳しい心理学者に話を聞いた。
「コグニティブレディネス」とは、変化する状況にうまく対処できる心の準備態勢を指す。意思決定や状況認識といった非定型問題の解決能力「ソフトスキル」の素になる。「従来のセキュリティ研修は、必ずしもコグニティブレディネスの育成カリキュラムを盛り込んでいなかった」と、心理学者でセキュリティベンダーImmersive Labsの顧問、レベッカ・マッキオン氏は解説する。
マッキオン氏はこれまで英国防省などの組織や航空、原子力といった分野において、職場研修に関する研究を続けてきた。現在はセキュリティにおける心理学に従事し「何をすべきかではなく、どう考えるべきか」を教育することにより、インシデントレスポンス(インシデント発生後の対処)の質がどのように向上し得るかを調査している。
セキュリティにコグニティブレディネスを応用することが、機動的で、自信に満ち、効率的なインシデントレスポンスチームの形成にどう役立つのか。マッキオン氏のインタビューに基づいて解説する。
バイアスを排除して“想定外“に備える
―― コグニティブレディネスはどのような役割を果たすのでしょうか。
マッキオン氏 コグニティブレディネスの有効性を理解するためには、まず「学習」がもたらす弊害を理解する必要がある。学習とは豊富な知識を基にした知識ベースに、新しいスキルや情報、経験を絶えず追加することだ。学習する際は、新しい知識を既存の知識と照合して知識ベースを更新する。これは無意識のプロセスだ。
学習を繰り返すことにより、思考のパターンが発達して自動的になる。これは効率の点では素晴らしい。ただし危機的な状況では、自動化した思考はバイアス(偏見)をもたらし、思考を制約する可能性がある。
バイアスを回避するには、別の考え方をする必要がある。これには自分自身と物事をどのように理解しているかを意識的に学び、自動的な思考がいつ始まるかを認識できるようにする必要がある。ここでコグニティブレディネスが役立つ。
―― 特にセキュリティ対策において、コグニティブレディネスはどう役立つのでしょうか。
マッキオン氏 セキュリティ分野では常に変化が起こっており、そのペースも速い。あらゆる状況を想定した研修が常に実施できるとは限らない。コグニティブレディネスがあれば、どんな筋書きへの対処法も学習可能だ。インシデントレスポンス中の課題を、より機動的かつ効率的に解決できるようになる。
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